日本統治時代の、1897年12月のこと。
台北市南部にある河原の街・大稲埕に、
40歳前後の王という男性が住んでいました。
普段から、
飲む打つ買うの三拍子揃った生活を送っていた彼は。
その日は珍しく、
外出することなく、
家にいて、アヘンを吸っていました。
美女の幻覚を見たりしながら、
気持ちよく、
精神を漂わせていたのですが。
その中で、
彼の子供が、
跳ねて、飛んで、倒れる情景を目にします。
王も人の父でした、
本能的に立ち上がり、
子供を助け起こそうとしたのですが。
突如、
口の中から熱い物が湧き出て来て。
彼は、大量の血を吐いて、倒れます。
彼の吸っていたキセルが、
彼が身を起こした瞬間に、
その喉へと突き刺さったのです。
鮮血は泉のように噴き出て来ます。
家族は急いで彼を病院に連れて行きますが、
既に手遅れでした。
一時間も経たずに、
王は死亡してしまうのでした。
キセルが喉に突き刺さる。
あり得ないことではありませんが、
しかし、不気味な出来事です。
人々は、
何か不思議な力でも働いたのではないか。
そう噂をし始めます。
現に。
王の家族たちは、こう証言していました。
死の直前、王が語っていたこと。
夢の中に、女性の幽霊が出て来て。
髪を振り乱して、王に向かって言った。
「うらめしい、うらめしい、お前を殺す!」
と。
王の家族も、周囲の人々も。
王は、恐らく、賭博やアヘンなどではない、
何か恐ろしいことをしたのではないだろうか。
そうでなければ、
女幽霊に命を奪われることなんてあり得ないのではないか、
と、噂をし合ったのでした。