こんにちは!
Kaiです。

今日はそろそろ、私の一番大好きな時計、
OMEGA flight masterのお話です。

生産期間が7年程と極端に短い、
しかも資料があまり現存していない
プロフェッショナルパイロットウォッチ
について記事を書きたいと思います。

なお、メーカーヒストリーとかは省き、
オメガがフライトマスターを誕生させる
きっかけになった出来事から
書いて行きます。
まずは、私の私物、前/後期型とおなじみ、
裏蓋の飛行機マークからスタートです(笑)

オメガがパイロットウォッチ開発をスタート
させたプロジェクトは「ケース22」から
開発が具体的にスタートしていきました。
パイロットウォッチの開発自体は1950年代
から、具体的に検討されていたものの、
特にイギリス空軍では、シーマスターを
使う事が主だったようです。

オメガは主にイギリス軍に多数の
バリエーションの時計を供給してきました。
フライトマスターの必要性は、プロペラ機
から、ジェット旅客機での海外旅行時代に
突入した時、有名どころでは既に、
ロレックスはGMTマスター1stを
パンナムエアに供給していました。

でもオメガに課された課題はさらに難関。
これだけは推測ですが、
既にイギリス空軍の中で抜群の信頼を置く
オメガ。その実績から、
ブリティッシュエアウェイズから
開発オーダーされた可能性があります。
※初フライトでフランスからのオーダーは
 記録はありません。

マッハ2で飛ぶ超音速ジェット旅客機計画、
コンコルド社からの依頼に答える、
真のパイロットツールウォッチを作る事が
目標になりました。
コンコルドで1日飛び回ると1日に
最低でも太陽を2回上がって沈んで、
を見ることになる想定で、正確なGMT表示が
可能なことが従来のパイロットウォッチより
要求が高かったようで、文字盤を見ると
いかにGMTを見やすく判別できるように
するかを伺う事ができます。

まず、いくつかのプロトタイプの製作、
耐久テストから始まります。

ケース22の最初のプロトタイプ

ハンドルを握り続けるパイロットを考慮した
ブルヘッドのものを製作しましたが
視認性、操作性に難があり受け入れられる
ものではありませんでした。

この時点で自社で課した技術要求仕様は、
クロノグラフ、明確な判断ができる
GMT機能、分単位を明確に判別できる
対Gによるテスト
インナーベゼル、時計の針は
コックピット、計器に囲まれた
特殊な照明下で視認可能という工夫を
凝らしました。
(昔コックピットの照明は
 赤だったらしいです)

ただそれでも真のツールウォッチとして
要求を果たす事ができませんでした。
ちょうど同じ時期、スピードマスター
プロフェッショナルが、NASAのテストを
受けていた時期です。

ケース22以降でも、コックピットのガラスが
割れた時を想定した急減圧
(通常気圧〜急減圧して真空環境)テスト
対G、振動、操作、クロノグラフ、視認テスト。
この中で自社内の急減圧テストには
なかなか合格する事ができませんでした。
真空環境では何度もガラスが粉砕した
らしいです。
この頃ムーブメントについては信頼性の高い
cal.861にGMTを付与する構想でムーブメント
バリエーションは増えました。

中にはこんなプロトタイプも。
※実物はスイスオメガミュージアム所蔵品
このバリエーション欲しいんだけど❗️(*´∇`*)
ref.145.026というリファレンス番号を
与えられましたが市場には1本も、
出回りませんでした。

幾度となくプロトタイプを作ってテストを
繰り返しケース54になりました。
セイコーのジウジアローみたいな形に
なりました。

色々試行錯誤していますよね!
ただケース54でも急減圧テストは不合格。

で、最終ケースで遂に全ての要求が
満たされて最終形態が決まりました。
それは、「ボルケーノケース」と呼ばれる
独自の形。

ケース1つに、急減圧対応の特許を含め、
25種、機能にまつわる特許を各国で
取得する事から始めました。
力の入れようが半端ねぇ((((;゚Д゚)))))))

※日本で実際に出された特許の写真です。

内圧外圧両方に耐えうる独自の形と内装の
システム。
既にフライトマスターで取得した特許から
ボルケーノケースモデルを発表し始めます。
ビッグブルーとか、スピードマスター
マーク3にも採用されていきます。

オメガの狙いはまさにこれでした。
世界各国で一気に特許を取得した理由です。



で、とうとう待ちに待ったコンコルド、
初号機飛行テスト。
世界初の超音速ジェットのコックピットに、
パイロットの腕に初めて乗りました。
1969年3月2日。コンコルドはマッハ1で
ソニックブーム
(音速を超えた時に出る衝撃波)を響かせ、
空へ飛んで行きました。
「プロパイロットの為のツール(計器)時計」
が誕生しました。

のちのちコンコルドは最高速度、
マッハ2まで出すようになりますね。
それでもフライトマスターは健在です!


