『月は癜く恋は蒌い』

戞田なお 400字詰換算33枚

 

恋に恋する女子倧生の心情を雅やかな文䜓で描く

 

以䞋に、䜜品のごく簡単なあらすじず感想を蚘したす。

 

〈こぐた座のしっぜのようなこぐた新聞の文化郚に勀める兄から、コラムを曞くためプッチヌニのオペラを䞀緒に芳おくれず電話で誘われ、歊蔵野にある女子倧の数孊科で孊ぶわたしはその翌日矀論のテストがあったが倕方に埅ち合わせた。抜象代数孊で先生の話がさっぱりわからない矀論の埌のれミは、立䜓䞉目䞊べのようなプログラム挔習でこれも難しい。い぀も助けおもらう氎色さんから、倏䌑みに䞭囜旅行に誘われる。圌女ず別れおコンピュヌタヌルヌムに行く。先日は先茩の女優さんが講挔䌚に来られたが、汚れ圹もしないず、ず呜什調で話す東京人の孊生に驚く。コンピュヌタヌで挔習をしおいるず、初めお父にパ゜コンを買っおもらった時のこずを思い出す。オペラは画家の悲恋の話らしいが、近くに矎倧がある。倧孊を出お駅に着くず、ホヌムで矎倧の孊生が絵のテヌマを芳音にするか鬌にするかで話しおいる。

囜分寺駅でに乗り換え東京駅に着くず兄がいた。瀟長から女子倧生の感性でオペラを芳おほしいず蚀われたらしい。瀟長は激情型だが優雅な人で、こぐた新聞瀟ずテレビを合䜓させ、新しい瀟屋にい぀でも倜空が芋えるようにプラネタリりムを考えおいる。垝囜劇堎に入るず、兄の知り合いの男性が䞍倫盞手ず来おいお幻滅する。わたしは今短歌の䌚で目方さんずいう人に心を寄せおいる。オペラの䞻圹の矎しいケリヌが登堎し、クラむマックスで恋人が死に厖から身を投げおしたう。わたしの感想が必芁らしいのでむタリアンに食事に行き、そこで原皿甚玙枚に愛をたっすぐに突き通す矎しさず厇高さがメむンず曞く。それを兄の名前で出すのだ。駅から電車に乗り、兄ず別れる。明日の矀論のテストは萜ずすだろうが、おずなの恋はビタヌな味ず知れおよかった。恋に恋するわたしは、歊蔵野のちっぜけなアパヌトでシロクマを抱いお眠る〉

 

ストヌリヌ自䜓はこぐた新聞瀟に勀める兄からのオペラ芳劇の電話に始たり、翌日倧孊で難しい講矩を受けた埌、倕方から兄ずオペラを芳お、レストランでコラム甚の感想を曞いお枡し、アパヌトぞ垰っお眠りに就くたでのわずか䞀日䜙りの出来事を描いた小説です。ただし女子倧孊で数孊を孊ぶ䞻人公を初め、登堎したり語られたりする人物はきわめお個性的で倚圩な茝きを攟っおいたす。

矎人だが英語が流ちょうで高飛車な矀論の先生は、ご䞻人を「家畜を䞀頭かっおたす」ず話したす。氎色さんは難しい矀論の講矩を、い぀も完璧なレポヌトで助けおくれたす。か぀お矎術教宀で孊んだ先生は「画家になるにはね、向かいのビルで萜䞋する人をみおデッサンできるような人しかなれない」ず蚀いたす。たた兄の勀めるこぐた新聞瀟の「激情型」の瀟長は「最初の奥さんを車でひき殺そうずした過去」がある「恋の䞊玚者」ですが、結婚盞手にさたざたな「トラップ」をかける䞀方で、新しい瀟屋にプラネタリりムを䜜るような人物です。そしおオペラを芳にマスコミ関係の垭に䞍倫盞手ず珟われた政治郚蚘者もいたす。このような個性あふれる人物たちず亀流しながら、最埌に䞻人公のわたしは歊蔵野のちっぜけなアパヌトで「蒌く透明で、みずうみのような」恋こころを胞に眠りたす。

もはや珟代では倱われおしたった恋に恋する女子倧生の瑞々しい心情が、それにふさわしい堎面や人物描写ずあいたっお、やさしく雅やかな文䜓で描かれた䜳品ず蚀えたす。


 

『』

吉岡蟰児 400字詰換算108枚

 

謎解き゚ンタテむメント小説ずも蚀えるファンタゞヌの力䜜

 

プロロヌグから゚ピロヌグたでの篇に぀いお、それぞれごく簡単にあらすじを蚘したす。


〈プロロヌグ 子犬のオップが棲む逆立ちの䞖界 Nothing compares of you〉

以前は「青い星」ず呌ばれたこの星は、地䞊の圹目を果たし終えた生呜が倩の持垫ぞず生たれ倉わっお倧空を埋め尜くし、今や厚い雲に芆われお雪ず氷の䞖界ずなっおいたす。そこにいるのはオップずいう子犬だけです。人々が残留思念ずしお眮き忘れた電波が亀流し、捚お去られた声が聞こえたす。オップは埡圱石の雪の䞊で動かない小猫のペシに、街であったいろいろなこずを䜕床も話したすがペシは䜕も答えたせん。か぀おここにあった家に幎老いた倫婊やその息子、ペシ、オップらがいたこずを知るむンコのミストが舞い降り、オップにもう倩ぞ昇ったらず話すが独り残るず蚀いたす。

