時は19世紀末。舞姫は森鴎外が4年間医学を学ぶためドイツへ留学した体験をもとに執筆されました
主人公、太田豊太郎(モデルは森鴎外自身)は若きエリート。
ベルリン留学も3年経過し、ヨーロッパの自由な空気も満喫していたころ、クロステル通りの教会の前で涙に暮れる美少女エリスと出会う。
少女は薄きこがね色の髪と青く物憂げな目をしており年齢は16、17歳くらいだった。
話を聞けば父親の葬儀代金を支払えず、ヴィクトリア座の踊り子で身を売る瀬戸際だという。
そのまだあどけない小柄で可憐なようすに心惹かれた豊太郎は父親の葬儀代金を出してやるが、留学仲間から中傷され豊太郎は免職となってしまう
その後豊太郎はエリスの母の家に住み、新聞社のドイツ駐在員として職を得た。
豊太郎が原稿を書く傍らで、劇場から帰ってきたエリスは裁縫をして過ごす、というささやかな幸福に身を委ねていた。
さらに豊太郎の将来を憂いだ相沢謙吉のおかげで日本への帰国のめどもたった。
そんなころエリスが豊太郎の子を身篭ったことが発覚する。
豊太郎は、
〝貧しき中にも楽しみは今の生活、棄てがたきはエリスへの愛〟という思いとは裏腹にこの機会を逃せば日本に帰ることができず、名誉も回復することができないので泣く泣く帰国を決意する
しかしそれは自分を一途に信じきっているエリスへの裏切りだった。
豊太郎は罪悪感にさいなまれて夢遊病者のようになってしまい、気を失って倒れてしまう。
数週間後に回復した豊太郎が見たものは、友人相沢謙吉からすべてを聞き、真実にあまりに傷つき、生ける屍として横たわり精神の正常を失ったエリスの姿だった。
豊太郎はエリスの母になにかしらの資本を与え帰国の途についた。
あぁ相沢謙吉がごとき良友は世にまた得がたかるべし。されどわが脳裏に一点の彼を憎むこころ今日まで残れりけり。
で終わる舞姫。しかし実際のエリスのモデルであるエリーゼ・ヴィーゲルドはなんと森鴎外を追いかけてドイツから日本にきてしまうのである
50日の航海をえて日本に来てしまったエリーゼのことを森鴎外は家族に正直に打ち明けました。
しかし森家の人々はこれを森家の家名に傷がつく一大事であり、誰も誰も大切に思っているお兄様の将来に傷がつく大事件としてとらえた。
親戚の者に頼み、エリ-ゼに帰国するように、エリーゼが泊まっている築地の精養軒を訪れた。
鴎外とエリーゼは夕食を共にした。この日エリーゼは鴎外に何を語ったのか、鴎外はエリーゼになんと答えたのかはわからない。
しかしエリーゼは横浜港について一ヶ月後ゲネラル・ヴェルダー号に乗り森家の人々に見送られながらドイツへと帰国した。
森鴎外は1890年に舞姫を発表。
前年に森鴎外は登志子と結婚しました。一児をもうけますがわずか一年で離婚
おそらくそこには一人の女性を裏切ることになった鴎外自身の自己処罰にも似た痛恨の思いが秘められているのではないでしょうか。
舞姫を読んだ感想としてはエリーゼさんあなためっちゃ愛されてますよ小説デビューです。
(数十年後のエリーゼ・ヴィーゲルト。〝可憐な美貌〟のおもかげはありませんが。。)