1月の読書メーター
読んだ本の数:26
読んだページ数:5806
ナイス数:7512

愛をみつけたうさぎ―エドワード・テュレインの奇跡の旅愛をみつけたうさぎ―エドワード・テュレインの奇跡の旅感想
2023卯年初読み本。丈90㎝、耳と尾以外は陶器、関節部可動というお人形としてはかなり古典的高級なウサギを主人公とし、裕福な家庭ー海底ー漁師夫婦ーごみ捨て場ー旅人ー農夫ー貧困の中死にゆく子供…彼の遍歴に交わった人間達との交流を ひとつの人生のように見立て、そこに人形である自我が愛するという感性を得、育んでゆく過程が描かれる。自分の人生で、愛を初めて自覚したのはいつだっただろうか…などと想いつつ、…素敵な物語だった。
読了日:01月01日 著者:ケイト ディカミロ
夜が来ると夜が来ると感想
22寅猫本。現代オーストラリアを舞台にした老婦人晩年の物語…サスペンス風な老人介護もの、ともいえる。読了の今日は自分の54の誕生日で…老後に周囲には血縁者も友人も無いだろうことは 今から軽く想像がつくだけに、身につまされつつ読むことになったわけだが、そんな自分が時にこの頃想うのは、ボケることも、神様の采配…本人にとってはもしかしたら一種の救いなのかもしれない…ということ。浜辺の砂のざらつきと 思い出の土地の濃密な熱帯の空気が、夕暮れの天気雨を連れた雲の下で よじれた時空の隙間を作り出す…上手い作家さんだ。
読了日:01月02日 著者:フィオナ マクファーレン,Fiona McFarlane
バイロン詩集 (新潮文庫)バイロン詩集 (新潮文庫)感想
ロマン派の根っこみたいな叙情詩が これでもか❗️と、並び…コントロールが充分効いている素晴らしい作品なのだということも理解しつつ…ちょっと婆となった今の自分は お腹の具合が悪くなりそうで150ページ辺りでギブアップ(泣) 同じ自分が二十代くらいは ここに端を発していそうな散文詩なんかもちょくちょく書いていたことが 我ながらあまりに遠い日となったことを痛感し、同時に、ロマン派の楽曲にこの頃全く食指が動かないのも同じ感性理由かとしみじみ思い至る。つまり、書評以前に自分にガッカリ落ち込まされる読書だった…↘️
読了日:01月04日 著者:バイロン
わたしの信仰: キリスト者として行動するわたしの信仰: キリスト者として行動する感想
22クリスマス。メルケル首相在任中から積んでいたが、ようやく時来たり。彼女のアイデンティティの核であろうキリスト教(天)と政治(世俗権力)を どう溶かし合いながらやってきたのかが、この信仰にまつわる講演だけを採り出した一冊から垣間見る。「愛」による 討論を重ねられるレベルの信頼の大切さ、自分勝手な自由ではなく 個々相互の「尊厳と責任による自由」のための社会規範、その底にあるべき愛による「共生」という基本概念、欧州を神という精神上の共通項と グローバル化の時代によっていっそう強く伴うべき「寛容」の大切さ。
読了日:01月05日 著者:アンゲラ メルケル
イエスの生涯 (新潮文庫)イエスの生涯 (新潮文庫)感想
22クリスマス。イエスの容貌から描き始められる評伝…原始キリスト教時代といえる頃のユダヤ教との関りの時代から 復活の謎までを、イエスの行動を 主に共観福音書の記載から、師弟それぞれの都度都度の思考、主流派(サドカイ派やパリサイ派)やローマ側のそれぞれの思惑、土地の民衆たち、など そこに記載され登場する多くの視点を細かく捉え乍ら、イエスがひたすらに「愛」を伝えようとしていたことを、作家としての思考を軸にしつつ遠藤氏らしい深い想いで、時間軸に沿ってまとめている。読みながら不図、"英雄"て何なんだろう…と想う。
読了日:01月07日 著者:遠藤 周作
一千一秒物語一千一秒物語感想
