(2-11)その後のことなど | 中国について調べたことを書いています

中国について調べたことを書いています

1.中国広東省の深セン経済特区の成立過程
2.香港・六七暴動
3.農業生産責任制と一人っ子政策
4.浦東新区から雄安新区へ
5.尖閣問題の解決策を探る
6,台湾は国家か

 設立発表の直後に、雄案新区に指定された範囲内で投機目的の土地購入が行われ、それを禁止するという事態が発生したことが報道された。実際にそういう話はありそうなことではある。ただし、実際には2016年6月から新区内の土地の売買は凍結されていたとの記述もあるため、この報道はあるいは一種の抑制効果を狙ったものかもしれない。。

 また、この地の新区が設立されることは秘密のうちに進められていたため、誰も知らなかったはずである。しかし、京津冀協同発展は公にされていたのだし、その中で非首都機能をどこかに移すことも示されていた。したがって、様々なところ、特にネットの世界では、様々なうわさが飛び交っていたようである。なかには白洋淀市などという具体的な名前が出されてもいたという。

 2017年7月18日に河北省の全額出資の独資企業である中国雄安建設投資集団有限公司が設立された。新区の開発建設の主体となって投資を募り、融資を行い、住宅や商業施設を含むインフラの建設を行い、さらには環境を保護しながら観光開発も行うという、新しい都市の建設と運営を全般的に行う企業である。2018年4月27日には中国雄安集団有限公司と名前を変えた。本部を設けてその下に3つのレベルの企業で構成されるグループ企業としたのである。(読本p.76)

 なお、雄安新区の発表の後、最初に雄安新区に参加を決めた中国企業は国家開発投資公司という企業だそうである。発表のわずか4日後である。(戦略p.75)また、4月6日には中国船舶重工集団公司が雄安新区への移転を宣言した。(戦略p.76)また、その他中国聯合網絡通信集団公司や中国鉄建株式有限公司、中国電子科学技術集団公司、中国中鉄株式有限公司、中国華電集団公司、中国交通建設株式有限公司、中国電信集団公司などが、続々と雄案新区の建設に積極的にかかわってゆくことを決めた。(戦略p.78-79)

 実際の建設については、雄安新区の市民サービスセンター(雄安新区市民服务中心)が、2017年12月7日に建設が始まり、翌2018年4月16日には完成している。場所は容城県東部、総建設面積9.96万平方メートル。総工費は約8憶元である。
 センターは4つの区域に分かれている。公共サービス区、行政サービス区、生活サービス区、入駐企業事務区の4つである。新区の公共サービス、規格展示、臨時事務、生態公園などのサービスを行っている。
これだけの建物を半年にも満たない期間で完成させたところにはやる気は感じさせられるが、前のめりになりすぎているような感じもある。
http://www.velux.com.cn/content/details17_29345.html

 

 成立以降に、習近平は何度か雄安新区についてのコメントを出している。以下のようなものである。

「河北雄安新区が全面的に改革を深化させ開放を拡大させることを支持し、北京の非首都機能の集中引き受け地への疎解という位置づけをしっかりと把握し、「雄安品質」を創造することをめぐって、雄安新区により大きな改革自主権を与え、革新的な発展、都市の管理、公共サービスなどの面で先行して試し、率先して突破し、高品質の発展という要求と未来の発展方向に見合うような制度体系を構築しなければならず、高品質の発展を推進する全国モデルを構築する」
2018年7月6日、習近平の中央の全面的改革深化委員会の第三回会議での重要講話

「高品質の発展要求を貫徹し、「雄安品質」を創造し、高品質の発展を推進する面で全国の一つの見本となる。北京の非首都機能の集中的な引き受け地の構築をめぐって、自然に順応し、合理的な都市空間配置を構築する」
2018年2月22日、習近平の中央政治局常務委員会会議での雄安新区計画作成状況報告に対する重要演説

习近平总书记谈雄安新区建设

 


 1つめの講話では「改革自主権」という言葉が使われている。経済特区には法律の制定を含めた大幅な自主権が与えられたが、雄安新区にもある程度の自主権が与えられるということである。
 また、どちらの講話でも「雄安品質」という言葉が使われている。これは「深圳品質」という言葉を意識してのものと思われる。深圳経済特区においては、特区成立当初は「深圳速度」という言葉が使われスピードを重視していたが、2000年代に入ってから「深圳品質」という言葉が使われ始めた。つまり、当初は製品や都市環境の品質よりも改革や発展のスピードを重視していたが、のちに品質も重視し始めたということの表れである。
 雄安については、初めからスピードよりも都市環境の品質を重視しているという意味であろう。

 2018年4月14日に「河北雄安新区規画綱要」が中共中央、国務院によって承認された。2016年5月27日に始まった(読本p.67、p.254)この綱要の編集が、約2年をかけて完成したことになる。
綱要は10章に図と表が付いたもので、新都市をどのようなものにするかが細かく規定されている。

 通州の行政副中心については、2017年12月20日に北京市委、北京市人民代表大会、北京市政協の三大組織が通州に移転した。そして2019年1月11日、北京市人民政府も通州へ移転し、北京市の主な行政組織は移転が完了した。

 建設中だった北京の第2の国際空港である大興空港は、2019年9月25日に開業した。

 2020年7月17日には、雄安新区の基本的なインフラが完成したとの報道がされた。主なインフラとして環境衛生(防疫)、汚水処理、運輸、交通、排水、エネルギー、暖房、鉄道や道路、駅などに加え、白洋淀の生態保護の道路もあげられている。

雄安新区建设重大基础性工作基本完成