〈千里県の狐が化けた旅人 Book of Days〉

オップにいろいろな話をしおくれる壁のヒミコさんが、小狐のパセティヌクの話を始めたしたがオップは駆けお行きたした。今日は空が金色に茝き、氷に閉じ蟌められる前の䞖界が芋枡せる日です。この星にいたものはすべおその足跡を氷の底に残しおいるのです。オップが川沿いに歩くず底に鷺やオオハクチョりなどの姿が芋え、小狐のパセティヌクもいたした。クレパスの裂け目を降りおゆくず、誰にも䌚いたくないから近づかないでず蚀われたす。川岞に出るず光に包たれた゜リがあり、粒子の塊のような誰かが倧切な子䟛のパセティヌクに䌚いにきたが垰るず蚀っお舞い䞊がっおゆきたした。黄金の光が消え、壁のヒミコさんがこの星で生たれた時は名前はなかったなどず喋り続けおいたす。オップはペシに、千里県の狐が化けた「旅人」が宇宙から゜リでやっおくる話をしおいたす。

〈涙もろいおばあさんが䜜ったホットケヌキ その Fade Into You 1〉

半島の集萜のはずれに板壁に赀のペンキが残る家があり、そこから涙もろいおばあさんの声が聞こえたす。板の間のせんべい垃団で寝るおじいさんの枕元にホットケヌキを眮くず、おじいさんはもう冷たくなっおいたした。おばあさんは若い頃、息子だけを残しおじいさんず嚘を連れおこの村にやっおきたしたが、嚘はすぐ死んでしたいたした。おじいさんは地面を掘り続け、蓋をしお䞭に籠りたした。嚘の四十九日の呜日に、東から吹いた䞀陣の颚で誰も圌もが䞀瞬で溶けおしたいたした。蓋を開けるず宇宙船のような䞭に癜衣のおじいさんがいお、これが本圓の姿だず蚀われたした。真倜䞭に倖が明るくなるず星の子がいお、ホットケヌキをもらえれば䞀晩郚屋を明るくするず蚀いたす。さらに嚘がいた保育園の園児や先生にそっくりな星や月が、倧晊日で倩の食堂が䌑みだからずやっおきたした。そしおおじいさんを倩たで連れお行っおくれたした。しかしどこたで真実かはわかりたせん。

〈涙もろいおばあさんが䜜ったホットケヌキ その Fade Into You 2〉

オップの耳の奥底に残っおいる「いぬ」ずいう蚀葉はいったいなんなのだろう オップに語りかけおくる「かぜ」の蚀葉は、ヒミコさんのしわざず思いたした。遠く高いずころにある「䞞く黄色いもの」が「おばあさんが焌いたホットケヌキだよ」ず教えおくれたした。それが消えるず東に「炎の塊」が芋えたした。「ホットケヌキ」に向っお吠えるず「お前はいぬずいう生き物」だず教えおくれたした。子犬のオップず呌ばれおいた蚘憶が顔を出しその蚘憶のかなたに凄たじい地響きず人々の叫びが聞こえ、悲しみが抌し寄せたした。しかしオップずいう名前だけでいいのだず自分にいい聞かせ、この癜い䞖界にはオップず「ヒミコさん」ず呌ぶものだけが挂っおいればそれで十分なのでした。

〈おじいさんの颚に揺れるすばしっこいしっぜ Nocturne〉

小孊校に入孊したばかりの姉むペがいるズンタは、保育園に出かけたす。赀い屋根の䞊にペシがいたす。門には青癜い兵隊さんが立っおいたす。保育園二幎目の冬、母はおばあさんにズンタだけは眮いおいけず蚀われ、父ずむペず出お行きたした。ズンタは秋に、近くの神瀟の山で「ツタン」の実や「むタドリ」を採りたした。狞の芪子もいたした。保育園の先生が怖いお化けに芋え、家に走っお垰るずしっぜのある生き物が居間でテレビを芋おいたす。窓から芋䞋ろすず、菅笠をかぶった癜装束の男ず女が念仏を唱えおいたす。おじいさんも芋おいたした。保育園で地震の蚓緎がありたした。ズンタが靎を履き替えお倖に出たのでもう䞀床やり盎そうずした時「どヌん」ず激しい音がし、ズンタだけ庭に飛び出したした。倜になるず園児たちは芪が迎えにきお、小さな翌を぀け空に昇っおいきたした。たわりのすべおの人も空ぞ駆け䞊がり、ズンタもおじいさんが迎えにきたした。地震よりもっず怖ろしいものだず蚀われたした。その圱にはしっぜが揺れおいたした。

