台湾内部の都市、高雄のある小学校での話。

 

その小学校には、ほとんど誰も使わないトイレがありました。

校舎の最奥、陰鬱な空気の広がるそのトイレ、

 

特に三番目の個室は、鎖で厳重に封鎖されていました。

 

 

ある日の午後。

一人の高学年の男児が、便意を催しトイレに駆け込みます。

 

しかし折あしく、全ての個室が埋まっている。

最早我慢出来ないその男児、ついつい、

その三番目の個室の扉の取っ手を握り、力強く引っ張ってしまいます。

 

すると、不思議なことに。

いつもならどれだけ力いっぱい引いても開かないその扉が、

 

その日に限り、何故か、開いてしまったのです。

 

男児は何も考えず、その個室に飛び込みます。

 

そして、気持ちの良い排泄。

 

ようやくすっきりと、その気持ちよさを味わっていた、その時。

 

不意に、下方に冷たい感覚を覚えます。

 

驚いて、見ると。

一本の、細い皺だらけの手が、便器から伸びているではありませんか。

 

 

男児は驚き、叫び、

そして咄嗟に、鞄から小刀を取り出すと、

その手に切りつけます。

 

そしてそのまま男児は、その個室から転がり出ました。

 

 

それ以降、男児はそのトイレに入るこことは出来ませんでした。

 

 

 

それから、何か月も経ち。

男児の脳裏からも、その記憶が薄れかけた、ある日。

 

数人の友人たちと、バスケットボールに興じている時に。

ボールが、件のトイレの中へと飛び込んでしまいます。

 

男児が、そのボールを追いかけてトイレに入ろうとすると。

 

一人の老婆が、ボールを手に、トイレから出て来たのです。

うつむいたまま。

 

男児は老婆に近付き、ボールを受け取ろうとしました。

 

と、その時。

男児は、老婆の腕にある、刀傷に気付きます。

彼は、何気なく尋ねます。

 

あなたのその傷、どうしたのですか、と。

 

老婆がゆっくりと顔をあげます。

そして、目を大きく開けて男児を見据え、

乾いた笑い声をあげて、言います。

 

「お前が切りつけたのだろう? 忘れたのか?」

 

そう言い終えるや否や、老婆は男児を引っ掴むと、

そのままトイレの中へと引きずり込んでしまいました。

 

男児は大きく叫びましたが、その声はすぐに聞こえなくなってしまいました。

 

 

 

暫く経って、共に遊んでいた友人たちが、その男児を見つけ出した時には。

 

男児は茫然自失状態で、言葉を喋ることも出来なくなってしまっていました。

 

 

その後ほどなくして、そのトイレは取り壊されたそうです。

 

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