補論2-5 台湾地位未定論についての日本の立場 | 中国について調べたことを書いています

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1.中国広東省の深セン経済特区の成立過程
2.香港・六七暴動
3.農業生産責任制と一人っ子政策
4.浦東新区から雄安新区へ
5.尖閣問題の解決策を探る
6,台湾は国家か

⑤台湾地位未定論についての日本の立場

 

最後に、台湾地位未定論についての日本政府の立場を確認しておこう。

まず、カイロ宣言とポツダム宣言についてであるが、日本外務省のホームページでは、以下のように述べている。

 

「カイロ宣言やポツダム宣言は,当時の連合国側の戦後処理の基本方針を示したものです・・・。戦争の結果としての領土の処理は,最終的には平和条約を始めとする国際約束に基づいて行われます。第二次世界大戦の場合,同大戦後の日本の領土を法的に確定したのはサンフランシスコ平和条約であり,カイロ宣言やポツダム宣言は日本の領土処理について,最終的な法的効果を持ち得るものではありません。」

外務省ホームページ 「日本の領土をめぐる問題 尖閣諸島」Q12に対する答え

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html

 

ここで「カイロ宣言やポツダム宣言は日本の領土処理について,最終的な法的効果を持ち得るものではありません」と述べていることから、日本政府はアメリカ政府と同様の立場であることは想像できる。つまり、日本政府は明言はしていないものの、台湾地位未定論については肯定的なのであろう。

ここで「最終的な法的効果を持ち得る」としているサンフランシスコ平和条約では、日本は台湾の放棄を宣言している。これについての日本政府の見解は「日本はサンフランシスコ条約で台湾の主権を放棄したが、どこの国に対して放棄したか明記しておらず、台湾がどこに帰属するか発言する立場にない」という立場にある。これについての説明として、以下の国会での発言を紹介しておく。1979216日の第87回国会衆議院予算委員会で社会党の石橋政嗣の質問に対して外務省条約局長の中島敏次郎は以下のように答えている。

 

「先ほど来申し上げておりますように、台湾及び澎湖島に対するわが国のあらゆる権原はサンフランシスコ平和条約によって放棄せられたわけでございます。その場合に、それがだれのために放棄せられたかということがサンフラシスコ平和条約では決め得なかった。したがって、その台湾及び澎湖島の帰属先が法律的に未定であった、サンフランシスコの平和条約では未定であったというところからその問題が発生するわけで、いわゆる台湾の地位がどうなのだという問題かその後ずっとあったわけでございます。

 そこで中国は、台湾は中国の一部であるという立場を堅持いたしておって、わが国は日中の正常化の共同声明で、その台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中国側の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する、こういうことを書いたわけでございます。したがいまして、放棄という処分的な一回の放棄によって確定されているという問題と、それからその放棄されたものがどこに帰属するのかという問題と、二つの別個の問題があるわけで、後の方の問題の処理について日中の共同声明が触れているわけでございます。もちろんわが国はサンフランシスコ平和条約によってあらゆる権利、権原、請求権を放棄いたしましたから、それらの島がどこに帰属するかということについての独自の認定を行う権利を持っておらないわけでございます。発言権がないわけでございます。したがいまして、中国側の立場を理解し、尊重し、ポツダム宣言八項に基づいて中国に返還されるべきものであるというふうに考えているというわが国の考え方、立場をこの共同声明で明らかにした、こういう関係になるわけでございます。

87回国会 衆議院 予算委員会 第12号 昭和541979年)216

 

基本的に日本政府の立場は、放棄した台湾の帰属については認定する権原がない、中国の立場を理解し、尊重するという立場である。

ちなみに、1972年の日中共同宣言では以下のように「この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し」と述べているので、中国の立場を「尊重」している。したがって、少なくとも台湾地位未定論を積極的に肯定する立場ではない。

 

「三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」

1972日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明