先日、主人を迎えに車を走らせた。
夕方の5時。
日はまだ明るかった。
いつもの見慣れた光景を通り過ぎる。
前方に黒い人影が見えた。
夕方だから、黒いシルエットに見えるんだろうか?
それとも全身黒づくめのファッションなのか?
とりあえず減速をした。
それにしても全身黒づくめか・・・困るな。
後姿から察するに、おじさんかお兄さんか。
自転車に乗っているようだ。
最近、危険自転車が多い。
携帯やりながら、周りを見ないで自転車に乗る人間が多く、
それで事故が多いとニュースで流れていた。
そんなことをふと思い出し
減速をしつつ、その黒い人影の横を過ぎる・・・
過ぎようとして
この人は一体どんな人だろう?と
横目で見る。
そうしたらもうそこに人影はなかった。
人が隠れるスペースはない。
日はまだ明るい。
見通しのいい交差点だった。
また見たかな?
そうだ、気がついた。
あの全身黒づくめの人・・・
何から何まで全身黒づくめなのに
どうしてこの人が男の人だとわかったんだろう?
どうしてこの人が自転車に乗ってる、とわかったんだろう?
うーん・・・まぁいいか。
そういえば最近たまに見るなぁ・・・
道路のど真ん中にいる人。
ていうか、人みたいなもの。
車の上に乗っかってるのもいるし
土饅頭みたいにくっついているのもいる。
運転していて
ド肝抜かれる。
隣に旦那か長女がいれば
「あれは生きてるやつか?死んでるやつか?」
叫びながらの運転になる。
ほんとに心臓に悪い。
たまに本当に生きてるような人もいる。
お寺かどこかに行った時
物腰の美しい上品な人に声をかけられた。
返事をしたら
周りにいた人が怪訝な顔をした。
どうもその人は生きてる人間じゃなかったらしい。
声も仕草も話し方もリアルだったのに。
生きてるのか死んでるのか
たまにわからなくなる。
本当はどっちなんだろう?
よく混乱する。
しかし思う。
もしかしたら自分こそ
とっくの昔に死んでいるのかもしれないということに。
生きてるように死んでるのかもしれないのに。
生きてる保障なんてない。
ここは曖昧な世界だから。
自分ははたして死んでるのか生きてるのか?
本当はどっちなんだろう。