「グッドナイト!…今夜のあなたの夢はきっといつもとは違うでしょう」…って(笑) 稲垣足穂(1900ー77)初読み代表作。邪気もなければ根拠も不要とばかりに 理屈は全て投げ飛ばし、撃ち倒し、丸も三角、有ると思えば無い という、完全に自由奔放な個人的世界観…これぞ大正ロマンというべきか。抽象性高く 青の美しさが際立つたむらさんの挿画とも好相性。時代も時空も楽々越える 無限の月星の掌編世界。今宵 冬の満月を愛でつつ。
読了日:01月07日 著者:稲垣 足穂
海賊 (岩波文庫 赤 216-2)海賊 (岩波文庫 赤 216-2)感想
アダンのバレエの原作。プーシキン原作『バフチサライの泉』同様、音楽とバレエには 余り強い印象記憶はないのだけれど、戦いのシーンの派手さは記憶にあるような…で、こんなに心理面で手の込んだスジだったのか、と今頃知った⤵。詩編でありつつ、ヒーローの若さ故の不器用さと未熟さ、自意識の強さ、非宗教的な宗教性…物語としても面白く、何れも『マンフレッド』に通じるが、ギリシャと古典への敬愛も含め、これら作品の主人公は自分の人生を常に愛をベースに問うていて、バイロン自身を そのまま素直に映し出した姿なのだろうと感じる。
読了日:01月09日 著者:バイロン
マンフレッド (岩波文庫 赤 216-1)マンフレッド (岩波文庫 赤 216-1)感想
シューマンの同タイトル劇音楽の原作。ゲーテ、トーマス・マンら 多くのメフィストもの作品群と通じて スイスの山中…魔女伝説等も有名な辺りが背景。プーシキンから辿ってのバイロン読書だが、これだけの戯曲として読める物語を 朗読する詩編として書く技術は、翻訳で読んでも天才的驚異的だとよく解る。原罪、贖罪、そしてそれら以上に先立つ自意識…西洋文化の「個」の魂が濃厚に詰まっている辺り、これぞロマン派!キリスト教感覚の点ではニーチェにも通じるなぁ…とも思いつつ、自分のギリシャ哲学の知識の無さも痛感…もう何とかせねば。
読了日:01月09日 著者:バイロン
文豪のきもの (河出文庫)文豪のきもの (河出文庫)感想
丸谷才一の数日内に読んだエッセイに、日本人の美的好みにはスッキリ系とゴテゴテ系との真逆なニ系統があるね…という話があったのを 所々に感じながら読む。明治-昭和期の作家18人が採り上げられている。勿論、和服についての記述がある作家さん達ばかりだ。お洒落の在り様というのは、その人らしさの表れだろうし(少なくとも 他者はそう見る)、作品の中でも勿論 登場人物自身の人格を表すためのモチーフだ。着物と云えば今はほぼ女性の話題に占められがちだが、自分の父もそうだったこともあり 男性の着る和服姿はいいなぁと思う。
読了日:01月10日 著者:近藤富枝
ラベンダーとソプラノラベンダーとソプラノ感想
児童書の扱い+可愛らしい表紙に 長閑な内容を思うけれど、小中学校の全国金賞を目指す合唱部と 昭和的商店街のサークル活動、学校の先生たち、そして父親の昇進…と子供の日常周囲をまるごと背景にして、大人にも解決の難しい人間関係と 物事の「正しさ」とは何なのか、について考える向きに 丁寧に描かれている。自分が子供の頃は「正しさ」について これ程子供に(まして親や先生にも)考えさせる風潮はなく、何かおかしいなぁ…と胸の内に矛盾や不条理を感じたまま"いい子"で割り切る…形を貫くことが暗黙に”普通”とされていたなぁ…。
読了日:01月13日 著者:額賀 澪
失われた時を求めて(4)――花咲く乙女たちのかげにII (岩波文庫)失われた時を求めて(4)――花咲く乙女たちのかげにII (岩波文庫)感想
プルーストがまさに失われた時を探索するこの物語は、月に一冊という相当のんびりしたペースで読んでいても、不思議と それでも困ることがない。それどころか むしろ、せっかちに読むことを拒むかのようなものすら この小説にはあるのかもしれないと思う。この巻は、両親と離れ、おばあさんとお手伝いさんとの三人で向かった夏の保養地…フランス北西部の海岸での ホテル滞在時の記憶を辿る。海辺を描く画家、他の滞在客達、新たな友人や恋人…若々しい思い付きと出来心と偶然の 1800年代末の美しい夏の日々に、ゆったりと連れ去られる。
