二〇〇六年九月、台湾東部花蓮でのこと。
地域の住民数人から警察に、
「ある家から悪臭がする」という通報が寄せられます。
その夜、警察がその家を訪れ、ノックをしますが、
どれだけ叩いても反応はありません。
家の主人に電話をかけても反応はない。
そこで警察は、扉をこじ開けて中に入りますが。
中は真っ暗。
スイッチを押して電気をつけると、
大量の蠅が飛び交う中、異様な悪臭がする。
警察は、一階、二階と調べますが、
誰もいないし、何の異常もない。
しかし、三階の浴室に異常を発見します。
扉の隙間が、テープで厳重に目張りをされているのです。
警察は急いでテープを外し、
浴室の扉を押し開けようとすると。
何かに引っかかって、うまく開かない。
ただ、扉の隙間からは、ひどい腐臭がする。
ここが悪臭源であると確信した警察は、
数人がかりで、力ずくで扉を押し開けます。
すると。
その、広くはない浴室には。
子供の死体が、転がっていたのです。
五人もの。
その死体は全て、ロープや鉄線で手足を縛られており。
顔にはプラスチックの袋がかぶせられており、
目や鼻、口は、全てテープが貼られてていました。
明らかに、事件です。
すぐに大勢の警察官がかけつけ、捜査が始まります。
まず、判明したのは。
その五人の子供は全て、
その家に住む夫婦・劉志勤(夫)・林真米(妻)の間の子供(台湾は夫婦別姓です)、
19歳長男、18歳次男、15歳長女、13歳次女、10歳三男の、五兄弟でした。
当然、劉・林の夫婦の行方が探されますが。
その家のどこにもおらず、電話も通じない。
その代わりに。
その家の一階で、二つのメッセージが発見されます。
白い紙に書かれたもの、
「25号室が強盗に襲われて子供が危険です、急いで警察に知らせて下さい、SOS」
紙幣の余白に書かれていた物、
「258巷25号室が強盗に襲われています、急いで警察に知らせて下さい」
強盗団が押し入り、子供を殺し、夫婦を拉致したのではないか。
そう考えた警察は、
周囲の人物への聞き取り調査で。
劉には、多額の借金があることを知り。
取り立てに来たヤクザの仕業である、
そう確信するのですが。
しかし。
捜査を進める内に、奇妙なことが発覚します。
まず、その部屋には、
多数の金目の物が残されていたこと。
強盗団の行動にしてはおかしい。
窓や扉も壊された形跡はありません。
また。
解剖の結果、五人の子供の死因は全て、
手足を縛られ、鼻と口を封じられた状態で、
狭い浴室に押し込められたことによる、
窒息死であると確認されたのですが。
そもそも、子供達の動きを封じる段階で、
激しい抵抗を受ける筈。
中には大学生や高校生の男の子がいるのだから、
それは容易な作業ではない。
なのに、近隣住民の中に、
不審な物音を聞いた人は一人もいない。
そして。
さらに奇妙な事実が、発覚するのです。
解剖の結果。
長男・次男・三男は、
9月4日に死亡していることが判明したのですが。
その翌日、9月5日。
長女・次女は、普通に登校しているのです。
三男が登校しないことで、
小学校の教師が家に電話を入れたところ、
母親の林が、普通の口調で、
体調が悪いので休ませる、と告げたとのこと。
その上。
次女もまた、学校の教師に、
弟は熱が出たので休みます、と。
平然と伝えている、とのこと。
そしてその9月5日、
学校から着て帰った衣服を着替えもしない内に、
長女・次女もまた、死亡しているのです。
一体、何が起こったのでしょうか?