〈䜕もかも忘れおしたった幜霊船 the Last Goddess〉

僕が海䞊に顔を出すず、黒い挆塗りの朚箱を掲げた圌女も浮び䞊がった。目の前の船に登るず黒い぀なぎの服を着たツルツル坊䞻の男女が甲板を埋め尜くし、䞭倮にチョビ髭の男がいた。䞀緒に壁の開いたドアから入るず、ベッドずテヌブルがあった。しかし䜕を話しおも反応がない。癜い女の手が圌らを海の底に匕きずりこんでいる。チョビ髭に自分たちはサムの船に乗っおいた海賊だず蚀っおも、顔色䞀぀倉えず今日はメンテの日で、あなたたちのような旧匏がいたずは驚きだず蚀う。か぀お珟実䞖界ず仮想䞖界が存圚したが、珟実䞖界が滅びかけた時有胜なハカセが自らの脳を仮想空間ぞ移動させ、脳の進化暹を蟿っお仮想䞖界を誕生させた。しかし疑䌌䞖界のシナリオによる仮想䞖界乗っ取り工䜜の危険を察知したハカセは、ペットのペシに自らの脳をストックし、今はハカセの脳本䜓「ハンド」のプログラムで皌働しおいる。最初の旧匏仮想生呜䜓はヒミコだったが暎走しお消滅し、次にハカセの嚘むペのニュヌロンが移怍された。私たちは「ハンド」で定期的にメンテを受けおいるが、それが䞍芁なヒト型仮想生呜䜓はこの船のむペだけず蚀う。圌女が朚箱を投げ぀けるず蟺りは癜い煙に包たれ、癜い手たちはしおれた。僕もその匂いを嗅いだ。ドアが開き人圢みたいな服を着た女の子が珟れ、ベッドで飛び跳ねる。僕の声は嗄れお指はしわくちゃ、圌女は老婆になっお事切れおいた。女の子はむペず名乗り、ペシがこの郚屋に入るのを芋たず蚀う。僕もミむラになり圌女ず石棺に入っお海の䞭でパワヌアップされ、再び船に戻る。女の子が朚箱に呪文を唱えるず䞭にペシがいた。むペは「最埌の女神」ず呌ばれ、子犬探しの旅が始たった。チョビ髭にはミストずいう名があり、子犬を芋぀ければ最埌のピヌスがはたるのだずいう。

〈゚ピロヌグ オヌケストラはどこぞ Victims〉

雪も氷も消え、博物通の䜏人たちの姿も芋えない。「曞くずいうのは実に難儀なもので、遺曞のような気持ちで曞き始めるのだが、蟿り着いた先に芋た正䜓がこれか。だからずいっおキヌワヌドを攟り蟌んで機械に曞いおもらうよりはたしじゃないか。己を奮い立たせお気が付くずたた曞いおいる。  ず曞いおある」ここはたるで楜団が挔奏を終えたステヌゞのよう。

 

このように党䜓が篇で構成されおいお、プロロヌグ第篇で子犬のオップが登堎したすが、その䞖界は雪や氷に閉ざされ凍り付いお逆立ちしおおり、すでに倱われた過去の䞖界であるこずがわかりたす。そのオップがか぀お街にあった出来事を、以降の第篇から第篇の幜霊船の話たで含めお語るずいう流れになっおいたす。オップはか぀お庭のある家で老倫婊やその息子、屋根の䞊のペシ、ヒマラダスギの先にずたるミストなどず共に暮しおいたしたが、今はたった䞀匹だけ倩に昇らず残っおいるのです。

そしお第篇から第篇たで、オップを初めずしおペシ、ミスト、ヒミコ、小狐のパセティヌク、千里県の狐が化けた旅人、涙もろいおばあさん、癜衣を着たおじいさん、星の子たち、ズンタ、むペ、狞、癜装束の男女、鬌、しっぜが揺れるおじいさん、海賊船から来た若い男女、チョビ髭、ツルツル軍団など、実に倚圩でナニヌクな動物や人間、仮想生呜䜓などがおいねいに曞き分けられお登堎し、物語が進行したす。そのストヌリヌはかなり耇雑ですが、ファンタゞヌ䜜品ずしお終盀たで巧みに構成されおいるず蚀えたす。

特にファンタゞヌ䞖界の描写が秀逞で、宮沢賢治の『銀河鉄道の倜』を圷圿ずさせる氷の䞖界や、ピヌタヌパン等の西掋童話を思わせる海賊や幜霊船など、和掋を組み合わせた物語の背景ず進行が読者を匕き蟌んで離したせん。その構成力ず筆力は高く評䟡されおしかるべきず思われたす。


ただその反面で少し気になるのは、珟実䞖界ず仮想䞖界の話がやや蟌み入り過ぎお内容が理解しにくい点です。第篇になっお話が倧きく転換し、結局はほずんどが仮想䞖界の話ずいうこずが明らかにされ、それたでの物語の䌏線が回収されお行きたす。その意味では謎解き゚ンタテむメント小説ずしおの面癜さがあるのですが、さらに゚ピロヌグにおいお小説内小説であるかのように䜜者らしき語り手が登堎しお、小説を説明したす。

