俺たちの行為はきっと、
世間で言うところの犯罪行為に近いのだろう。
ターゲットにするのはどうしようもない悪党共ばかりだが、
どんなクズであっても人間を犠牲にするという罪悪感は拭いきれない。
ただそれはあくまでも自身の感覚の問題であって、
今まで俺たちの行為が世間で一時的に
「神隠しだ」「宇宙人に連れ去られたに違いない」等と面白半分に騒がれることはあっても、
犯罪として立証されたことは一度もない。
俺たちの仕事は完璧だった。
騒動は「組織同士の抗争によるものと見られ詳しい事情は不明である」と言う警察の見解で収まりを見せ、
やがては世間から忘れ去られてしまう。
そう、まるで初めから何事も無かったかのように。
いともあっけなく。
もし俺が犠牲になった関係者の家族だったなら...
それはなるべく考えないようにしている。
そんなことを誰かと話したことはないけど、
多分弟たちも皆同じなんじゃないかと思う。
残酷な、でも何処か美しくもあるあの行為を
生きていくために必要なことなんだと
自分に言い聞かせ肯定する。
俺たちに出来ることはそれしかない。
それが俺たちの
“さだめ”
なのだから。
しかしながら。
今まで俺たちの仕業だとは世間に全く知られていないとは言え、
幾度も似たり寄ったりの計画を実行してきたので
今度は最悪バレてしまう可能性だってある。
どうしよう、
もしかしたら今度こそ世間にバレてしまうかも...
そしたら必然的に俺たちの正体もバレてしまう。
そんな不安を抱えながら
いつも計画を実行している。
誰一人口にはださないけれど、
弟たちもきっと同じ思いに違いない。
毎回計画の大半を決めるのはリーダーであるスホの役目だ。
スホは普段抜けているように見えて可愛い部分もあるのに、
実はすこぶる頭が切れて
こんないざという時は本当に頼りになる。
俺はただ見守り助けるだけでいい。
スホは必ず、まず一番に俺に相談してくる。
それは俺が頼りになるからと言うより、
最年長だから立ててくれているんだと思ってる。
スホの計画を一通り聞いたあと俺は決まって
「それでいいと思うよ」
と頷くのだった。
ただ今回の作戦に関しては
簡単に首を縦に振ることが出来なかった。
スホがターゲットとなる組織に自ら潜り込み情報を得て、
なおかつターゲットと対峙する当日も相手側の一員として最後まで行動を共にし攪乱する
という非常に危険を伴う内容だからだ。
それはとても効率的な方法ではあるけど
相手側にバレたらスホの身が危ないというリスクをも伴う。
「一緒に行くよ」
俺がそう言うと、
スホはその答えをまるで分かっていたかのような目をした。
「二人とも居なくなったら
誰が弟たちの面倒を見るの?」
スホの言葉はもっともだった。
弟たちは普段それぞれお調子者だったり何でも出来てしっかりしていたりして
深刻そうに見えなくても、
実は精神的に脆い部分だって持っている。
俺たちが二人とも居なくなったら、
上辺では平気な顔をしていても
内心不安がるに違いない。
それが失敗に繋がったら...
そんな俺の考えを見透かしたのか
「ヒョンは皆と一緒に行動して」
そう言われると、
俺は結局いつものように頷くしかなかった。
実際大概の策はもう今までやり尽くしてきてネタ切れなのだから、
これは最善の策に違いなく誰かがやらねばならないことで
スホの申し出は有難かった。
今回はかなり危ない橋を渡ることになる。
いつも以上に慎重にならなければ。
弟たちがこのことを知ればきっと猛反対して
最悪作戦を練り直さねばならなくなる可能性もあるので、
スホが暫く留守にする理由は適当に誤魔化して
真実は当日まで明かさないと二人で決めた。
(つづく)