夫の為に、死を選んだ妻の話。
私自身、何気なく見ていたテレビに映った、
エレベーターで抱き合う40代の夫婦の姿を、
「いい年して仲の良い夫婦だなぁ」と、
何気なく見ていたのですが。
それが、
夫の為に死を覚悟した妻と、
妻を死に送り出す夫との、
訣別の抱擁であることを知って、
流石に、胸を突かれる思いがし、
YOUTUBEなどを漁って、
その情景を何度も見返してしまいました。
一つの情報を得るだけで、
見方がまるで変わる映像でした。
さらに、もう一つ。
この物語には、一つの事実を知るだけで、
解釈が大きく異なるポイントがあります。
「通報をしたのは誰であるか」という点。
噂の通りに、
妻の死亡時刻が、通報より前であるとしたら、
完全な「怪談」になりますが。
警察発表の通りに、
妻の死亡時刻が、通報より後であるならば、
これは、「怪談」などではない、
全く別の物語になります。
覚悟して、メモに書かれた通りの自分の死に場所やって来たとはいえ。
借金まみれの未来への、絶望。
夫への愛の為に決めた、覚悟。
強盗が来たと告げねばという、義務感。
実際に死を目の前にした、恐怖。
本当にこれでいいのかという、逡巡。
そして何より、
今、警察に真実を告げ、アクセルを踏み込めば、
自分は今後も生き続けることは出来るという、希望。
様々な感情が彼女の中に交錯した、20秒。
そう、
その時の彼女の心情を想像すると、
心臓を鷲掴みされるような、
そんな気持ちを覚えるのですから。
やはりこの物語は、
途轍もなく恐ろしい、「怪談」なのでしょう。