(5-2-1)「戦争」案と「実効支配強化」案 | 中国について調べたことを書いています

中国について調べたことを書いています

1.中国広東省の深セン経済特区の成立過程
2.香港・六七暴動
3.農業生産責任制と一人っ子政策
4.浦東新区から雄安新区へ
5.尖閣問題の解決策を探る
6,台湾は国家か

『ア.戦争』

戦争にまで発展し武力で尖閣諸島を奪われた場合、領土はもちろん、国民の生命・身体の安全、国民の財産の安全、中国からの資源の輸入、自由貿易体制、安定した国際環境などの国益を大きく損なう。これらに関連する項目は0点である。さらにアメリカの参戦により、米中関係がさらに悪化することもリスクである。このことで、インド太平洋地域の安全が脅かされることとなれば、その悪影響は計り知れない。2点を付けることができるのは尖閣諸島の防衛費用が必要なくなることくらいであろう。

 

 

『イ.実効支配強化』案

この案が日本に不利な形で決着した場合、尖閣諸島を中国が実効支配し始めることになるだろう。もちろん、日本はその実効支配を認めず、領有権の主張を続けることになる。しかし、中国は尖閣諸島の開発を進め、軍事拠点化することも考えられる。ちょうど、韓国が実効支配を続けている竹島のような形になるわけである。日中関係は大きく悪化するだろう。日本が尖閣諸島の領有権を主張するたびに、中国の激しい反発が予想される。

中国で大規模デモや日本企業への攻撃などが起きるかもしれない。日本人駐在者の拘束、レアアースの禁輸などの報復措置も可能性がある。また、日本側が領土奪還を図れば、自衛隊員の生命や身体の安全は損なわれ、中国大陸ではさらに激しい報復措置が予想される。

また、首尾よく中国を排除し、奪還に成功したとしても、それで尖閣問題が最終的に解決するとは思えない。尖閣問題が歴史問題と密接な関係を持っている限り、ここから新たな紛争の種が生まれる可能性が高い。今とは別の形で日中関係の政治的・経済的不安定をもたらす。

そうなると、この案は『戦争』案と同様、国民の生命・身体の安全、国民の財産の安全、中国からの資源の輸入、自由貿易体制、安定した国際環境などの国益を大きく損なう可能性を秘めている。点数は『ア.戦争』案とほとんど変わらないことになる。

 

また、あまり話題にならないことであるが、台湾の動きも無視できないリスクである。台湾が親日的であることはしばしば語られているが、台湾も尖閣の領有を主張していることを忘れてはならない。国際的に国家として承認されているとは言えない現状にあって、日中関係を重視することから台湾は尖閣の領有について日本と争うことを望んでいないと思われる。しかし、それは領有を放棄したということは意味しない。何らかの状況の変化によっては、台湾が日本に対して領有権を主張することはありうる。

さらに言えば、台湾が国として国際的に承認されることになれば、尖閣問題は日本と中国ではなく、日本と台湾の間の問題となる。さらに可能性としては日本と中国と台湾が、それぞれ領有を主張するという巴戦のような状況も考えられる。