1988年7月、
台北に住む姚正源の妻・呉瑞雲が失踪。
その三か月後の10月上旬、
呉瑞雲の母・陳桂梅に向かって放った、
「パパがママの頭を持って行った」という、
5歳・4歳の兄妹の証言。
警察が確保し、尋問するも、
犯罪を認めようとせず、
涙を流し沈黙を続ける姚正源。
証拠の確保を急ぐべく、
警察は、子供達の証言に従い、
失踪以前に彼ら一家の暮らしていた部屋へと急ぎます。
そこにはもう、新しい借り手である、
廖が住んで居たのですが。
その廖は、警察から事情を聞いた途端、叫ぶように言います。
「俺はこの部屋で、首のない女を見たんだ!」
それは、夢の話で。
この家に移り住んでから、彼は何度も、
白い服を着た、首のない女の霊を見た、
と言うのです。
その首のない女は、立ったまま。
自分に向かい、
何かを訴えかけるように、
肩を左右に大きく振り続けていた、と。
そんな夢を、
何度も何度も見た、と言うのです。
実際、
その部屋には、
大きな祭壇と神像などが所狭しと並べられ、
何本もの線香が立てられており、
廖が、相当に恐ろしい目に遭っていることがわかる。
とはいえ、勿論。
そんな夢の話を証拠として採用することは出来ません。
それでも、
続く廖の証言には、警察も大いに注目します。
廖は語ります。
その家に越して来た時、
(台湾の賃貸物件は、
あらかじめ家具が備え付けられているケースが殆どですが)
その部屋のベッドの上に、
古い衣服が置き捨てられていたあったこと。
その色は深紅色をしており、
血がついているではないかと思ったこと。
さらに、冷蔵庫を開けると。
中には、ビニール袋に入った何かの肉が、
大量に残されていたこと。
そしてそれらはひどく腐っており、
蛆も湧いていた、とのこと。
勿論廖は、
その衣服や肉をすぐに捨ててしまっていて。
警察がその後捜索しても、
それらを発見することは出来ませんでしたが。
当然、考えます。
その血に染まった衣服は、
妻が殺された時に来ていたもので、
その腐った肉は、
妻の遺体の一部である、と。
警察は確信します。
この部屋で、姚が妻を殺害、解体したことは疑いない、と。
そこで、翌日夜10時。
5歳、4歳の兄妹を連れて、
警察は現場検証を行います。
本来なら眠っている筈の、その時間に、
それでも兄妹は、しっかりとした口調で言います。
そこで、パパが包丁を持ってママを刺した。
ママの首を切り取った。
ママの手足を切り取った。
その後、バケツを持ってきて、
水を流して床から血を洗い落とした。
その言葉は明瞭で。
警察の鑑識官は、
血液の成分を検出する薬品を、
その証言通りの場所に噴霧します。
――そして。
その結果に、
警察は、愕然とするのでした。