読了日:01月13日 著者:プルースト
日本のヴァイオリン史 楽器の誕生から明治維新まで日本のヴァイオリン史 楽器の誕生から明治維新まで感想
ヴァイオリンの原型が所謂モダン型に変化完成する時期と、長崎に出島があった時代が同じ、という処から、イエズス会が来ていた時代にも少し触れられるが、主に出島…オランダ商館と関係した時代の史料を重視しつつ、日本へのこの楽器の影響変遷をみる論考。オランダの植民地であったバタヴィア(インドネシア)での状況…現地地元民奴隷にVnを習わせ、奴隷側としても技能所有者として高く自分を売ることができたこと、彼らが出島に来て主人のための演奏をしていたこと、その楽器がいずれ当地の環境に合わせて独自のスタイルをもったこと、等。
読了日:01月17日 著者:梶野 絵奈
カイン (岩波文庫)カイン (岩波文庫)感想
バイロン連続4冊目…後の多くの芸術家への影響を知ったからの読書なのだが、この晩年の作品が自分には一番理解しやすかった。多分、自分がもう若者ではないからなんだろうし(汗)、明らかにミルトン『失楽園』がベースにあって、幸いにしてそちらを読んでいたせいもあるだろう。ざっと言えば『失楽園』の続編…知恵と愛の二択天秤、という内容。 カインを悪者に描き切っておらず、神と両親の罪の話には俺は無関係なはずなのに、何で?!という苦悩が素直に強く伝わってきて、非クリスチャンの自分には もの凄く痛々しく共感がおきてしまう…。
読了日:01月17日 著者:バイロン
ヒエロニムス・ボスの世界-大まじめな風景のおかしな楽園へようこそ-ヒエロニムス・ボスの世界-大まじめな風景のおかしな楽園へようこそ-感想
ボスの絵が好き!という方にはオススメ間違いなし、と感じた一冊。かく言う自分もボスやブリューゲルのような、細緻に人間の様々な行為を描いたタイプの絵は、その思想面歴史面のナゾ加減も手伝って 面白くて興味が尽きないのだが、この本はそういう細密な所を ボスの生涯と工房の両面から全般を追ってピックアップし、拡大し、現状の研究結果をプロの視点で説明してくれるのだから 言うことなし。美術館で本物のオーラを感じるのもいいけれど、実際ここまでの拡大は視力的に無理なので、生を見るチャンスがあるならその予習にも外せない一冊だ。
読了日:01月18日 著者:ティル=ホルガー・ボルヒェルト
マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫)マスク スペイン風邪をめぐる小説集 (文春文庫)感想
菊池寛作品は、十代の頃に『父帰る』を読んで以来の40年ぶりか? スペイン風邪の他、疥癬、入水自殺未遂、心中未遂、切腹、仇討ち、…と いずれも死と隣り合わせにある状態の人間模様を描いた作品が集められている。一見淡白な文章なのだが ちょっとした観察眼がよく効いているし、人物の内心なんかも素直すぎる程に吐露されるので 味わいのバランスが絶妙。この上手さは 十代の頃には読み取り損ねたんじゃないかと思う。何だか、この時勢を表した表紙に惹かれて、記念的に?勢い入手してしまったのだが、そんなわけで読めてよかった。
読了日:01月19日 著者:菊池 寛
うさぎのみみはなぜながい (日本傑作絵本シリーズ)うさぎのみみはなぜながい (日本傑作絵本シリーズ)感想
北川民次、とくればメキシコ!で、この絵本からも キュビズム等の当時の西洋画の風潮影響だけでなく、どこか民芸的なニュアンスが感じられるのは きっと、そこなんだろうと思う。お話もアステカに由来するもので、その歴史を思想をもって臨むような"壁画"を描く作家面だけでなく、児童絵画教育にも意識があった人ならではの、そして郷土性のあるものを大切にする人だったことも伝わってくる。イイ・ワルイで事を選別できるようなお話ではなく、へぇ!で終わったとしても 笑みがこぼれ出る、思考に余白が多く取れる とても面白いお話だ。
