自宅にいて寛ぐ私。

もう一つソファーが欲しい。

そう考えた自分はネットでリサイクルショップを検索する。

そのときインターフォンが鳴る。

隣人のドクターだ。


彼は面倒見のいいドイツ人だ。


(それにしてもドクター?に見えない容姿だ。

 スキンヘッド、筋肉質でいかにもドイツ人という風貌だ)



「櫂、何をしてる?」

「実はソファーがもう一つ欲しくて、いまネットで探してるの」


「それならうちに要らないソファーがあるから、君にあげるよ」

思ってもなかった好意の申し出に喜ぶ私。

「いまから倉庫見てくるから、うちの玄関で待ってて!」

ありがたい申し出に、わくわくしながら隣人宅までついていく。

数十分後、渡されたのは新品同様のソファーだった。それも二台もくれる。


「こんな物の良い、立派なソファーをもらったら悪いわ。やっぱり返すわ」

「いや、うち(病院)で使おうと思ったんだが、奥さんが気に入らないって。

 だから君さえ良かったらあげるよ」という。

「ありがたく頂くね。大事に使わせてもらうね」と言ったら、急に彼の表情が真顔になった。

「櫂、聞いて」


「いま五回なんだ。もう五回目なんだ。

 九回目になったら、君を迎えに来るからね。支度しておくんだよ、わかった?」

私は何が何だかわからない。


「五回って何のこと?九回って?」

彼に聞いたら、もうそこに彼はいなかっ た。

彼のクリニックの待合室で、いつまでも待っていたが、彼は現れなかった。

おまけに今日は休診日らしい。


仕方ない。



言伝けはともかく、支度はしておくか。

自分の手荷物を点検し、身の回りの愛用品を手入れした。


そいしたら何だか踏ん切りがついたようだ。


彼のクリニックのドアを開ける。

「では、行ってきます」

元気よく、ドアの向こうに飛び出していった。