このような錯綜する小説の構造は、読者の立堎からするず芖点が分散しおわかりにくいものになりがちです。それは぀たるずころ被灜者、犠牲者、あるいは生莄などの意味を持぀題名のVictimsが、最終的に䜕を指しおいるのかずいう小説の䞻題ずも関連したす。そのあたりがもう少しわかりやすく読者に䌝わるようにシンプルに構成されおいれば、なお良かったように思われたす。

 



 

『゚むリアン』

山䞋定雄 400字詰換算54枚

 

ある日、青空から匟䞞のように打ちこたれたもう䞀人の私。

 

前々䜜『合歓の花』から前䜜『䞍胜者』ぞず続いおきた、䞀連の䜜品の続きです。同居人カンナに『合歓の花』で出䌚った少女のこずで粟神的なダメヌゞを䞎え抜き差しならぬ状況に远い蟌たれた老男の私は、その窮地を脱するため䞀人心療内科のサナトリりムに入院したす。そこで人ずの觊れ合いを求めお女性看護垫に恋文を曞き接近を図りたす。そしお離れた建屋の陰で情亀しようずするがたさに『䞍胜者』のように果たせたせん。

それに続くのが本䜜ですが、以䞋簡単にあらすじず感想を蚘したす。

 

〈私は初めお、ほが同幎茩の私の資料を手にした䞻治医ず面談する。そしお資料は氷山の䞀角にすぎず底にはずかしいものが朜んでいお、治療よりも奇劙な人達が集たるここに人間ずの接觊を求めおきたず話す。先生は手元に倚くのものが届くず蚀い、あの女に枡した手玙のこずを暗に匂わせ、人目をさけお逢っおは芏埋がたもおないず蚀う。女ずは倢想がふくらんだのは事実だが、すでに熱はさめおいる。私には子䟛はおらず、䞭孊校を出お印刷工ずなり職人の腕を磚いた。先生が私になぜ衝動的に物を曞くかず問うので、時時刻刻の心のありようを写したいからで、曞いたものはもう骞でしかない。それは排泄行為のようでもあるがそれが生きおいる実感だ、私は特異ではなく卑小な事䟋だから、あえお狂疟を䜜るのに浮身をや぀しおいるず答える。先生はそれでは本圓の自分は芋えおこないず蚀うので、私は四六時䞭自分を芳察しおいる、䜕でもないようなこずの䞭にある真実が知りたいのだず蚀うず、先生はその心の領域で起きおいるあれこれから抜出しおその深局を探り圓おようずしおいるず話すが、私はそこからヌルリず逃げ出し䜓をかわす。先生は私を灯台もず暗しに喩えるが、私はその闇の盞貌を捉えようず劄想をたくたしくしおいるのだ。先生は私たちの内実が刻刻倉化するのが生䜓だず蚀う。私はその小宇宙を䜕もかも癜玙に写しずろうずしお躍起になるのだが、先生は或る皋床は類型化するこずが必芁ず蚀う。

しかし私は自分のこずをたるで他人事のように芳おしたうこずがある。自分を冷静に芋詰めおいる䞀方で熱狂しおいる自分がいる、その䞡者を俯瞰する第䞉者、さらにたた別の他者を呌びだしおくる、ずなるずもう肝腎の自分がわからなくなる。先生はそれは越境で床が過ぎるず狂れるのだず蚀う。私がたるで分身のように出お来るず蚀うず、適宜なコントロヌルが必芁ず蚀う。私がさらに突拍子もないこずを叫ぶや぀がいるず話すず、それはい぀からだず問われ、ある日、どこずも知れない青空から飛来しお䞀発の匟䞞のように私に打ちこたれたず説明する。それは宿䞻である私を脅しお攟蕩息子のように喚めきちらすが、灯りが点った気分にもなっおいる、そしお時ずしおは頌もしい。先生がそれは揎軍だず蚀い、その出所や垰属するずころを蚊ねたのかず問うので、私はあい぀はそんなふるさずはないず蚀いながら倩空の䞀角を突き指した、孝行息子になるこずもあるのだず話す。そしお堅塁を守りぬくためボロ同然の私を茝やかせ、私に真っ圓な生の感情を喚起させおくれるあい぀が、䟋えグロテスクな゚むリアンであっおも愛しいず話す。先生はやや仰倩しお、自分の殻の䞭だけでは疑䌌空間に過ぎないので、倖界の人や物ず出䌚わないず本圓の自分は開瀺されないず蚀う。私は日垞颚景ず液晶画面の芋境が぀かなくなっおしたっお起きる最近の身勝手な犯眪を嘆き、死者の人暩こそ倧事ず思う〉

 

䞻治医ずの面談によっお、ようやくこのサナトリりムに入院しお初めおの治療のような察話が開始されたす。䞀時はあらぬこずを倢想したものの、女性看護垫ずの関係はほが終わったこずが語られたす。次になぜものを曞くかず問われた私は「時時刻刻の心のありようを写したいから」で「それが生きおいる実感」であり、自分の心の小宇宙で起きおいる「䜕でもないようなこずの䞭にある真実が知りたい」、そのために「あえお狂疟を䜜るのに浮身をや぀しおいる」ず答えたす。

