しかし本当に恋をして幸せになった人なんているのでしょうか?
物語のヒロイン、シャルトル姫は16歳の美しい女相続人
宮廷に現れると、シャルトル姫のあまりの美しさに皆が驚いて、たちまちその場の人々の目を惹きつけられてしまった。
透き通るような肌の白さと美しい金髪がよその人に見られない輝きを添えてるし、顔立ちはすっかり整っており、顔にも姿にも奥ゆかしさと愛嬌がみちみちているのだった。
父親は早くに死に、母親のシャルトル夫人の手で大切に大切に育てられてきた。
シャルトル夫人は宮廷をさがり、シャルトル姫の教育に心を尽くしていた。
シャルトル姫の母親シャルトル夫人は娘に非常に偏った教育を施したのが悲劇の発端でした
その教育内容というのは、『夫を愛し、夫だけに愛されること』が女の唯一の幸福であるという、〝貞操〟と〝婦徳〟の教えを娘の心に刻みつけた。
宮廷に上がった時に、〝恋愛などというものの巻き添えにならない〟
ようにシャルトル姫を厳しく躾けたのだ。
今なら毒親?と言われてるかもしれませんが、シャルトル夫人は信じていたのだ。
〝どんなに情熱に燃えていても、いつか男の気持ちは必ず冷める〟そんな不幸から愛する娘を必死に守ろうとしたのだ
その母親に連れられて宮中に行った時、クレーヴ公爵はシャルトル姫を見そめ、結婚を申し込む。
シャルトル姫はあまり乗り気でなかったが、母親の強い薦めもあり、国王陛下の承諾を得てクレーヴ公と結婚し、シャルトル姫は「クレーヴの奥方」となる。
結婚してまもなくして、奥方はルーヴル宮で催された舞踏会でヌムール公と出会う
2人はお互いの名前もまだ知らないというのに強く惹かれ合う。
ヌムール公爵は誠実で真面目な夫とは違い、リッチでハンサムなちょっと遊び人風の男性。
実際にフランス中の女性からモテモテで、ヌムール公爵に言い寄られ、拒否できる女はいない、恋に落ちない女はいない、と言われるほど魅力的な男性でした。
(当時の宮廷は今のルーブル美術館にありました)ヌムール公爵もまた美しいクレーヴの奥方に一目惚れする。奥方の胸はかつて知らなかった不思議な妖しい思いでかき乱される。
しかしヌムール公爵とクレーヴ公爵は親友だったのだ。
2人はたちまち恋に落ちるが、目と目を見交わし、ダンスを踊るだけでお互いの思いを打ち明けることはない。
そんな時、母親シャルトル夫人が危篤に陥る。
母親は娘がヌムール公を好きなのに気付いていたが、夫に尽くす義務を忘れてはいけない、とシャルトル姫にきつく言い残して死んだ。
奥方はヌムール公を避けるようになる。
そんな時ヌムール公にスキャンダルが持ち上がる
ヌムール公がある女性に宛てたらしいラブレターが見つかったのだ
それを聞いた奥方は激しい胸の痛みをおぼえる。そしてそれが嫉妬だという感情だと初めて気がついたとき、奥方は間違いなく自分はヌムール公爵を愛してしまっていることに気がつく。
そして夫クレーヴ公爵に対し、敬意と感謝の気持ちは持てても、決して愛することができないことに気がつく。
そう、奥方はこれまで一度も恋をしたことがない女だったのだ。
夫のクレーヴ公が奥方の挙動を不審に思い、奥方に問い詰める。
奥方は自分はヌムール公爵を真剣に愛していることを告白する。しかし誓ってヌムール公爵とは一線を越えていない、貞操は絶対に守る、不義は犯していないという。
(夫であるクレーヴ公爵に打ち明ける奥方)
奥方を心から愛している夫は激しい嫉妬におそわれる。
夫クレーヴ公爵は、絶望のあまり病に倒れ、衰弱死してしまう
クレーヴ公の死で障害がなくなったヌムール公は、奥方が隠居している館にまでやってきてあらためて奥方に告白し、プロポーズする。
奥方もヌムール公をこれからも永遠に愛していると告げる。
『あなたにお会いしなければ一生誰も愛さなかったに違いない、そんな女に恋をさせたことをせめて慰めにしてください。』
そしてそれ以上のことはできないとヌムール公爵の元から永久に去ってゆく。
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奥方はその後、修道院に入って、〝類のない貞淑の鑑〟として称えられた。
一度きりの恋に別れを告げて去る時、シャルトル姫はもはやだれの手にも届かない究極的な高値の花となる。
そして奥方は修道院に入り若くしてその一生を終えた。
17世紀末の出版当時、『クレーヴの奥方』は、商業的に大変な成功をおさめた。この本を手に入れるのに、何ヵ月も待たなければならなかったほどである。
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