読了日:01月21日 著者:北川 民次
鹿よ おれの兄弟よ (世界傑作絵本シリーズ)鹿よ おれの兄弟よ (世界傑作絵本シリーズ)感想
北川民次の作品に続いて、こちらは以前 柳宗元の漢詩「漁翁」を基にし、ユリ・シュルビッツとあべ弘士二つのバージョンがある『よあけ』から知った作品。絵はハバロフスク生まれのパヴリーシンが手掛け、シベリアのタイガの情景と原住民の文化風土が 非常に繊細に美しく描かれる。物語る神沢利子のそれは あたかも現地の歌謡から採り出した詩編のように 櫂を繰る音、さざ波の音、草食動物が踏む枯葉の音、樹々の間から飛び立つ鳥たちの声…と、空気を伝える音に溢れ、血を繋ぐ生物としての 誇りに満ちた世界を覚える。これは名作だと思う。
読了日:01月21日 著者:神沢 利子
白鳥になった王子白鳥になった王子感想
民話的世界観を辿る絵本 連続三作品読書のラストは、滋賀県をベースに活躍されている 若手切り絵作家さんによる作品。物語は多分 伊吹山のヤマトタケル譚…所謂 白鳥伝説。見開きごとに新たな野山の動物達が現れ、その度にタケルを同じ台詞で諫めるのだが、それがとてもいいリフレイン効果になっていて、切り絵作品自身が素晴らしいのは勿論として、文章の構成センスもいい。そして 全てモノクロなのだが、それがまた 自分の頭の中で印象着彩する自由を与えてくれる処として心憎い。幼い人から大人まで楽しめる ふくよかな一冊だと想う。
読了日:01月21日 著者:早川 鉄兵
新・女子校という選択 (日経プレミアシリーズ)新・女子校という選択 (日経プレミアシリーズ)感想
中高一貫6年の女子校を出ている自分、その後も音大はほぼ女子ばかりだったのだが、浪人した1年間の塾だけが世情を小学生以来初めて見知って驚いた場所だった。というのも、塾内の運動会の委員決めのシーン…委員長というと男子ばかり、副委員長というと女子ばかりが挙手したのだ。あれは驚いた。そして、あぁ公立小学校時代もそうだったな…と思い出した。その後職場は男女いたが弦楽器女性はシッカリ者が多く、ある意味再び女子校に戻った感も。さて、女子校とは?とあらためて俯瞰する読書となったが、まぁ自分のよく知っている世界の話だった。
読了日:01月22日 著者:おおたとしまさ
ラスト・ソング (一般書)ラスト・ソング (一般書)感想
アメリカの音楽療法士資格を持った著者が出会った ホスピスでの対話の記録10篇。以前同じ著者の『戦争の歌がきこえる』が非常に印象が強く、良かったので、こちらも手にしてみた。アメリカのホスピスは末期癌に限定していないので、彼女に依頼をかける患者さんの病名はアルツハイマーやジュニアのメンタルケアなど様々。そして、死因そのものではなく、どう生きたか、が死の間際の最も大きな依頼者の課題となっている…つまり、どう生きたか、があってこそ どう死ぬかが決まる。天には 物も思い出も持っていけない、何を残すか、なのだな…。
読了日:01月22日 著者:佐藤 由美子
大人の道徳: 西洋近代思想を問い直す大人の道徳: 西洋近代思想を問い直す感想
道徳科で扱う内容についての提案本。奴隷、栄誉、が最終キーワードか。スッキリ整理され丁寧で 概して共感もあるが、民主主義と自由の二つを考えるにあたり、あまりに基本のキを説こうとするゆえか ルソー+ホッブスとロック、カント、新渡戸稲造+中江兆民と福沢諭吉だけから 今と今後の日本の在り様を導くとなると、掬いきれない部分が残り、この素材のみから 徳や人権と軍制の概念までをも結論するのは 大雑把すぎるような…?自分の未熟な知識だけでも、基教、仏教の具体的影響と 漢学、希哲学、プロ倫、ニーチェ辺りは思考に必要と思う。
読了日:01月24日 著者:古川 雄嗣
せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ)せなか町から、ずっと (福音館創作童話シリーズ)感想
