「楽しそうな話だね。仲間に入れてくれるかな?」

聴かれていた…?!
ニコニコと笑顔を浮かべて、扉にもたれかかるメフィス。
冬馬は真央を後ろに隠すように立ち睨みつける。

「ノックもなしですか、先生」

「したよ?でも、返事がなかったからね。それだけ話し込んでたってことかな。まぁ、話すのは良いけど扉は閉めようね。開けっ放しでは聞こえちゃうよ」

クスッと笑うとメフィスは病室から出て行った。
聴かれていた様だが、大丈夫なのか。
犠牲とか、怪しいワードが何度も出てきて何とも思わない訳がない。
なのにメフィスは何も詳しいことを聴くことなく出て行ってしまった。
それが余計に不安を煽った。





「いいこと聞いちゃったかな」

コツコツと靴の音が響く廊下でメフィスは楽しげに呟いた。
理人が謎の死を遂げたのは予想外だったけど、自分達がしようとしていることの邪魔にはならない。
それは、これから犠牲者が増えても同じこと。むしろ、誰も知らない俺の計画には思ってもみない協力者が現れたといったところかな。
利用しない手はない。

ピタリと足を止めたメフィスは振り返り、真央たちのいる部屋の方向を見た。

「よろしくね。『     』」













「ない…ない!また取られた!」

105号室。
この部屋にいるラクルは探していた。
引き出しを開け、ベッドから布団を落とし、床頭台の上にあったものは床へまき散らかされている。
彼が探しているのは手帳。

「あいつ。あいつだな取ったのは!」

彼の疾患は盗害妄想。
誰かが取ったと信じ込み疑わない。
今彼が探しているモノは引き出しにきちんとしまってあるというのに。

「取り返しに行ってやる…絶対にあいつなんだから」

ぶつぶつと文句を垂れながらラクルが向かったのは…