白曉燕を誘拐後、殺害。
その後、
各地で犯罪を犯しながら、
警察の捜査の網をかいくぐり逃走を続ける、
陳進興・高天民・林春生の三人。
時の大統領・李登輝は、
「犯人を発見し次第、射殺すること」という、
大統領令を発令。
台湾じゅうが異様な空気の中。
彼らの行方がどうしても掴めない警察は、
一行が山中に潜伏しているのではないか、と推測。
山狩りを始めます。
しかし。
実の所、彼らは街に居ました。
台北市のど真ん中に。
裏社会のネットワークを用いて、
密かに市街地に潜伏すると共に。
着々と、国外逃亡の手配を整え。
ついに、
8月19日に台中に渡り。
偽造パスポートを受け取り、
8月21日夜、
厦門行きの飛行機に乗り込む。
そんな手筈が、整います。
しかし、いざ台北を離れようとした、
その8月19日。
午前10時32分、
警察に一つの通報がもたらされます。
建設中のアパートの六階に、
奇妙な男性二人がいる、というものです。
二人は常に、
バイク用のヘルメットを被っており。
ガラス越しに部屋の中を見た時にも、
同様にヘルメットを被っている。
犯罪者が隠れているではないのか、
という通報です。
この段階では、
それが誘拐犯であるとは想像もしていなかったのでしょう、
曹立民と黄慶財の二人の警官だけが、
確認の為に現場に向かい。
六階に上がり、
通報された部屋の前に到着。
インターフォンがなかったため、
扉をノックします。
中にいたのは、
高天民と林春生の二人でした。
二人は、扉の穴から外をのぞき、
そこに警察官がいることを知ると。
すぐさま、拳銃と短機関銃を手に、
ベランダに出ると、
排水パイプなどを伝って、逃走を図ります。
その意図に気付いた二人の警官は、
急いで無線で応援の要請をしつつ、
一階まで降り、アパート裏口へと急行しますが。
そこで、地上に降り立ったばかりの、
高天民と林春生と遭遇。
高天民は、躊躇わず短機関銃を乱射。
ヘルメットをつけてもいなかった曹立民は、
頭部に銃弾を受けて即死、
黄慶財も腕に銃弾を受け、倒れます。
その時、周辺に大勢の通行人が居たのですが。
幸いなことに、
高天民の乱射した銃弾は、
その誰にも命中はしませんでした。
が、現場はパニックに陥ります。
逃げ惑う人々の中を、
逃走を図って走る二人。
そこにようやく、
応援の部隊が現れます。
指示なくとも発砲をする許可を得ていた彼らは。
林春生を発見した瞬間に、
一斉に銃撃を加えます。
林春生は、多数の銃弾を浴びながらも、
逃走を図りますが。
袋小路へ逃げ込んでしまい。
そこで力尽き、倒れ。
午後二時すぐに、死亡が確認されます。
かくして一人の凶悪犯を始末したのですが。
高天民は逃走を続けています。
陳進興も近くにいるかも知れません。
現場には、八百人以上の警察が集まり。
特殊部隊も投入され。
ライフルを構え、盾を掲げた姿で。
周辺にある全ての建物の、
全ての部屋の中へと突入します。
八月の猛暑の中。
無数のテレビカメラと、
無数の野次馬が取り囲む中。
徹底的な捜査が続けられるのですが。
どれだけ探しても、
高天民の姿は、どこにもない。
一方で、
屋根裏を調べていた一人の警察官が、
足を踏み外し転落、
大怪我を負ってしまう始末。
そして、午後五時。
高天民も陳進興も、
逃亡してしまった、
と警察は判断、
空しく、撤収して行ったのでした。