斉藤倫氏は初読み。挿画は絵本で馴染みのJunaidaさんで、YAや童話のニュアンスを持ちつつもライトノベルともまた異なる 大人向けの寓話的連作短編集といった感じか。時代設定も場所も、明らかなフィクションなのに、そしてそれは子供時代、幼少期のものを基調にしていつつも、いつか何処かで触れたことのある感触として…匂いとか、音空間とか、色合い、肌触りなどがあらゆる描写風景に強く感じられ、日常から遠のいてしまった記憶がたち現れてくる。「懐かしむ」という言葉を理解する年齢に至って ゆったりと味わい起こす物語だろうか。
読了日:01月24日 著者:斉藤 倫
イラストレーター 安西水丸イラストレーター 安西水丸感想
村上春樹の表紙といえば佐々木マキか安西か、というほど自分の頭の中では本の装丁のイメージが非常に強いのだが、画業としてどんな分野をどういうふうにやっていらした方なのか、もう少し詳しく知ってみたいと思い入手。ほぼB5サイズのずっしりした画集でもあるが、総俯瞰-作家交友-出身地と来歴-画集の4部構成で評伝的読み物としても愉しめ、彼の人生と画業の絡みが辿れる内容になっている。嵐山光三郎、村上春樹、和田誠各氏の寄稿も。彼の名刺でもあるようなホリゾンが、時代を追う仕事でありながらも 変わらぬ美と静の時を提示している。
読了日:01月25日 著者:安西 水丸
白雪姫白雪姫感想
一度オリジナル的なグリム集を読んでみようと思いながらも未実行なので、この作品でのストーリー展開が他の版と比べた時にどうなのかは詳しくないのだけれど、少なくとも子供の頃の記憶のままではなかった。そして何より、絵が途方もなく美しいこと…驚きを覚えるレベルなのが、この本の一番の特徴だと思う。北方的な印象…白い雪景色、深い森の緑、ヒロインの漆黒の髪、新古典的でありつつも中世の匂いの残る少し暗い空気が全編を覆う。明々としすぎる何処かのアニメーションとは真逆を行くと言ってよく、自分は此方に間違いなく軍配を揚げる。
読了日:01月26日 著者:ジョゼフィーン プール
ソクラテスの弁明―ほか (中公クラシックス W 14)ソクラテスの弁明―ほか (中公クラシックス W 14)感想
長年の積読の末54にもなってようやく読めた。が、ソクラテスの言の諸々が あまりに故父の考え方に近くて、驚きを得ると同時に 積年の積読の割に読んだ甲斐も微妙になってしまったが(笑)…それでも、だからこそ、何処か懐かしく、改めて善徳と快不快の関係などにも考えつつ、芸術が求めるはずの真善美のバランスのことなど 考えている。プラトンらしい対話法、知の追究という善…愛というキリスト教的な感性がない故に読み易くもあるが、ソクラテス自身はやはりプラトンとはタイプが違う…とも感じるし、自分はソクラテスの方が好きだな。
読了日:01月27日 著者:プラトン
白鳥古丹(カムイコタン)―吉田一穂傑作選白鳥古丹(カムイコタン)―吉田一穂傑作選感想
冬にこそ合う一冊。詩篇、随筆、試論、童話…と詩人としての吉田一穂の様々な面がトータルに俯瞰できる編集がなされており、解説の堀江敏之の文章も ひとつの吉田一穂論のようで、素晴らしい。吉田一穂は長く気になっていた作家だが、これが初読みで、何処から攻めるか迷っての選書だったのだが、これを選んでよかったと思う。北海道という厳寒の故郷の地が、厳しさの際立つ 自律的な孤独こそが持つ深い優しさをみせた…という感じだろうか。真冬の星空のようだ。芸術家の端くれとして、彼の言葉一つ一つの向きや深さに大きな共感と、憧れを抱く。
読了日:01月30日 著者:吉田 一穂

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2023年1月の読書メーター

読んだ本の数:26冊

読んだページ数:5806ページ

ナイス数:7512ナイス 

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