『従妹ベット』は19世紀を代表する天才作家オノレ・ド・バルザックの晩年の傑作とされている作品です

ニコ

この物語は主人公であるベット(リスベット・フィシェール)が美しい従姉アドリーヌに対する壮大な復讐劇です。





1779年のこと、ベットには5歳年上の美しい従姉アドリーヌがいました。
ベットもアドリーヌもアルザスの貧しい百姓娘でした。
しかし従姉アドリーヌは非の打ち所がない、人をはっとさせるような絶世の美女で、農民の娘に過ぎないのに、皇后様にも見間違えるような気品と気高さ、優雅さ、繊細さを備えており、なだらかな体の線と男を悩殺するような肌の持ち主でした。





髪はブロンドで生まれながらの女王のような高貴な雰囲気のアドリーヌが歩くと男という男は足を止めました。

一方で従姉妹なのにベットはぎすきすに痩せており、肌は浅黒くゲジゲジ眉毛にがっしりとした体型にごつい足、猿に似た顔にはイボまであるという醜女だったので、奇跡のように美しい従姉に嫉妬し、憎悪すら抱いていましたニヤパンチ!パンチ!パンチ!パンチ!パンチ!パンチ!パンチ!パンチ!パンチ!



しかも当の従姉アドリーヌが16歳の時、若き美男子であるユロ男爵に見初められ、爵位を貰って男爵夫人にまで出世イラッイラッイラッメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ同じ百姓娘のくせに自分より美人で貴族夫人になるなんて許せませんパンチ!パンチ!



花の都パリに行き、パリで麗しのアドリーヌと呼ばれ、チヤホヤされた上、皇帝ナポレオンからも気に入られ、アドリーヌにダイアモンドの首飾りを贈り、皇帝はいつもアドリーヌを特別扱いしていましたムキーッムキーッムキーッ爆弾爆弾爆弾爆弾





美しいアドリーヌは心も清らかな汚れない魂の持ち主で、従妹ベットのことを気にかけており、田舎からパリへ呼び寄せてあげました。

アドリーヌはベットを結婚させてあげようと縁談を紹介してあげますがベットはすべて拒否し、金銀モールの飾り紐職人として自立する道を選びました。





1838年ベットは43歳のオールドミスとなっていました
しかしベットは5年前、貧困のため自殺を図ったポーランドの亡命貴族ヴェンセンスラス・シュタヴィンボック伯爵を助け、彼の保護者となり一人前の彫刻家となれるように援助してあげていました。



ベットはヴェンセンスラスに母親のように接していましたが、自分より15歳下の美貌のヴェンセンスラスを愛しており誰にも渡したくないと考えていました。

アドリーヌにはアドリーヌにそっくりな22歳のオルタンスという娘がおり、結婚相手を探していました。

ベットはオルタンスにヴェンセンスラスのことをつい喋ってしまったせいで、オルタンスはヴェンセンスラスに興味を持つようになり、2人は恋に落ち、ベットに内緒で結婚してしまったのですアセアセビックリマーク




この家族はどこまで私をコケにするの??2人の結婚を知ったベットはアドリーヌとアドリーヌの家族ユロ一家への復讐を誓いますイラッイラッ炎





どうやって復讐してやろうかと考えていた時、同じ建物にヴァレリー・マルネフ夫人という23歳の小柄ですらりとした男好きのするとびきりの美女が住んでいることを知ります。






ヴァレリー・マルネフはフランス元帥でありモンコルネ伯爵の私生児として誕生しました。
母親はモンコルネ伯爵に囲われて何不自由ない手当を与えられており、贅沢三昧の暮らしをしていました。




父親はヴァレリーを甘やかして育て、女王様みたいにちやほやと可愛がって育て、2万フランの持参金を持って役人であるマルネフと結婚させましたが、父親が急死してしまい遺言書もなかったのでたちまちヴァレリー夫妻は貧困に陥ってしまっていたのです。



夫マルネフは美しいヴァレリーよりも最下層の娼婦を好むという変人でしたうさぎ
母親から娼婦気質を受け継いでいたヴァレリーは世間的には貞淑な妻を演じながら陰で好色な金持ちをひっかけて金を絞りとっていました。



生粋のパリジェンヌらしくヴァレリーは苦労が大嫌いでした。ヴァレリーにとって人生はこれすべて快楽であり快楽は苦労知らずでなければならなかったのです。



そのヴァレリーにアドリーヌの夫ユロ男爵が興味を持ちます。


ヴァレリーの魔性の女たらしめている能力とは、
その男性が描く理想の女性像を見抜き、男性の幻想を壊さずに、理想の女性像に自らを同化させることができる能力のことで、ヴァレリーは男の好みに応じた仮面をかぶって芝居を演じるまさに「女優」でした。




なぜならイメージ動物である男性はあるがままの女に恋をするのではなく自分の中に勝手に築き上げた幻の女に恋をする生き物だからです。



例えばユロ男爵が貞淑な人妻との恋愛を望んでいることを見抜いたヴァレリーは結婚3日目に夫から冷たくされて以来、今までずっとひとりでつつましい娘のように暮らしていた(もちろん嘘八百)が『あなたと出会い初めて罪を犯すのです。』



