名古屋ボストン美術館
『吉田博木版画展―抒情の風景(ノスタルジック・ユートピア)』(2017年)



明治から昭和にかけて活躍した画家・版画家の吉田 博(1876-1950)。
(「吉」の漢字は、正しくは「𠮷」です)
初めて名前を知ったひとです。
熱海のMOA(エムオーエー)美術館所蔵の木版画コレクションをどうぞキラキラ

ってことで、展示構成は、
・序章 吉田博の木版画
・第1章 旅する画家
・第2章 山の画家
・第3章 水の画家
・第4章 旅する画家、再び
・第5章 抒情の風景
(展示総数86点)


洋画家の吉田が版画に取り組んだのは、
40代半ば過ぎとのこと。
渡米先で、木版画が売れたことと、
状態の悪い浮世絵が高値で売られていることを憂い、
本格的に木版画の制作を始めたそうな。
(彫師と摺師は自ら雇っていたそうです)

国内外を旅して、生涯制作した作品は250種類以上。
日本の名所を描いたものが多いですが、
個人的に海外の風景に惹かれるものがありました。


今回のイチ押しは、こちら音符


吉田 博
《タジマハルの朝霧 第五》
紙に木版 1932年(昭和7年) 36.2×51
MOA美術館

霧にかすんでいる部分の表現が素晴らしかった〜。
実物のタージ・マハルは真っ白ではなく、大理石にありとあらゆる宝石・宝玉で装飾を施した霊廟。
「作者はその純白の姿に心惹かれたことがうかがえる」
との解説がありました。

そのほかの海外の風景ですピンクハート


吉田 博
《グランドキャニオン》
紙に木版 1925年(大正14年) 24.7×37.2
MOA美術館


吉田 博
《マタホルン山》
紙に木版 1925年(大正14年) 51×36
MOA美術館


日本の風景もどうぞ音符


吉田 博
《陽明門》
紙に木版 1937年(昭和12年) 37.9×24.8
MOA美術館

この作品は、なんと96回摺って色を重ねているそう 目


吉田 博
《日本アルプス十二題の内 穂高山》
紙に木版 1926年(大正15年) 24.9×37.5
MOA美術館


吉田 博
《瀬戸内海集 光る海》
紙に木版 1926年(大正15年) 37.2×24.7
MOA美術館

英国のダイアナ妃は、吉田の木版画のファンだったとか。
ケンジントン宮殿内の妃の書斎に、
この《瀬戸内海集 光る海》と《猿澤池》(会場に展示あり)が飾られていたそうです 目

ほかに、GHQ最高司令官のマッカーサー、
精神分析学者のフロイトも吉田の版画を持っていた、
と言われてるらしい…

また、《瀬戸内海集 帆船》という作品では、
まったく同じ版木を使いながら色彩を変えて、
朝・午前・午後・霧・夕・夜の、6パターンの版画が作られています 目


引き続き、日本の風景…音符


吉田 博
《東京拾二題 亀井戸》
紙に木版 1927年(昭和2年) 37.5×24.7
MOA美術館


吉田 博
《金閣》
紙に木版 1933年(昭和8年) 37.6×24.5
MOA美術館


いや〜、どれも色の具合がなんとも言えないグッ
作品が完成した直後はもっと鮮やかだったのが、歳月を経て少し褪せてこうなった…んでしょうか。
(それとも、初めからこういう色合いを狙ったのか?)
どこか懐かしく感じられる色調ですよね。
そして、当時の版画としては斬新な絵柄ですね。
和風にも見えたり、洋風にも見えたり、中華風にも見えたり…と、摩訶不思議な多国風味が味わえますよ。

それにしても、海外では有名なのに国内ではほとんど知られていないなんてえーん
お近くのかたは、ぜひご覧ください!



『吉田博木版画展―抒情の風景(ノスタルジック・ユートピア)』
◆2017年1月14日(土)-2月26日(日)
 名古屋ボストン美術館
(2018年10月8日にて閉館しました)


MOA美術館 →
(静岡県熱海市桃山町26-2)

【MOA美術館の紅葉】


【吉田 博作品集】


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