名古屋市博物館
『世界遺産 ポンペイの壁画展』(2016年)



何年かに一度来日する古代ローマの展覧会が、
またまたやって来ました!キラキラ
今回は「壁画」ですよ〜音符

西暦79年、ヴェスヴィオ山(標高1,281m)の噴火によって、
灰の中に埋もれたポンペイと周辺の町。
その邸宅や別荘を彩った、美しい壁画の数々を紹介します。
(全4章、展示総数63件79点)


日伊国交樹立150周年記念ってことで、門外不出レベルの作品も並びます。
その中でのお気に入りは、こちらピンクハート


◆ 第Ⅰ章 建築と風景

赤い建築を描いた壁面装飾
フレスコ 前1世紀後半
左側の壁 : 272×127
中央の壁 : 272×235
右側の壁 : 272×126
ボスコレアーレ、考古遺物収蔵庫

邸内の壁に「演劇のセット」を描いたものらしい。
このほかにも、
"建物の中にまた建物" が描かれた壁画があります。
古代ローマでは一時期、こういうだまし絵的な表現が流行したそうな。


詩人のタブロー画がある壁面断片(部分)
フレスコ 後1世紀初頭 312×236
ポンペイ、考古遺物収蔵庫

文学コンクールで優勝した詩人の記念碑的な壁画だそう。
背景に使われている色鮮やかな青は「エジプト青」。
人類最古の合成顔料のひとつで、溶かした石英、炭酸銅、炭酸カルシウムから作られたらしい。
アレキサンドリア産の「エジプト青」は、大変貴重で高価だったとか。

この章ではほかに、壁画制作のための道具と顔料(すべて後1世紀)も展示されてますよ。


◆ 第Ⅱ章 日常の生活

犬のシュンクレトゥス
フレスコ 後1世紀 45×108
ナポリ国立考古学博物館

うきゃ〜、元祖ブサカワ犬!?爆弾
頭の上に「シュンクレトゥス」という名前が書かれています。
画面左では、サギとトカゲの戦いが。
「黒」の背景がかっこいい。


カルミアーノ農園別荘、トリクリニウム
西壁「ポセイドンとアミュモネ」(部分)
フレスコ 後62-79年 265×682
カステッランマーレ・ディ・スタビア、考古遺物収蔵庫


カルミアーノ農園別荘、トリクリニウムの再現展示
(展覧会のチラシより)

ポンペイ近郊、グラニャーノ市カルミアーノ地区で発見された農園別荘の食堂(トリクリニウム)が、立体展示で再現されてますよ!グッ
「ポセイドンとアミュモネ」は、この食堂の西壁(上の写真の向かって右側)に描かれている壁画の、中央部分の絵。
農園別荘自体は面積400㎡ほどで、ぶどう酒の製造が行われていたとみられています。


◆ 第Ⅲ章 神話

ギリシャ神話の神々が集う章…ラブ
ここに今回の目玉が〜!キラキラ
同じくポンペイ近郊の町エルコラーノ。
ローマ皇帝を讃えるための建物アウグステウムから出土した、3点の壁画でございます。


ケイロンによるアキレウスの教育
フレスコ 後1世紀後半 125×127
ナポリ国立考古学博物館

英雄アキレウスにキタラ(竪琴)の弾き方を教える
ケンタウロス族の賢者ケイロン。
(いて座の星座絵になってる人ね)


赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス
フレスコ 後1世紀後半 218×182
ナポリ国立考古学博物館

テレフォスは英雄ヘラクレスの息子。
生後まもなく山に捨てられ、牝鹿に育てられているのを
父ヘラクレスが奇跡的に発見する…という物語がモチーフです。

壁画の中の登場人物は、画面右上から時計回りに
・物語の舞台、アルカディア地方の山の精
・ヘラクレス : テレフォスの父。
・ライオン : アルカディア地方の山岳地帯の象徴。
・鷲の姿のゼウス : ヘラクレスの父でギリシャ神話の最高神。鷲は強さや不死の象徴、帝権のシンボル。
・牝鹿とその乳を飲むテレフォス
・アルカディア地方の擬人像
・アルカディアで生まれた牧神パン
だそうで。

伝説上のローマの建国者ロムルスとレムスが狼に育てられたという話は、このテレフォスの神話がもとになったのかも?