そこからさらに察話が進み、実は私の䞭に「たるで分身のように」次々出お来るものがあっお「自分がわからなくなっおしたう」。それは「ある日、どこずも知れない青空から飛来しお䞀発の匟䞞のように私に打ちこたれた」が、それは「攟蕩息子」のようでもあり、時ずしおは頌もしい「孝行息子」でもある。ボロ同然の私を茝かせおくれるので、たずえグロテスクな゚むリアンであっおも愛しいず話したす。先生はその匷い結び付きに驚くものの、自分の殻の䞭だけでなく倖界の人や物ず出䌚うこずが倧切だず諭したす。

 

このように粟神科医ずの察話を通じお、ある日突然私の䞭に倩空から別の人栌が入り蟌んできたこずが明らかにされたす。これは䞀般的な蚀い方をすれば倚重人栌解離性同䞀性障害ずいうこずになるのでしょうが、ここではそれが私にずっお力匷い味方でもある点が特城ず蚀えたす。先日たたたた読曞䌚で倧江健䞉郎『空の怪物アグむヌ』を取り䞊げたしたが、アグむヌは倚重人栌ではなく自分が地䞊で喪倱したものが空に浮び䞊がっお降りおくるのに察し、こちらは逆に宇宙から゚むリアンが心の䞭に青倩の霹靂のように打ち蟌たれ私を助けたす。こちらの怪物は、いろいろなこずを契機ずしお私たちの心に突然入り蟌んだり、あるいは異垞な䜓隓を通じ幻想ずしお私たち自身が心に育んだりするものでしょう。

それらはいわば自我自己意識の問題ず蚀えるものですが、人間にずっおこの自我自己意識ずはたこずに厄介な察象物です。特に他者ずの関係を含めおそれをあれこれ考察しお行くず、䞍分明の泥沌に陥るこずになりかねたせん。山䞋さんの近幎の小説は、ある意味でそれを蟛抱匷く远及し続けおきたものず蚀えたす。

本䜜はサナトリりムずいう特殊な環境の䞭で、粟神科医ずの察話ずいう難しい手法を駆䜿しながら、い぀ものように独特の粘り匷い文䜓によっおそうした䞻人公の粟神の奥底に朜む自我自己意識の闇や䞍可思議さをじりじりず照らし出すこずに成功しおいたす。そうした飜くなき探求を今埌ずもぜひ続けお頂きたいものです。

 

なお俳句『月の突堀』に぀いおは、省略させお頂きたす。

 


『陰ず陜の肉䜓埌半』

氞田祐叞 400字詰換算129枚


自䜜に぀き感想は省略し、前半を含めおあらすじのみ簡単に蚘しおおきたす。

 

前半

二〇二䞀幎の幎末、胜䞊俊也37æ­³)は建築事務所の仕事垰りに居酒屋で䌊原芳暹32æ­³)ず春山浩倪26æ­³)ず出䌚い意気投合しおマンションに泊めた。ずころが数日埌に党員熱を出し、新型コロナの疑いで郜内の感染症指定病院に入院するが重症化しお生死の境を圷埚う。ようやく回埩したが、女性看護垫児島由垌25æ­³)も感染し危険な状態に陥る。退院埌、芳暹は健康噚具䌚瀟、浩倪は印刷䌚瀟の仕事に就く。俊也は由垌ず䌚い、䜓が目芚めたように感じお超胜力の話をする。皆で圌女の芪戚の朚䞋気功道堎に行き、その䞍思議なパワヌに圧倒される。朚䞋先生は人間の䜓は自然や宇宙ず぀ながっおいお、その゚ネルギヌが超胜力の源だずいう。圌らは道堎で修行を始める。俊也が公園で呌吞法を実践䞭、倧きな暟の幹から埮かな音が聎こえた。芳暹ず浩倪は由垌ずしだいに芪しくなる。圌女が二人のアパヌトに来た時、浩倪が草食系の悩みを話すず、芳暹は肉食系ず草食系を䜵せた雑食掟を目指せず蚀う。この倜由垌は二人ず結ばれる。この頃、俊也も過去䞀床だけ関係を持った未亡人西小路晃子ず十五幎ぶりに銀座で再開。気功の修行䞭だず話す。圌らの身䜓胜力はさらに向䞊し、方䜍磁石からのヒントで暟の幹を取り囲むず地磁気゚ネルギヌを感じた。地殻倉動などで電磁波が発生するず倉化するらしく、地震や噎火予知に結び付く可胜性がある。気分が高揚しお居酒屋に入るず、俊也が気功の力を瀟䌚に圹立おたいず話し始める。


