日本統治時代、1905年のこと。

 

台南の呉という男が、

友人の陳との、

酒の席の会話の中で。

 

まず愛人を持って、

その上で、正妻を迎えるつもりだ、

 

と話します。

 

陳は首を傾げ、

 

そんなことをするにはお金がかかるぞ、

と言ったところ。

 

呉は笑って、

自分は金持ちなんだと言い。

 

懐から大金を取り出し、

それを陳に見せびらかせます。

 

大金を見た陳は、魔が差したのか。

 

その夜、呉を殺害。

金を盗んで逃亡します。

 

誰にも知らずに、

台南からかなり離れた場所にある、

塩水渓まで辿り着いたのですが。

 

そこで何故か、突然。

 

陳は台南に舞い戻るのです。

 

そして。

陳は全身返り血まみれであったために、

通行人に通報され、

あっという間に逮捕されたのでした。

 

 

さらに。

呉の婚約者であった、

余という女性は。

 

呉の死後、

呉の両親に向かい、

 

自分は婚約を守り、

呉の家に入ると宣言。

 

呉の両親は、大いに感動し、

彼女を家に迎え入れます。

 

しかし、この余は。

 

呉の家の資産が目当てでしかなく。

早速、林という愛人を作ってしまいます。

 

呉の家人は、

すぐにそれに気付いたのですが。

 

家の恥になる、と、

見て見ぬふりをしますが。

 

やがて余は、

林との間の子供を産んでしまいます。

 

呉の家人も、

流石にこれには怒り。

 

余の財産の差し押さえをしようとしますが。

 

余の愛人の林は、

呉家の金を使って、

日本人の弁護士を雇い、

その金を守ります。

 

かくして、紛争に至るのですが。

 

そんな中。

一陣の風が吹いたかと思うと。

 

林がばたりと倒れます。

 

脳卒中でした。

 

林は一命をとりとめたものの、

半身不随となってしまいました。

 

 

余は子供を産んだものの、

財産を奪われ、

家を追われてしまったのでした。

 

 

 

人々はこの出来事を、

呉の霊魂の仕業だと、

噂したのでした。