日本統治下の、1905年8月のこと。
台湾島北部の街・宜蘭に住む、
陳という男性が、
困り果てていました。
彼の家の中には、
毎日のように、
「紅い服の亡霊」が現れるのです。
その亡霊が直接何かをする訳ではありませんが。
その姿を目撃した家族は、
皆ことごとく体調を崩してしまいます。
どうしたらいいのか。
困り果てていた陳に、
一人の知人がアドバイスをしました。
似たような経験をした人を知っているので、
その彼に対処法を聞いてみたらどうだ、と。
もっともだと思った陳は、
その知人の引き合わせで、
李という男性に会います。
陳の質問に応じ、
李は答えました。
李もまた、
自宅にて頻繁に亡霊を目撃しており、
そして陳同様、
一家皆病に倒れたのですが。
そこで李は、
商売の神である、
三国志の関羽――関帝の神像を家に置き、
また、霊媒師を招いて、
対処法を尋ねました。
霊媒師は、
呪符を家じゅうに貼ることと。
鋤や鍬を準備して、
家の中から、
「死者の骨」を掘り出すことを、
指示しました。
家の中に骨がある?
李は当初、
その言葉を信じなかったのですが。
ある夜、
夢の中に関帝が現れたかと思いうと。
関帝もまた、
家の中で骨を掘り返せ、と指示するのです。
李は大いに畏れ、
翌朝、
急いで家の下を掘り返してみたところ。
本当に、人の骨が出てきたのです。
李の一家が、
その骨を丁重に埋葬すると。
家は平穏を取り戻し、
再びそのような病にかかることはありませんでした。
この李の話を聞いた陳は、
同じ事を試みてみます。
すると。
関帝も、霊媒師も、
同じ事を告げます。
家の前の竹林に、
女性の遺骸がある。
その紅い服の女性が、
祟りをなしているのだ、と。
陳は急いで竹林に行き、
そこを掘り返します。
果たして、
そこには紅い服の女性の遺骸があったのでした。
<台湾日日新報>より