ラクルが向かったのは401号室。
水都の部屋だった。
ドンドンと乱暴に扉を叩く。
しかし、いくら叩いても返事がない。
いないのか?いや、いるはずだ。
そう思い、再び扉を叩く。

ドンドン。ドンドン。ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

いくら叩いても返事はないまま。
やはり留守なのか。時間を変えるしかないかと自分の部屋へ帰ろうと振り返ると…
目の前には水都の姿。
薄気味悪い笑顔を貼り付けて立っていた。

「っ!」

ラクルは驚きのあまり声がでない。
それを見た水都は扉を開け、そんなラクルを突き飛ばすように部屋に入れた。
尻餅をつき、痛みに意識がハッと戻る。

「な、なにすんだよ!」

「いやー、何か用があってきたんでしょ?廊下で話すのもなんだし、部屋で話そうと思ってね」

そう説明しながら部屋の電気を付けた水都。
部屋の中にはなぜか他の部屋にはない大きめのキッチンがあり、その横にはゴミ箱。中から白い何かが覗いている。

「そんなにキョロキョロしても何もないよ。で、何の用?」

「そうだ。手帳!手帳返せよ!」

「手帳?しらないよ。俺は持ってない」

「嘘つけ!知ってんだぞ!早く返せよ!」

「だから知らないって。ちゃんと探したの?」

「探してなかったからだよ!」

「なにそれ。だから俺が取ったって、酷。俺、もっとひどいことするよ?」

「なんだよ…意味わかんねー事言ってんなよ!早く返せよ!」

「拉致があかないじゃん」

ため息混じりに言う水都。
キッチンに近寄り引き出しを開ける。
ラクルには後ろ姿しか見えないため、何が起こっているか分からない。

「まぁ、あれだよね。そんなに俺を疑うなら、この部屋探してみればいいじゃん。絶対出てこないけど」

「そうさせてもらう」

「俺、食堂にいるから。終わったら呼んでくれよ。ただし、部屋は散らかさないでくれよな」

開けた引き出しから何かを取り出すと、無造作にズボンのポケットへ突っ込んだ水都。
小さな袋…クスリのような物だろうか。
探している手帳を隠した訳ではなさそうなのでラクルは気にしなかった。

「それじゃ、俺は行くから」

そう言って部屋を出るラクル。
散策がはじまる。