「はじめまして、あなたの新人研修を担当します泉田といいます。よろしく。」

「あなたがアタシの担当?」


その人は値踏みをするかのようにオレの頭のてっぺんから爪先まで見渡した。


「……ふぅん。」

……なんなんだ、この新人は?

確かに相手はキャリアでオレはノンキャリだが、オレは先輩だぞ?

先輩に向かって『ふぅん』だと?


「ま、いっか。アタシは薬師寺涼子。よろしくね、泉田センパイハート

そう言ってシースルーのブラウスを着た女が手を伸ばして着た。


あぁ。

握手か。


そう思ってオレも手を伸ばそうとすると、彼女の細い人差し指がオレの唇に触れた。


「!?」


とっさのことで何があったのか情報を処理することが出来ず固まった。


「ね、泉田センパイ。こ〜んなお仕事してて彼女とかっているのぉ?」

薬師寺涼子はズイッとオレに顔を近づけた。


「えっ?え〜っと……。一応いるけど……。ってか。君、距離、近いんだけど……?」

薬師寺涼子はお構いナシにそのまま続けた。

「へぇ~。いるんだぁ、彼女。ね、どんな女?まぁ、どんな女でもアタシには負けるでしょうけど。」

「………。」


な、なんなんだっ!?

この自信はどこから来るんだっ!?



「た……確かに……君は……美人だと……思うけど……。人には……それぞれ……好みってのが……あるわけだし……。」

なんでオレがこんなにタジタジになってんだっ!?


「そうね。ね?泉田センパイ?センパイの好みの女ってどんな女?」

「え、え〜っと……。それはプライベートだから……。」

「へぇ~。」

薬師寺涼子は人差し指でオレの首から下顎をツーッと撫でた。


完全に彼女のペースだ……。


オレ……これで彼女の新人研修出来るのかっ!?



前途多難な新人研修になりそうだ……。




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