今の若い子知らないでしょうけど、
コンコルドがどういう飛行機か、
簡単に説明します。

当時戦闘機より圧倒的に速かった、
最大速度マッハ2で飛ぶ旅客機(笑)
ニューヨーク〜パリ間を3時間で行けてしまう
超セレブ御用達の変わった形の飛行機の事です。
エールフランスと、
ブリティッシュエアウェイズ(イギリス)
の2つの航空会社で運用されました。

飛行最大高度は13000フィート超え、
いわゆる地球と宇宙の境目の成層圏。
地球の丸さが分かるくらいの高さを
飛んだらしいです。

30時間かけて地球1周したギネスを持つ、
とんでもない旅客機でしたが2003年に
老朽化と燃料費、コストの高さから、
ラストフライトで歴史に幕を閉じます。


で、話はフライトマスターの話に戻します。

コンコルドのテストフライトで大成功を
納めてお墨付きをもらっているタイミングで
同じ年、1969年7月16日、スピードマスターは
アポロ11号とともに前代未聞の月面着陸を
実現します。

スピードマスターがムーンウォッチとなり
フライトマスターはコンコルド認定
パイロットウォッチと。
2つの成功が重なり以下のような
ポスターが作成されました。

いわゆる、
月でテストしたムーンウォッチ。
ジェット機に認められた、フライトマスター。
ってポスター。

さらに


フライトマスター付けてさあ!テイクオフ!
みたいなものまで。
業界で無敵になった黄金期ですね。

さらに機能説明はこんな凝った作り。
実際にパイロットに3つのリューズの位置を
決める際にアドバイスもらったとか。
左側2つのGMTリューズ、
インナーベゼルリューズの位置ですね。


で、1969年から1976〜78年くらいまで
販売されました。

ここから私の私物から解説しますが、
左側が1stモデル、右側は2ndモデル。
ステンレススチールの一般的な
バリエーションは全部で8タイプ存在します。
オレンジ針が黄色のバージョンや、
文字盤の配色違い、トリチウムの型等の違い。

まず1stモデルは、1969年から1970年の2年間
だけ製造。

2ndモデルは1970年から1976年あたりまで、
リファレンス番号を2回変え、対防水性能を
50mから100mまで上げました。

中のムーブメントは、オメガ傘下の
レマニアが開発したスピードマスターの
cal.861にGMTを追加しましたが、
以下の違いがあります。

機能は一部を除き共通です。
機能:オレンジ針はクロノグラフ 
   (バリエーションでイエロー針もアリ)
  ブルー針は第二時間帯(GMT)針
        5分〜60分刻みのインナーベゼル

違い
左の1stモデルにはさらに現時点の
午前午後表示/スモールセコンドを廃止。
(cal.910)

右の2ndモデルには現時点の
午前午後表示を廃止/スモールセコンド採用。
(cal.911)


で、ここまでがフライトマスターの
「普通」の話なのですが大ファンの私は
全部網羅しちゃいます。


さてさて。

1970年に200本限定で、イエローゴールド
無垢のフライトマスターがリリースされました。

※以下、私が実際に着けに行ってパチリした
 レア画像です。




行きつけの時計屋さんで入荷情報受けて
デジカメ持ってダッシュでパチリしに
行きました。
シリアルno.001はアラブの国王が持ってる
とか、いやこれ着けてたら扱いに超困る
ギラギラしすぎたゴールドでした。
超ズッシリ重かったです。
8年前、30歳の時に付けてみました。
当時の売値が300万ですw
扱いにめちゃくちゃ困るわΣ(゚д゚lll)
銀行の貸金庫内のディスプレイモデルですw

ただ超セレブ感を一瞬だけ味わいましたw
腕から外したら、これはこれは酷い
現実が見えてきます_:(´ཀ`」 ∠):

オメガ、フライトマスターって
時代に並行したスピードマスターの
歴史に思いっきり上書きされて、
残念ながら実はあまり目立ちません。 

ただ、販売時はスピードマスタープロの
上位モデルという位置付けで販売されました。
スピードマスターより高いんだよ!(笑)

アメリカとロシアでのアポロ・ソユーズ
ドッキングプロジェクト、1975年7月。
ロシアの船長にフライトマスター 2ndが。
NASAのアポロの船長にはスピードマスター。
両者オメガだったのは有名な話です。


アメリカ対ロシアの冷戦が終わる出来事ですね。

実は私が生まれる10年前の話_:(´ཀ`」 ∠):


フライトマスター、スピードマスターの
両モデルは「空の覇者」ですね。

フライトマスター開発の功績は、
ボルケーノケースで25個特許を世界各国で
取得したという、快挙を成し遂げ、のちに
スピードマスター、シーマスターに
新しいバリエーションとしてフィードバック
しました。

申し訳ないけどパンナムエア採用の
ロレックス、GMTマスターよりはるかに
ハードル高すぎると思う(笑)


東京銀座界隈の時計屋さんは、良く
「位置付け」したがりますが、
信憑性無い解釈について一言
ズバーッと斬り込みたい。

一流ブランドのその時計、
「何の為に生まれたのか」が
一番重要ですよね。
買う方はそれに憧れます。

オメガに〇〇の派生で〜説は無い。
オメガはムーブメントにこそ偉大な
歴史を持ちます。

ただ、これだけは強く言いたい。
フライトマスターは、世界最速のコンコルドに
採用される為に生まれた超多機能な
ツールウォッチであると。
「cal.861を独自進化させた結果、
 独自路線をひた走る偉大な時計。」

今回この記事を書くにあたって、
「flight master only」という当時、オメガで
フライトマスター 開発に携わった方々の
書籍から内容を抜粋しました。

以上、
大好きなフライトマスターの記事でした✨