正確な年数のわからない昔のこと
一つの大陸であった国は、突然の自然災害というにはおかしい現象によって分断された。

基の首都がある区『柱央』
北に位置する区『北都』
東に位置する区『東郷』
西に位置する区『西京』
南に位置する区『南府』

一度は離れた国々は文明の進化と共に以前とは異なる大陸へと戻ることは出来た。

…それと共に、分断された原因が発見された。

名を《火喰槌》
古来表記《火之迦具土神》の物とされるそれは永い眠りから目覚めると共に大陸の地盤を破壊。

一時的に放たれた力によって消耗すると再び眠りへとついた。



………
…………それに対し
古くから神々を称え奉る慣習の人々は異常な適応力をみせた。

分断された事実をなかったことのように《火喰槌》を大切な神の遺産とすると、その力を新たな地盤として利用するべく封印。

五つの区にそれぞれ守護の神社を築き上げ、人柱ともいえる『神主』の生命によって封印は保たれ平和な日々へと戻っていた…筈だった。


時は経ち
その封印は破られた。

『神主』の生命に異常なし。
力業によって破壊された形跡もなし。
姿形の知れない事態に各区長が動いた。

《火喰槌》の現在の所持者を懸賞金付きの指名手配犯とし、情報の提供や奪還を命じた。


掴めない正体に振り回され……
やっと辿り着いた確かな手掛かり。

それは
現れる時に必ず聞こえてくる。



……《童歌》




手応えのない足下に梓は眉を顰め振り返る。

綿飴のような真っ白の髪を揺らしながら、紅く眠たげな垂れ目はさまよった後、二人を捉えた。

「あれ?アーチャン?…と、ツーチャン」

気の抜ける高い声に縺城は脱力した。

「…やっぱり何ともないんスね」

へらへらと笑みを浮かべる見慣れた姿に呆れた表情を浮かべる梓と縺城。
その視線は床にできたクレーターと見下ろす視線の間を行き来している。

「アーチャン?」

「…頑丈すぎるのもムカつくね」

「え~…」

真っ白な髪の少年、風凪。
不機嫌と全面に表した梓が彼の頭を鷲掴みに締め上げていく。

が、それでも不満を訴える彼に変化はない。

「…凪、情報を」

不機嫌な梓と笑っているだけの風凪に話が進まないと察した縺城は近場の椅子を持ち出すと、あいている方の手を引っ張り梓を椅子に座らせた。

「……………」

「時間ねぇんだから仕方ねえだろ…」

恨みがましく見上げてくる梓へ縺城が言い訳をしている間、いつの間にか向かいへ座った風凪は何処からか紙の束を取り出した。

その行動に部屋は紙の擦れる音だけに包まれる。

順番通りにデスクの端から並べていく作業が終わると、梓と縺城の視線も辿るように向けられた。

それを確認し、風凪は満面の笑みを浮かべた。



赤煉瓦の外壁
窓の位置に蜘蛛の巣状のステンドグラス
御世辞にも綺麗とは言い難い外装

木でできた扉は軽く押すとギィ…と音を立てて開いた

「風凪、居ないの?」

灯り一つない日差しだけの薄暗い中を見渡すと、梓は中央で足を止める。
その後を縺城は眉をしかめながら入店した。

ードンッ、ガダァン…ダァーンッ

「うぉ…っ!?」

盛大な破壊音に手から滑った小物を間一髪で受け止めると、音のした地下へと続く階段を縺城は覗き込んだ。

「刻まれるよ」

「?何が…ーッ!?」

離れた所で勝手に椅子に座る梓からの忠告に振り向いた。
瞬間、縺城が咄嗟に飛び退いた所へと何かが突っ込んでいた。

立ち込む土煙から見える白いフワフワした何か…

呆然とする縺城を叩き、傍に寄った梓はその何かを見下ろすと徐に足を振り上げー

「三徹だろうと情報は貰うよ」

表情一つ変えず、勢いのままに振り下ろした。