世間から忘れ去られたかのような場所にあって、
控えめかつ何処か昔懐かしい店構え。

年代物の扉には古い喫茶店等でたまに見かける開けるとカランと鳴り響くベルが備え付けてあり、
足を踏み入れると
そこには外見からは想像もつかない立派な、
西洋のお城かと見まごう広い空間が待ち構えている。

そんな、繁華街から少し離れた路地裏にある一見さんお断りの会員制高級クラブ、
“ラブショット”でおもてなしをする彼ら。

その辺のよくあるホストクラブの如く
浴びるように酒を飲んだりお客と下世話な会話を交わすこともしなければ、
無論お客に体を触らせることもない。

それでもビジネスとして成り立つのは
彼らの持ち前の人並外れた容姿、また磨き上げられた歌とダンスによって、
地球に居ながらにしてまるで煩わしい重力から解き放たれたかのような
癒やしの一時を提供しているからだ。

その魅力は容易に口で説明出来るものでないのだが、
訪れた人々は漏れなく時間と空間に酔いしれ虜となり
噂は秘かに噂を呼び、
客足は開店以来途絶えたことがないどころか
増すばかりである。

そして訪れた人々が語る話で共通しているのは、
「彼らは地球人ではないに違いない」
というようなこと。

勿論本気でそう思っている客などいないだろう。

それは彼らの美貌と才能に対する最大級の賛辞であり、
他愛ないジョークに過ぎない...

(つづく)