幼い兄妹の証言に従い、

呉瑞雲が解体されたという場所から、

血痕を見出そうと、薬物を噴霧した、

警察鑑識官ですが。

 

――驚いたことに。

 

その場所から得られた血液反応は、

ごくごく、微量のものでした。

 

普通に生活していれば、

鼻血ぐらい流すこともあるでしょう。

その程度の、量です。

 

一人の人間の殺害、解体が行われた場所では、

絶対にあり得ません。

 

警察は、急いで室内の他の場所にも、

薬品を噴霧しますが、

 

どこを調べても、

ほとんど、反応はありません。

 

この結果に。

警察は大いに困惑をします。

 

ビニールなどの上で殺害、解体をしたのか?

床板を全て張り替えたのか?

或いは、

殺害現場は、そもそもここではなかったのか?

 

そんな説が次々出てきますが。

 

とにもかくにも。

殺害現場の特定よりも、重要なことがあります。

 

死体を発見すること。

 

 

兄妹の証言は。

殺人、解体の情景のみならず。

 

その死体が放棄される所まで、

詳細に行われていたのです。

 

 

パパは、ママの体を袋に入れ、

それを灰色の車に載せた後。

兄妹も同乗させ、

少し、車を走らせ。

 

近くの河原で穴を掘り、

死体をそこに埋めた、と。

 

警察は、兄妹の証言通りの場所へ急ぎ、

懸命の、掘り返しを行います。

 

 

 

――しかし。

 

どれだけの人員が、

どれだけの箇所の、

どれだけの深さを掘っても、

 

骨の欠片一つ、出てきませんでいた。

 

 

あてが外れた警察は、

茫然とします。

 

 

そして。

 

捜査は

暗礁に乗り上げます。

 

子供達の証言は、筋が通っているのに、

証拠は何一つ見つからない。

 

容疑者である姚正源は、

黙して何も語らないまま。

 

警察には、

手がかりが一切なくなってしまいました。

 

そもそも、

世間からの注目度の非常に高い事件であり。

 

未だ何も見つけられない警察に、

批判の声があがる。

 

一人の国会議員が、

連日、幼児を連れまわして捜索するなど、

人権侵害も甚だしい、と批判し始める。

 

 

それに加えて。

呉瑞雲の母、陳桂梅は、連日マスコミの前に現れ、

声高に訴え続けます。

 

娘が紅い服を着て夢に現れ、

夫に殺された、

今は水の中で震えている、

早く助けてくれ、

と何度も告げた、と。

 

その夢の直後、自宅一階に作った、

呉瑞雲の霊を慰めるための霊廟をマスコミに公開しつつ、

 

婿の早期逮捕を主張し続けるのです。

 

 

警察は、苦境に陥ります。

 

 

しかし、そんな中。

 

突然、警察の元に。

 

 

重要な情報が、

飛び込んで来るのでした。