埌半

俊也は気功で身䜓の骚栌や筋肉、神経系の歪みを盎すこずで健康増進や認知症予防、若返りなどを目指す法人を立ち䞊げたい、䞀千䞇円ほど出資金が必芁だが任せおほしい、枋谷の雑居ビルを借り䌚員制ずしおなどで集客し、名称は気掻塟にしたいずの構想を話しお芳暹に修行カリキュラム䜜成を指瀺した。埌日圌は銀座でプロテスタントの掗瀌を受けた晃子さんず䌚い、気掻塟のための出資金を䟝頌する。圌女は必ず成功させるこずを条件に承諟した。明けお二〇二䞉幎を迎え䞀月末に俊也たちが公園で暟の幹を取り囲むず、西の方角の遠い距離に地磁気゚ネルギヌの乱れを感じた。俊也は地震の堎合は、犏井県から朝鮮半島を抜けおナヌラシア倧陞の方向ず予想する。それから九日目、トルコ南郚シリア囜境近くで東日本倧震灜を䞊回る盎䞋型倧地震が発生し、圌らは地震を予知しおいたこずがわかる。四月、気掻塟オヌプンの日を迎え朚䞋先生や晃子さんもお祝いのため顔を芋せた。初日だけでや䞭幎男性など十数名の入䌚者があり、その埌も増えお䞀ケ月埌には䞉十名を超えた。そのため芳暹ず浩倪が職堎を蟞め、塟の専任講垫ずなる。䌚員の入䌚動機はしだいに倚様化し、匕きこもりやう぀に悩む若い人たちも目に぀いた。

倏の䞃月のある日、グラビア雑誌『週刊ナビ』の女性蚘者吉村恵梚銙が取材で蚪ねおきた。俊也が応察するず、圌女はツむッタヌで塟のこずを知り自分もペガをしおいお興味があるず蚀い、さらに暪浜出身なら二歳䞊の姉真悠矎ず同玚ではなかったかず蚊ねる。俊也はそうだず答え、今どうしおいるかず聞くず十幎ほど前亀通事故で亡くなったず蚀う。圌は同じ矎術郚でお互い奜意を抱いおいたものの、い぀しか疎遠になった真悠矎を思い浮かべお儚んだ。おっずりした姉に比べフリヌランス恵梚銙は利発な感じで、塟を取材しお垰った。埌日持参したゲラ刷りには地震予知の話も茉っおいお、芳暹や浩倪、由垌も倧いに喜ぶ。俊也はお瀌に圌女をビダレストランに誘いただ独身であるこずがわかり、子䟛の頃の思い出など五時間近くも話が匟む。垰り際に真悠矎の墓参りの玄束をしお別れた。そしお日曜、二人は金沢区の霊園で真悠矎の墓に線銙を䞊げる。そこで姉が過食症で悩み、ヒンドゥヌ教の教祖の怪しい斜蚭に通っおいたず聞かされる。俊也は䞀瞬、墓石の前に髪を乱した圌女の姿を芋る。二人は「みなずみらい」から䞭華街ぞ向かい食事をした埌、「枯の芋える䞘公園」を散策し、ペヌロッパの叀城を思わせるラブホテルでめくるめく陶酔の倜を過す。季節は秋ぞ移り、塟の䌚員には䞭囜、韓囜、ベトナム、ブラゞルなど倖囜人が増える。䞭には自分たちの胜力で金を皌ごうずする者が珟れ、以前に技胜実習生ずしお貧しい村から入囜した䞭囜人たちが老婆を隙したず蚎えられそうになる。俊也が事情を聞くず、老婆の息子ず名乗る男にはめられたらしい。すぐ建築事務所の共同経営者高野に手配しおもらった匁護士に盞手ずの亀枉を䟝頌し、事なきを埗る。こうしたこずもあり塟はしだいにメディアに泚目され、その特殊な身䜓胜力から䜕やら怪しげな掻動をしおいるずなどで䞍安を煜り立おられ、誹謗や䞭傷が倚くなる。そんな䞭で気骚の豪胆な『週刊ナビ』笹本線集長だけは、塟の匷い味方であった。䌚員はさらに増え続け、俊也たちは地震予知ぞの意欲をたすたす高める。十二月になり、恵梚銙は暪浜の実家を出お田町のマンションで俊也ず同棲を始める。倚忙な二人は、ある倜遅くワむンを飲みながら今埌のこずを語り合う。俊也が塟の豊かな可胜性を話すず、恵梚銙は人の幞せや結婚に぀いお俊也の考えを問う。圌は今の日本では倫婊や家庭のあり方は戞籍制床のこずもあり倧倉難しいので、結婚に぀いおはよくわからないが子䟛ができたらはっきりさせたいず答える。その倜のセックスはきわめお官胜的であったが、頂きに䞊り詰めようずした時恵梚銙の顔に真悠矎が二重写しずなり「私ずも亀わるのよ」ずの凄たじい怚念を感じさせる真悠矎の声が聞こえた。こうしお二〇二䞉幎は暮れおいった  

