どうして、この子は私の言うことをきかないのだろう。

どうして、この子は私に対して反抗的なんだろう。


この二つの文章は、子供についてのもののように見えますが、実は、お母さん (だけじゃないのですが、簡単なので、ここでは「お母さん」と書きます) が主役の文章です。子供をよく見ているお母さんも、こういうことを考えたりはしますが、これで終始してしまうお母さんもいます。


この二つの文章は、子供にレッテルを貼っている文章です。

「言うことをきかない子」

「反抗的な子」


何度か、同じようなことが続いたから、親もそう感じてしまうのでしょう。よくあることです。


もう一度、上記の文章を読んでください。

「親も、そう感じてしまう」

そう。親が、そう思っていることを表した文章なのです。


子供を知ることは、もっと単純で動物的なものであるべきです。


1. あ、この子、今私の話、聞いてない。上の空だ。別の関心ごとがあるんだろうか。

2. あ、この子、今、私に注意されてうるさいと思っている。耳を塞ぎたそうだ。

3. あ、この子、今私に強い口調で注意されて、少し怖がっている。緊張しているようだ。


このように子供のその時の状態に関心を向け、そのまま感じることで、すでに「どうして言うことをきかないのか」の答えのスタートが見えていることが多いのです。


1番ならば、別の関心ごとと親からの注意のどちらが優先されるべきか、子供の視点で考えます。(子供の視点で考えることは、子供を見ることの延長にしか存在できません)


別の関心ごとがあるのかと子供に質問し、「今はこの話し合いが大切だから、別の関心ごとについてはそのあとでかまわないか」と子供に確認し、子供から同意をとるという、子供の感心を親の話にむけさせるステップを踏んでからでないと、親の話は耳に入らないことも多いでしょう。


その時に子供がもっている別の強い関心ごとが、子供の反抗心の元になっていることもあります。「注意されていることより、母親の隣で笑っている弟の存在が気に入らない」とか。子供を見て、子供に確認をとり、子供の同意をとろうとするプロセスで子供の心理の中心にあるものがわかった場合には、もちろん、それを無視することは、子供を見ることから外れてしまいます。


親も、子供を見て、対話する中で、自分の認識不足や認識違いを素直に認めて、どんどん軌道修正していけばよいのです。最初に「これば問題だ」と思ったことと別のことが問題だったなどということだらけなのが、人との対話ではないでしょうか。子供は、私たちが世界で一番大切に思っている「人」です。


2番ならば、親は自分のコミュニケーションについて少し振り返ってもよいかもしれません。何度もただ同じことを繰り返して叱っていないか。相手に届ける工夫をせず、自分の感情のままにただ言葉をぶつけていないか。子供が親のコミュニケーションを馬鹿にしたり、頭から親を拒絶することは、結構あります。親がほんとうによくないコミュニケーションをとっている事例もあれば、子供が他の理由により親の言葉を拒絶したい場合もあります。あなたの言葉は、子供にとって聞きたい言葉でしょうか。もちろん、子供に嫌われたくないから叱るよりほめたほうがよい、などと言っていません。良薬口に苦し。子供がほしがるからと、甘いお菓子ばかり与える親を評価する人はいないでしょう。

たとえ相手が親でも、他者から注意されたり叱責されたりするのはつらいことです。

あなたもそうではないでしょうか。では、あなたの子供はどうでしょう。

内容が厳しくても、あなたの言葉をきくべきだ。聞いたほうがよい、と子供は思っているでしょうか。

そう思ってもらうために、あなたはどうしたらよいでしょうか。


3番の場合には、言い方を工夫することがよい解決になるでしょうが、時間はかかる場合があります。いつも子供さんを強い口調で怒鳴ってしまったり、ひどくなじってしまう場合には、子供に恐怖心がしみついてしまっていることがあります。

親は、子供に対して本当に大きな力を持っています。小さな子の場合、その命さえも、握っています。

親が大したことではないと思う程度のことでも、子供には大きな恐怖や不安であることがあります。

小さい子供が、親とのコミュニケーションで安心を感じられない経験を継続させられていると、3番のパターンが、2番に推移し、「親の言うことなどきかない」と決めてしまった子供ができることもあります。子供が、自分の心を守るためにそうするのです。本人に自覚があるか否かは別として。


子育てで、何か悩んだり、問題にぶち当たったと思ったときは、目の前のことをそのまま観察し、その背景や過去の経緯を想像し、時には相手に聞き、紐解いていくことが王道です。


なぜ、言うことをきかないの? と子供に責任を転嫁する前に、「今、何を考えて、感じているのだろう? 何が関心ごとなのだろう?」と、あなたが、状態把握すること。

理由を教えてちょうだい、と子供に要求するでなく、「なぜなのだろう? 何を考えているのだろう?」と、あなたが関心を持つこと。


理解されるべきは子供で、理解すべきは親なのだと忘れないこと。子供を叱っているとき、親の意識は逆であることが多いです。


どうして言うことをきかないの?

どうして反抗的なの?


どうしてなのでしょうか。どうして、わからないんでしょう、あなたに? 

あなたにわからないのに、未熟な子供にどうしてわかるのでしょうか。


子供とのパワーゲームはやめて、他の「素直そうなお子さん」との比較もやめて、あなたの子育てに問題があると非難するお姑さんのことも忘れて、


何よりも、小さいころ、あなた自身が親から言われたいろいろな厳しい言葉はすべて忘れて、


あなたの心の中にあなたの大切なその子だけを存在させて、素直に単純に子供について感じる時間の割合を増やしてみてください。


ためしに、やってみてください。

あとのことは次に考えましょう。まずは、子供を見て、子供を知ってみてください。