銃殺体として発見された女性は、
自らの死に場所を記したメモを残していた。
勿論、即死であった彼女の、ダイイングメッセージなどではない。
彼女が生きている内にそれを記し、
それを自らビリビリに破り、
車の窓から投げ捨たが、
そのうち一枚が、車内に飛び込んでしまった。
警察は、そう判断しますが。
何故彼女は、その地点をメモに記したのか。
まるで見当もつきません。
とりあえず、
強盗犯によるものではない、考えた警察は。
彼女の身元を探ることにします。
女性の所持していた身分証から、
家族に連絡が行きます。
真っ先に現場に現れたのは、彼女の夫。
彼は、余りに悲痛な叫び声をあげ。
こういう現場に慣れている筈の警察官達も、
心も動いてしまったほど。
しかし。
この夫に聞き取りをしている内に。
実は彼は、夫ではなく。
五年前に離婚していた、前夫である、
という奇妙な事実が判明します。
ですが、
彼らはその後五年間、ずっと一緒に住んでおり。
当日のアパートの監視カメラのにも、
夫婦がエレベーターに乗り込んだ途端、
キスをして八秒間もハグをする、
非常に仲睦まじい様子が録画されている。
離婚した夫婦が、どうして?
ここに何か事情があるに違いない。
警察はそこに怪しさを感じ。
この夫の身辺調査に入ります。
彼ら夫婦はコンビニエンスストアを経営しており、
一時期は五つの店舗を抱えていたのですが、
徐々に経営状態は悪化、店を手放して行き、
その時点では、あと一店舗しか残っていなかった。
しかも、妻は荷物搬入の際、
脊椎損傷の大怪我を負ってしまい、
その治療費も必要な状況。
その上、高利貸しに1400万元(約5000万円)の借金もある。
そこで、借金を夫に一本化、その上で偽装離婚することで、
妻がまた新たな借金を出来るようにした、というのが、
裏の事情であったことが判明します。
そして、その上で。
夫はこの妻に、2000万元(約七千万円)もの生命保険をかけていた、
という事実まで判明。
加えて。
妻が殺されたその夜、
夫は帰ってこない妻に向けて、
何度も何度も電話を入れていたのですが、
夜10時以降、妻は一度も電話に出なかったのに、
夫はただ電話をかけ続けただけ。
警察や知人に相談したりは、
一切していないのです。
俄然、この夫が最重要容疑者として浮かび上がってきます。
借金に苦しむ夫が、
保険金目当てで、妻を殺したのではないか。
警察は、半ばそう確信します。
しかし。
この夫、殺人事件のあった時刻には自宅アパートにいたことが、
監視カメラの映像などから判明。
確実なアリバイが確認されました。
とはいえ。
委託殺人などの容疑が晴れたわけではありません。
ですが、
近日の、夫の行動や、携帯電話の通信履歴を調べても。
そこには、何ら疑わしいものは浮かんでこない。
怪しい接触者は皆無なのです。
夫婦仲睦まじい様子だった、監視カメラの映像を見ても。
死体を見た時の泣き叫び方から見ても。
夫の容疑は薄くなって行く。
と、そんな時。
被害者である、妻の方の最近の足取りを追っていた、
警察の別のグループが。
その妻の接触者の中に、
奇妙な人物を発見するのです。