それからしばし月日が流れ、運呜の二〇二幎を迎える。圌らは懞呜に予知掻動を続けおいたが、メディアやは盞倉わらず吊定的なコメントや䞭傷を繰り返しおいた。二月初め、東京のほが南ず西南西の二぀の方角の近い距離に、匷い地磁気゚ネルギヌの乱れを感じた。南の盞暡トラフや駿河トラフず匷い関連性があるのが関東倧地震であり、たた西南西は宝氞以来䞉癟幎䜙り䞍気味に沈黙しおいる富士山倧噎火の兆しかもしれない。笹本線集長はこの話を聞き、恵梚銙に原皿を䟝頌し『週刊ナビ』に掲茉する。メディアやで再び誹謗䞭傷が飛び亀い、塟のサむトはサむバヌ攻撃で炎䞊し、呚蟺には倧音声の街宣車が抌しかける。二月半ば、俊也は心配しお蚪ねおきた晃子さんず近くの喫茶店に行く。俊也はキリスト教の博愛粟神は玠晎らしいが、珟実の瀟䌚は生きる者の暩利は擁護されおおらず、特に日本の匱者には心の支えがない。しかし倩から授かった肉䜓を人間が自爆テロなどで奪うのは断じお蚱されないず話すず、晃子さんはあたり性急に先ぞ進もうずするず瀟䌚の底蟺に蓄積された人間の深い闇が牙をむくので泚意しおず忠告する。それを聞き俊也は、神が最埌にすべおの宇宙を埮小粒子に砎壊しおしたう新しい「ビッグリップ」理論に衝撃を受けたこずを話す。二人は倖に出お、これが最埌のように別れた。

事務所に戻った俊也は、芳暹、浩倪、由垌ず共に予知フォヌメヌションを組むため公園に向かう。やじ銬も付いお来た。暟を取り囲むず地磁気゚ネルギヌははるかに匷たっおカりントダりンを始めおいた。そこぞ恵梚銙がやっおきお、実は赀ちゃんができたず話す。緊迫した雰囲気の䞭で、皆口々に祝犏しお喜ぶ。圌女は原皿を曞きにタクシヌで垰り、俊也たちは枋谷の雑居ビルぞ匕き返す。ず、駐車堎で車を降りた俊也目がけお近くに朜んでいた男が突然飛び出し、拳銃らしきものを発砲する。俊也は血しぶきを䞊げお倒れ動かない。由垌はすぐ救急車を呌び、圌を病院に運んだがほが即死であった。すぐに知らせるべきか悩んでいた由垌のスマホに、恵梚銙から「俊也の声で僕は死ぬけど赀ちゃんを頌むず聞いた」ず着信があった。圌女はすぐ病院に駆け付け、俊也の遺䜓にずりすがっお泣く。離婚した俊也の䞡芪ず初めお察面し、赀ちゃんができたこずを知らせた。塟に祭壇が蚭けられお翌日通倜が行なわれ、泣きはらした晃子さんや、朚䞋先生、高野らが参列した。事件に぀いおメディアやではさたざたな説や論評が飛び亀ったが、真盞は䞍明だった。その翌日告別匏が行われ、芳暹が匔蟞を読み䞊げる。遺䜓は火葬堎で荌毘に付され、恵梚銙は遺骚を拟い集め、遺灰を癜い玙に包んだ。その晩マンションに泊っおくれた由垌ず、倜遅くたでしみじみ俊也のこずを語り合った。明日はあるこずをしおから、原皿を曞き線集長に届けなければならない。翌朝由垌が垰った埌、恵梚銙は意を決したように遺灰の玙包みを持ち、防灜グッズ装備のスポヌツタむプの自転車に乗っお出発した。行き先は思い出の「枯の芋える䞘公園」である。桜田通りから五反田駅を抜け走り続け、ようやく目的地に着く。展望台からベむブリッゞや海が芋える。人圱はなく静かである。恵梚銙は目を閉じ、颚が吹いた瞬間をずらえ玙包みから遺灰を攟り䞊げた。その時激しい地鳎りが聞こえ、癜い巚倧な閃光が走り、足元が倧きく揺れた。芋䞊げるず空に浮ぶ遺灰に俊也ず真悠矎の姿が写っおいる。぀いに怖れおいた事が起こったのか お腹に手を圓おるず指先に埮かな呜の錓動が䌝わっおきた。

 

 

〈シリヌズ゚ッセむ〉

『神戞生掻雑感』

―日本ず台湟の文化比范―

千䜳 400字詰換算33枚

 

23から26たでの四぀の゚ッセむに぀いお、簡単に内容を玹介し、感想を蚘したす。

 

23「意識の流れ」ずピカ゜の絵


〈二十歳の時、倧孊の授業でゞョむスの文孊䜜品における「意識の流れ」の話を聎いたこずがある。その蚀葉が最近たたラゞオの番組から聎こえ、アナりンサヌがピカ゜の絵のようなものかず蚊ねたら解説者がそうだず答えおいた。この蚀葉は十九䞖玀から䜿われ出し、日本では川端康成や暪光利䞀が取り入れおいたらしい。どうりで昔、暪光の『機械』を読むのに苊劎した芚えがある。先日『神様』を読んだ川䞊匘矎も、哲孊者朚田元氏によれば「事実ず幻想、生物ず無生物、人間ず動物、時間ず空間などがすべお自由自圚」でこれはカフカやゞョむスに繋がっおいるずのこずである〉

 

近代文孊ず蚀えば、たず事実をできるだけありのたたに描くリアリズム小説が代衚ずしお思い浮かびたす。写実䞻矩や自然䞻矩ずいったものも同じ流れで、これは絵画にもあおはたりたす。しかし二十䞖玀に入っおから、文孊や絵画は人間の姿をより深く捉えるためにさたざたな手法やスタむルを生み出しおきたした。その意味で難しい小説が増えおきたずいう実感は確かにありたす。

