衝撃的な子供の証言と、その呆気ない真相。
ほぼ同時期に発生した日本人女子大生殺害事件が、
救いのない終わりを迎えたのに対し。
こちらは、
幾つかの心霊現象があったとはいえ、
ごくごく平和な結末だったこともあり、
今でも時折気軽に語られる、「呉瑞雲命案」。
この話の主役は、勿論、
殺害されたと考えられた呉瑞雲ではなく、
犯人と目された姚正源でもなく、
衝撃的な発言を行った二人の子供でもなく、
陳桂梅その人でしょう。
娘の失踪に対して、
駆け落ちしているなど夢にも思わず。
婿に殺されたと思い込み、
孫に嘘を吹き込み、
ポルターガイスト現象を捏造し。
霊廟を作り、
占い師を頼り、
マスコミ等の前で騒ぎ続け。
警察を、マスコミを、
そして台湾じゅうの人々を振り回し続けた、彼女。
信じられないような、凄まじいキャラクターです。
が。
彼女のような、嘘つきではないにしても。
台湾には、
自己主張が恐ろしく強い女性が、
非常に多いように思えます。
仕事においても。
遠慮会釈なく、
恥じらいもなく、
ぐいぐい前面に出て、
何があっても、
利益を確保しようとしてくるのは、
大概、女性です。
ただ、誤解しないで欲しいのですが、
私は、これはこれで、
悪いことだとは決して思っていません。
彼女達の行動力は、常に、
「家族を守る」ために発揮される。
家族の幸せためには、金を確保する必要がある。
そのために、怯んでなどいられない。
そういう信念が、
彼女達の中にあるのであって。
それを止めるのは、本当に難しいことです。
――でも。
この陳桂梅にしても。
本文では触れませんでしたし、
当時の報道でも同様にほとんど触れられませんでしたが。
陳の夫=呉瑞雲の父は、ちゃんと健在で、
当時も、普通に仕事をしていました。
でも、
人前に立つことは一切なく。
失踪事件に関して発言することも一切なく。
でも、
妻の暴走を止めることもなく。
ただただ、
傍観していたようです。
もし。
この父親が、
妻を差し置いて、前面に出ていれば、
この事件は、
もしかしたらもっと簡単に解決したのではないか。
そう思わざるを得ません。
考えてみれば。
被疑者になった姚正源にしても、
犯行を否定した後は、
ただ泣いていただけ。
もし彼が、自分の子供達を厳しく糺していれば、
或いは、子供達は簡単に偽証を認めていたかもしれない。
そして呉瑞雲も、
あっという間に見つかったかも知れない。
かえすがえす。
こういう台湾人男性には、
もうちょっと頑張って欲しい、と思わなくはないのですが。
ただ、そんなことを言う私自身、
こういう台湾人女性達に対しては、
どんな心霊現象よりも、
首のない女の夢よりも、
強い恐怖心を覚えてしまうのですが……。