と言っておくことでユロ男爵は自分がこの貞淑な女に初めて罪を犯させるのだ、女の務めをみんな忘れさせるほどの恋心を燃え立たせたのだ、と思い込みませます。





男性は自惚れの生き物であり、これほど自尊心とプライドをくすぐられればこの手の嘘を本当だと思い込んでしまうのです。

これはセックスの場合も同じで、あるがままであるよりかはあくまで耐えに耐えたあげくに漏れる快楽の吐息こそ男は感動するのです。なぜなら女の快楽の錠をあけたのは自分の鍵だけだと大抵の男性は思い込んでしまうからです。。





しかしこのような男性の気にいるように演じ、男性を楽しませる行為は〝自らのアイデンティティを喪失〟させてしまう危険性があります。





ヴァレリーもまた自分のしていることが恥ずかしくなり死んだ母がみたらどう思うのか?まったくやりきれない部分を抱えています。
ベットに『夜のお勤めを代わってくれない?』と頼んで断られたりしています。




完全にヴァレリーの虜になり有頂天になったユロ男爵はヴァレリーを別宅に囲うために大金が必要となりますがお金がありませんねー
ユロ男爵は公金横領に手を染めヴァレリーのために屋敷を用意してやりますアセアセ




しかし公金横領が疑われはじめ、アドリーヌの叔父は獄中で自殺。
ユロ男爵の不正が世間にバレてしまいます。
名誉を失ったユロ男爵は姿をくらませます。



ユロ男爵の息子ヴィクトランは自分たち一家を破滅においやったヴァレリーの力を削ぐにはヴァレリーの武器である美貌を破壊することが、その力を弱める最適な方法だと思いつきますニヤ





美しくなくなったヴァレリーなど牙をもがれた獣も同じことだと考えたにせよ、男が女にする復讐の中でも最も意地が悪いものではないでしょうか?





さてヴァレリーはブラジルの怖ろしい病に感染させられました。

噂だとたいへん綺麗な女性だったそうですが、多くの男性を惑わした報いとでもいうのか、これが素晴らしい美人と騒がれた人とはとても思えません。
その醜いことといったら二目と見られたものじゃありません。





歯は抜け落ちるし、髪はズルズル抜けてしまうし、緑色の気持ち悪い膿疱が一面にでています。


ひどい悪臭がしており、手足の方からみんな崩れて次第に腐っていくでしょう。』

病気になったヴァレリーは改心し、かつて騙したユロ男爵に30万フランを遺贈します。





ヴァレリーは前代未聞の苦しみを続けた後あの世の人となりました。

ベットもまた肺結核の怖ろしい苦悶の中で死に、2人の女な復讐は失敗に終わります。




ヴァレリーが『従妹ベット』という物語の中でこれほど悲惨な死を迎えなければいけなかったのは、ヴァレリーが〝結婚を売春の隠れ蓑〟としたことにあると言われています。




また19世紀前半の多くの売春婦が少女の頃に売られたのに対し、ヴァレリーは自らの自由意思によって「自分の美貌を武器にし商品」とし、貧しい役人の妻から金持ちのブルジョワの妻へ、最終的には貴族の奥方に収まろうと画策し、結婚制度を悪用して社会的上昇を目指したことが理由だとされています。





従妹ベットの底流にはこうした〝女の力への恐怖〟があります。
作者バルザックを含めた男性たちから見ればヴァレリーは一番危険な存在であり、男性にとっては悲惨な死をもってまで排除すべき存在だったのです。




ヴァレリーは悪女であると同時に哀れな女でもあるのです。

(オノレ・ド・バルザック  1799〜1850)

さて作者オノレ・バルザックの父親は地元の名士であり51歳の時、裕福なブルジョワの娘でまだ19歳のアンヌ=シャルロット=ロール・サランビエと結婚しました。

(バルザックの父親ニコ

1799年にバルザックが生まれますがまだ20代の美しい母親は社交界の花形として派手な生活に夢中でバルザックには無関心でしたアセアセ


(バルザックの母親ニコバルザックを愛さなかった。)

母親は32歳も年上の夫に愛情を抱けず、ジャン・ド・マルゴンヌという愛人を作ります。
1807年に愛人の子、アンリを出産すると母親はアンリばかりを可愛がるようになりましたえー?


(若い頃のバルザックニコラブラブ

バルザックは問答無用でヴァンドームの寄宿学校に6年間入れられ、母親は一度も面会に来ませんでした。

(バルザックの妻、ハンスカ夫人ラブ



バルザックの妻は、エヴェリーナ・ハンスカ伯爵夫人といい、ポーランドの貴族女性でした。

しかし結婚から5ヶ月、バルザックは51歳で死去。



バルザックは手紙で自分を滅茶苦茶にしたのは母だ』『僕には断じて母親はいません』と苦しい胸の内を書いています。