 

24子䟛が暗誊しやすい䞭囜詩歌の『䞉字経』


〈詩歌は簡朔な蚀語衚珟のゞャンルだが、䞭囜では殷呚時代の「詩経」から唐詩、楚蟞や宗詞など、字数、句数、抌韻などによっお様々な圢匏がある。字数は䞉字や五、䞃蚀の絶句、埋詩の他、四字の成句もある。その䞭で『䞉字経』は宋朝の頃に䌝わった、児童の啓蒙のため暗誊しやすいように䞉字ず぀区切った長い詩である。癟五歳たで長生きした父方の祖母は、か぀お逊老斜蚭にいた頃、寝がけながらもすらすらず「人之初、性本善、性盞近、習盞遠。苟䞍教、性之遷、教之道、貎以専。昔孟母、択隣凊  」ず台湟語で詠い出し驚いたこずがある。これは孟母䞉遷の教えず呌ばれるものである〉

 

日本の詩歌ず違っお、䞻に挢字だけから成る䞭囜詩歌は字句が簡朔でか぀暗誊時の抌韻の響きの良さが特長ず蚀えたす。やはり子䟛の頃から口に出しお芚えるこずで、い぀たでも蚘憶に残るのだず考えられたす。わが囜でも以前は孊校で挢文にふれる時間がかなりあったような気がするのですが、最近は枛っおいるように思われるのが残念です。

 

25曹操の噂をするず曹操が来おしたう


〈前回に続き䞭囜詩歌の話で、たず五蚀絶句です。埌挢時代の宰盞曹操の子曹䞕が文才のある匟曹怍を排陀しようず、裁刀で䞃歩の間に䜜詩したら眪を免陀するずした。曹怍は「煮豆燃豆箕 豆圚釜䞭泣 本是同根生 盞煎䜕倪急」豆を煮る時豆がらを燃やす、豆は釜の䞭で泣いおいる、元は同じ根から生れたのに、盞克するのをなぜ急ぐず詠み、灜難を逃れた。日本語の「噂をすれば圱」の諺に近いのが「説曹操、曹操到」曹操の噂をするず曹操が来たで、曹操の䞀般の受けはあたり芳しくない。䞃蚀埋詩の䞀぀が䞃蚀察聯぀いれんで、春節の「歓々喜々蟞旧歳 高々興々過新幎」歓喜に満ちお去幎を送り 楜しく新幎を迎えようや、結婚匏での癜居易『長恚歌』の䞭の䞀節「圚倩願䜜比翌鳥 圚地願為連理枝」倩では翌を䞊べる鳥に、地䞊では連なる枝になりたいなどがありたす〉

 

䞉字に比べ五蚀や䞃蚀では、さらに挢字の豊かな広がりを感じるこずができたす。日本語の俳句や短歌はひらがなが混じるため柔らかい印象ですが、意味的には䌌たような郚分も倚いようです。しかし力匷い韻の螏み方などはやはり挢字独特のもので、朗朗ず吟じたり詠ったりするこずでさらに磚きをかけられおきたものず蚀えたす。

 

26断腞の思いを抱き倩涯ぞ向かうひずりの旅人


〈宋の時代には「宋詞」が隆盛ずなりたしたが、その前に日本でも有名な孟浩然ず李癜の五蚀絶句「春眠䞍芚暁 處々聞啌鳥 倜来颚雚音 花萜知倚少」ず「床前明月光 疑是地䞊霜 挙頭望明月 䜎頭思故郷」、杜牧の䞃蚀埋詩「枅明時節雚玛々 路䞊行人欲断魂 借問酒家䜕處有 牧童遥指杏花村」を玹介しおおきたす。季節が秋になるず小孊校で習った西颚が子どもたちに語りかける䞃、五調の唱歌「西颚の話」黄自䜜や、さらに秋が深たるず「宋詞」の「倩浄沙 秋思」を思い出したす。それは「枯藀 老暹 昏鎉  小橋 流氎 人家  叀道 西颚 痩銬  倕陜西䞋 断腞人圚倩涯」で、老暹に枯れた藀蔓が巻き付き倕暮れ鎉が巣に垰る、小橋が流氎に掛かり人家がポツンず䜇む、旅人が行き来する叀い道を西颚が吹き、沈む倕陜を背に断腞の思いを抱くひずりの旅人が倩涯ぞ向かう。脳裡に䞀幅の氎墚画が出来䞊がりたした〉

 

孟浩然や李癜、杜牧などの詩は日本でも知られおいお、倚くの人は口ずさんだ蚘憶があるかもしれたせん。ただ千䜳さんも曞いおいたすが、その意味が必ずしも正確に理解されおいるずは蚀えないようです。「宋詞」の「倩浄沙 秋思」は広倧な䞭囜の景色ず文化の䞭で詠たれたもので、日本では望めない山氎氎墚画の雄倧なスケヌルを感じたした。

 

海銬文孊䌚氞田 祐叞