台湾西部に、嘉義という街があります。

 

この街の東北部の小さな山の上に、

70ヘクタールほどのダムがあります。

 

「蘭潭」という名のこのダムは、

300年前、

当時台湾を支配していたオランダ人が基礎を作り、

 

100年前、

日本統治時代に、現在の形に整備されました。

 

このダムのエリアは、

「蘭潭風景区」という名の観光名所になっており、

 

数多くの水鳥などの自然のみならず、

LED噴水や芸術的なオブジェなどもあり、

多くの観光客の訪れる場所になっています。

 

しかし。

 

この蘭潭には、

一つの伝説があります。

 

「魚精」伝説。

 

蘭潭の底には、

2mを超える巨大な魚の精霊が住んでおり。

 

釣り人が、

このダムで魚を一匹釣り上げる度に、

 

その代償として、

人間を一人連れ去る。

 

そういう伝説です。

 

 

そして、実際に。

 

1982年から2002年までの20年間で、

蘭潭にて死んだ人数は、

実に75人を超えました。

 

殆どが自殺ですが、

中には、

釣り人の原因不明の水死もありました。

 

その後、

嘉義市政府が意識喚起をしたこともあり、

釣り人の数も、

自殺志願者の数も減り。

 

死者の数に関しては、

ややペースは落ちたものの。

 

それでも、

女子中学生3名の心中事件が起きたり、

 

ダムの水辺で、

母親が二人の幼児と共に焼身自殺をしたり、

 

ついに、死者の累計が100名を越えました。

 

この蘭潭に、死者が絶えることがありません。

 

 

2006年。

日照りが続いた夏。

蘭潭の水位が急激に下がった際。

 

この「魚精」を発見しようと、

ダム底をさらった人々がいたのですが。

 

巨大な魚などは、

どこにも見つからず。

 

その代わりに。

 

清朝時代のものらしい、


小さな古い墓が、

見つかっただけでした。



今もまだその墓は、

誰にも祀られることなく、

ダムの底に沈んだままです。