日本人女子大生、Mさん失踪事件の、

重要参考人として連行された劉学強は、

 

開口一番、その日の日付を尋ね。

3月4日であることを聞くと、

泣き崩れてしまいました。

 

彼の発言によると。

 

廟で行った占い結果で、

3月4日は「最悪の日」だったのです。

 

今日はもう、逃れられない。

 

そう覚悟を決めた劉は。

いともあっさりと、認めてしまうのです。

 

Mさんを殺し、彼女の死体を自分の家の裏庭に埋めた、と。

 

警察は現場に急行、

勢い込んで裏庭を掘り返します。

 

が。

何も見つかりません。

掘り返した痕跡もない。

 

警察が改めて劉を追及すると。

 

今度は、市内の別の場所を指示しますが。

そちらにも、何も見つからない。

 

その内に、劉の言動はどんどんおかしくなってきます。

言動が支離滅裂になる。

元々精神疾患の病歴がある人物です。

何の証拠も見つからなかったこともあり。

 

その日のうちに劉は釈放され、

帰宅が許されたのでした。

 

 

けれども。

警察の威信のかかった捜査です。

 

翌3月5日、警察は、

殺人及び死体遺棄の容疑者として、

彼の拘留に踏み切ります。

 

しかし。

最悪の3月4日を切り抜けた劉は、

態度を一変。

 

Mさんなど知らない、と言い始めます。

 

警察が追及を続けますが、

彼の言葉は変わらない。

 

何の供述も得られないまま、数日が経過。

拘留期限が迫ってきます。

 

自白がないだけでなく、

依然として、何の証拠もない。

 

このまま起訴しても、

確実に証拠不足で無罪になるでしょう。

 

死体のありかか、

せめて、凶器のありかでも吐かせなければ。

 

そう考えて、懸命の取り調べを続ける警察ですが。

一向に手ごたえがない。

 

Mさんを知らない、と答えるか。

 

或いは、支離滅裂な内容を呟き続けるだけ。

 

もう、無理なのか。

警察の中に、そんな諦めムードが漂いだした頃。

 

ある時を境に、事態は急転するのです。

 

 

その夜。

 

拘置所にて劉が、

シーツを用いて、

首吊り自殺を図ったのです。

 

幸い、すぐに気付いた担当官により、

どうにかその自殺は阻止。

 

すると、その翌朝。

突然劉は、蒼白な顔で、話し始めたのです。

 

毎夜毎夜、Mさんがやってくる、と。

 

最初は遠くからこちらを見ているだけだったのに、

どんどんこちらに近付いて来て。

 

今では、顔がくっつくほどなのだ、と。

 

俺を一刻も早く、

車に戻してくれ、と。

 

観音様が守ってくれる、俺の車に戻してくれ、と。

 

激しく震えながら、

わめくように、そう語る劉。

 

そして、取調官が、

何かを問うより前に。

 

突然、堰を切ったように、

劉は、自白を始めたのでした。