時はルネサンス真っ只中、当時のローマ法王、詩人、政治家から〝世界一の女性″と称えられた女性がいました。名前はイザベッラ・デステ。
(少女時代からあらゆる方面に才能を見せていたイザベッラ)
フェラーラ君主エルコレ・デステとナポリ王女エレオノーラの娘として1474年に生まれました。いかにして彼女は世界一の女性と称えられるまでになったのでしょうか?
エステ家はイタリアの最も古い家系のひとつで、イザベッラはエステ家の姫として大変高度な教育を受けました。
6歳にしてラテン語、ギリシャ語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、トルコ語を話すことができました。
生まれながらに優れた知性の持っていたイザベッラは、歴史や古典文学にも深い造詣を持ち、古代ローマ詩人ウェルギリウスや劇作家テレンティウスを暗唱することもできました
さらに音楽の才能もあり、リュートの演奏をたくみにこなし、ダンスの妙手でありました
多才なイザベッラはフェラーラの宮廷の華だった。
白い肌に輝く金髪にいききとした瞳、絶世の美女ではないが、優雅なスタイルで抜群のファッションセンスのイザベッラは会う人々を必ず虜にせずにはいられない魅力を持った姫君へと成長していきました。
イザベッラには一歳年下の妹ベアトリーチェ・デステがいました。
ナポリ王家出身の母ににて黒い髪に黒い瞳、浅黒い肌をしたベアトリーチェは、美しい姉の影に隠れ存在感は薄かった。
2人姉妹の格差が逆転したのは結婚でした。
姉イザベッラは小国マントヴァに嫁ぎ、妹ベアトリーチェは大国ミラノの支配者ルドヴィーゴ・スフォルツァに嫁ぐことが決まった。
ミラノとマントヴァでは町の規模や華やかさ、財力で雲泥の差があった。
実家フェラーラの宮廷ではいつも姉イザベッラに先んじていたベアトリーチェは結婚により姉を超えたのだと思った。
(ベアトリーチェ)
ベアトリーチェ自身も結婚により変わった。
20歳年上の夫はまだ16歳の幼い花嫁ベアトリーチェを溺愛し、わがままはなんでも聞いてやった
(妹ベアトリーチェ)
実家フェラーラの宮廷でぽっちゃりと冴えない姫君だったベアトリーチェはミラノの莫大な財力により、豪華な衣装と宝石で自身を飾り立て宮廷の中心に君臨し、その様子を姉イザベッラに見せびらかした。
レオナルド・ダ・ヴィンチさえ結婚の祝いとしてベアトリーチェの肖像画を贈ったのだからその権力のほどがうかがえる。
(ルネサンスが生んだ天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ)
小国マントヴァに嫁いだイザベッラには金銭的に到底手が届かないものたちだった。
(妹ベアトリーチェ)
ベアトリーチェは姉イザベッラに自分の幸福を見せびらかした。約80着の最新型の金や真珠で縁取られたドレスや数々の宝石など。。
ベアトリーチェの豪華な暮らしを知るにつれ、イザベッラは富ではなくセンスで対抗することにした
イザベッラもまたレオナルド・ダ・ヴィンチに肖像画を依頼したが一枚のドローイングしか描いてもらえなかった。
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イザベッラのファッションはシンプルだがセンスのいいもので、自ら香水を調合し胸元を大きく開け、刺繍が施されたガウン、ビロードの量感を活かしたドレスなどは、イタリア全土で人気となりフランス王妃アンヌ・ブルターニュさえ真似するほどだった
さらに美術品を収集し、哲学者、詩人、画家を庇護した。
1500年フランス国王12世がイタリアに攻めてきたとき、たくみに立ち回り、マントヴァへはフランス軍の不可侵を約束させることに成功した。
また妹ベアトリーチェは夫の愛人チェッチーリア・ガッレラー二を追放しており、イザベッラはルイ12世に推薦状付きで可哀想なチェッチーリアを保護させた。
イザベッラは女の武器である泣き落としでたくみに危険を切り抜けた。
一方のベアトリーチェは21歳で第3子を死産し死去した。
イザベッラはマントヴァを文化の中心都市として発展させるために努力し、60代半ばになっても精力的に女学校の設立や美術品を美術館として開放した。
1439年にイザベッラは64歳で死去。
マントヴァ侯爵夫人イザベラ・デステはラ・プリマ・ドンナ・デル・モンド(世界一の女性)と呼ばれ、太陽よりも美しいひとりの女性と書かれ激動のルネサンス期のイタリアを生き抜いた女性でした。
イザベッラの美しい書斎の入り口にはこう書かれていたといいます。
ーNec Spenec Metu(夢もなく恐れもなく)
これはイザベッラのモットーでもありました。イザベッラにとって人生とは、そこに、眼の前にあるものが人生でした。
たとえ、それが清潔で美しくなかったとしても。
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