「パパが、ママの頭を持って行った」

 

娘・呉瑞雲の失踪から約3か月後の、

1989年10月4日。

 

婿である姚正源が席を外した隙に、

二人の孫から、そんな恐ろしい証言を聞き出した、

陳桂梅は。

 

驚愕し、戦慄します。

 

それでも、念のために。

翌10月5日、再度一家を食事を招き、

そして婿に席を外させた上で、

孫にもう一度同じ質問をぶつけます。

 

すると。

 

5歳の兄と4歳の妹は、

同じ言葉を繰り返しただけでなく、

さらに、具体的な言葉を並べるのです。

 

曰く。

 

あの夜、パパとママは激しい喧嘩をしていた。

パパが怒って、ベルトでママを叩いた。

パパが、ママの頭を持って行った。

 

パパが、ママの足を持って行った。

ママのお腹の中身を袋に入れた。

 

そして、私達に言った、

ママは別の男の人と出て行った、と。

 

 

孫達の言葉を聞いた祖母は。

 

激しく動揺しながらも、

その言葉を、しっかりテープに録音。

 

そして、警察署へと駆けこんだのでした。

 

孫娘の言葉を聞いた祖母は。

 

激しく動揺しながらも、

その言葉を、しっかりテープに録音。

 

そして、警察署へと駆けこんだのでした。

 

 

警察は即座に動きました。

 

翌10月6日、

娘達を幼稚園に送り届けた姚は、

待ち構えていた警察によって、

 

孫娘やその友人、送迎の父母、幼稚園の先生達の目の前で、

確保され、連行されて行きます。

 

姚は地下の取調室へと連れて行かれ、

そこで尋問を受けます。

 

お前が、妻を殺したのだろう、と。

 

姚はそれを否定します。

何度質問されても、

徹頭徹尾否定を続ける。

 

しかし、警察の疑念は、ますます強くなります。

 

妻を殺していないと言うなら、

この数か月彼女はどこにいるのだ、という質問に対し、

分からない、と答えるだけ。

 

さらに、妻は普段何をしていたのか、という質問には、

ある会社で働いていた、と答えるのですが、

何という会社だと尋ねると、

その会社名は答えられない。

 

長々とした取り調べの末、

ついに姚は、殺人を否定することもなり。

 

ただただテーブルを眺めて、

涙を流すだけ。

 

嘘を吐いているから悲しいのだろう、

そう警察が言いますが、

 

やはり、姚は何とも答えず、俯くまま。

 

 

これでは、本人の自供を引き出すのは難しい。

 

そう判断した警察は、

 

子供達の証言を元に、捜査を進める方針に転換。

 

 

彼らはまず、殺害現場とされる、

夫婦が当時住んで居たアパートへ向かいます。

 

夫婦が転居してから既に三か月。

 

その部屋には、

既に別の住民・廖が入居していました。

 

 

その廖は、

突然やってきた大勢の警察官に、面食らいながらも。

 

その部屋が、

バラバラ殺人事件の、現場である可能性がある、

と聞かされた途端、

 

 

叫ぶように言ったのでした。

 

間違いない、と。

 

「俺はこの部屋で、首のない女を見たんだ!」

 

と。