大阪市西成区・通称「釜ヶ崎」。
高度経済期を支えた、肉体労働者のまち。
日本で唯一、暴動が起こるまち。
日本一、平均寿命が短いまち。
釜ヶ崎(大阪市西成区)
ふらりと立ち寄りがたいイメージがありますが、
最近は、福祉団体やNPOなどがまちに入り、
外の人を呼び込む取り組みがすすめられています。
先日、釜ヶ崎のガイドツアーに参加しました。
そこでは、日雇い労働者の厳しい生活があり、
時代の変化にしたたかに対応する、まちの顔もありました。
水野阿修羅さん
ツアーの案内人は、水野阿修羅(あしゅら)さん。
ご自身もかつて、釜ヶ崎で労働者として働いていました。
その後、NPO法人の職員となり、2014年に定年退職。
今回は「これぞ釜ヶ崎」と個人的に思った場所を、記録します。
労働者のまちを支えるインフラ
↑大阪万博の時に建てられたホテル。
6階建てではなく、3階建てです。1階を上下に区切って、使っています。
上の階は廊下から入るそうで、1部屋1畳ほど。
外国のお客さんの中には、薬物で意識がもうろうとして、
窓から飛び降りる人がいたので、格子がはめられています。
↑エアコンなし、一泊500円の宿。
「夏はエアコンなしは、ちょっときついですね」と、阿修羅さん。
↑自動販売機のジュースも割安。
なぜ安いのかは不明。「企業努力」という声も。
↑「スーパー玉出」の存在は欠かせない。
お惣菜は格安。お客さんは、ほとんどが高齢男性だそう。
「あいりん労働福祉センター」。労働公共職業安定所です。
朝5時からあき、人が並びます。
よい仕事は早い者勝ちなので、朝の3時、4時から動き始める人がいます。
職業紹介版
災害があると、仕事が増えます。
賃金から、食費と宿泊費がひかれます。
通りにずらりと並んだ、コインロッカーのお店。
釜ヶ崎の労働者は、ここから全国の現場に向かいます。
長期間不在の間、宿泊施設をひきはらい、荷物をロッカーに預けておきます。
釜ヶ崎の新しいすがた
釜ヶ崎ならではの魅力を発信して、外から人を呼び込もう、
という動きもあります。
↑ディープな日本に興味のある、外国人のお客さんが増えています。
簡易宿泊施設が、外国人向けのモダンなホテルに建てかわっている。
↑NPO法人が運営している、ゲストハウスとカフェ。
ドミトリー、2500円から。
外国人も泊まります。
釜ヶ崎は、支援団体と福祉関係者がとても多いまち。
最近は、カラオケが増えているそう。
外国人が経営しているところも。
炊き出しが行われる三角公園。
年末年始は、日雇いの仕事が減る時期です。
西成警察署。
日本最大規模の、常時600人の警察官が待機しています。
最近は労働者の暴動が減り、また警察官の対応がソフトになっているため、
大きな混乱はないそうです。
「釜ヶ崎のありのままの姿を、きちんと伝えたい」と水野阿修羅さん
暴動が少なくなった一因は、労働者が高齢化していること、
部屋にエアコンやテレビがつき、引きこもるようになったこと、があげられます。
集団でつるむことが減ったそうです。
日中ということもあり、
ツアー中にあまり人を見かけることはありませんでした。
2時間の駆け足ツアーでしたが、釜ヶ崎というくらしがあり、
それに対応する環境があり、支援が集まり、経済が形作られる、
ダイナミックな動きを感じました。
アルコール依存症の人が多いまちでもあります。
釜ヶ崎は、「福祉の原点のまち」とも言われます。
人と人とのつながり、助け合い、生活の工夫があちこちにみられます。
その話は、あらためて。