海中に漂う人がいる


海の中から語りかける人たち、物言わぬ人たち


まだ津波から逃げようとしてる人たち


走る人、走る人、逃げ惑う人


恐ろしいほどの轟音


大きな音


飛び交う叫び声


叫び声の渦



助けて!助けて!!


逃げ惑う人たち


波にのみ込まれる




ストップ・モーションのように


その映像が何度も繰り返し繰り返し


映像が止まらない


もうやめろ、やめろ。


もう止めろ。


誰か、その画を止めろ。


大声で叫ぶ自分。







いつのまにか視界が切り替わった。


一面オレンジ色の世界が広がる。


ダークオレンジだ。



ここは一体どこだ、どこに迷い込んだんだろう?


不思議に思いながら、ゆっくり歩く。


その中で、おばさん達から声を掛けられた。


丸顔の優しそうなおばさんから声を掛けられる。



「あんたは大丈夫だった?」


「大丈夫だよ」


「おばさん達こそ大丈夫だった?」


「私たちもう諦めてたの、だからもういいんだよ・・・・」


痩せたおばさんが言う。


「私達は大丈夫だからね、心配しんでいいんだよ」





うんうん。


「家にお入りなさい。」


丸顔のおばさんに言われる。


ご好意に甘えて、家に入る。


たぶんあちらでは、まだ家は倒壊してないんだろう。


家の中に入ると、おばさんやお婆さんたちが数人、茶の間にいた。


みんなにこやかにしている。


というか、達観してるのか・・・


もう上がる準備が出来てる人たちなのかもしれない。


お茶をごちそうになり、四方山話をしてお別れした。





お別れするとき


みんな少し寂しそうな顔。


たぶんみんなわかってる。


でも口に出さないだけだ。





「いろいろありがとう、それではまた。


  おばさん達もお元気で。さようなら・・・」


「またね~さようなら~みんなによろしくね~」


みんなが手を振りながら言う。


時々、涙声も混じる。


おばさん達の目から光るものが見えた。






うんうん。


みんなに言っておくよ。


ありがとう、ありがとう。そしてお元気で。


さようなら。