テセウスのミノタウロス退治
フレスコ 後1世紀後半 205×180
ナポリ国立考古学博物館

牛頭人身の怪物を倒した英雄テセウスが、
アテネの子どもたちに感謝される場面を描いたもの。
(神話では、アテネから毎年7人ずつの少年少女がミノタウロスに捧げられていたのです)


◆ 第Ⅳ章 神々と信仰

有翼のウィクトリア
フレスコ 前1世紀 171×124
ポンペイ、考古遺物収蔵庫

ローマ神話のウィクトリアは、
ギリシャ神話のニケに相当する勝利の女神。
(ニケ大好きピンクハート
色づかいが美しい〜!虹


踊るマイナス
フレスコ 後1世紀後半 74×60
ナポリ国立考古学博物館

「マイナス」は、ギリシャ神話の酒神ディオニュソスに付き従う熱狂的な女性信者たちの総称。
(会場では解説されてませんが、彼女たちは狂乱すると素手で人を引き裂くことも…ゲッソリ
単独でも描かれ、遺跡の発掘後、
宙を舞うマイナスの図は人々に人気の主題となったそうな。
ちなみに、マイナスはローマ神話では「バッカント」と呼ばれ、そちらの名称でも美術作品の主題になってます。


天球儀(部分)
フレスコ 後62-79年 197×210
カステッランマーレ・ディ・スタビア、考古遺物収蔵庫

これまた個人的に大好きなモチーフピンクハート
別荘の天井に飾られていたものだそう。
黄道十二宮を表す壮大な壁画の一部で、ここに描かれているのは、夏の擬人像と麦の穂の束を持つクピド(キューピッド)と推測されているそうです。


それにしても、よくぞこれだけの質と数の壁画が集まったもんだ〜!
これらの作品が約2000年前の美をそのまま保っているのは、町に降り積もった火山灰が乾燥剤の役目を果たしたからなんですって。
なるほど!ひらめき電球


そうそう、今展ではポンペイで亡くなった方々の「石膏像」の展示はありません。。。
とにかく壁画がメイン!キラキラ

あと、個人的には「ヴェスヴィオ山噴火と周辺地域埋没の再現映像」に見入ってしまいました 目
小プリニウス(後61-112)の記録に基づいて作られたもので、「噴火から、エルコラーノとポンペイの町が火砕流に呑まれるまで」の様子が、プロジェクションマッピング+立体地図で解説されています。
(ヴェスヴィオ山からの直線距離は、エルコラーノが西へ7km、ポンペイが南東へ10kmくらい?)
それによると、

西暦79年8月24日
・午後1時 : ヴェスヴィオ山噴火
・午後2時 : 噴煙柱が形成される
・午後3時〜6時 : 降灰
西暦79年8月25日
・午前0時〜1時 : 火山雷発生
・午前4時 : 第1火砕流発生(エルコラーノ埋没)
・午前5時 : 第2火砕流発生
・午前6時 : 第3火砕流発生
・午前7時 : 第4火砕流発生(ポンペイ埋没)
・午前8時 : 第5火砕流発生

とのことで、降灰が収まってから噴煙柱が火砕流になって落ちてくるまでの間に避難していれば、多くの人が助かったかもしれないのに〜えーんと悔やまれてならない…
迫力の映像、どうぞご覧くださいね。


で、、、今回の展示とは関係ないけど、
ヴェスヴィオ山が噴火した瞬間の様子を再現した3Dアニメを発見。

【ポンペイが迎えた運命の日】


怖すぎ…ドクロ


『世界遺産 ポンペイの壁画展』
◆2016年7月23日(土)-9月25日(日)
 名古屋市博物館
・Twitter →
・Facebook →
・YouTube →
兵庫県立美術館山口県立美術館福岡市博物館に回ります)


名古屋市博物館 →
(名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1)

【世界遺産 ポンペイの壁画展(名古屋): 壁画の設置作業】


↑この壁画の重さは約500kgらしい。

【世界遺産 ポンペイの壁画展(東京): 内覧会】


↑展覧会の見どころを紹介しています。

・テーマ「海外の歴史・文明」の記事一覧 →