病院帰り。
腰を曲げて一礼し、退室する。
本当に舐めてるな、と呆れと怒りが混ざった声が、圧と共に上から降りかかる。
咄嗟に、違う、と反論しようとしたが、声が出なかった。
音が出るはずだった口を閉じて、唇をキツく結ぶ。
そのまま、お互い無言で帰路につく。
だが、あれが私なりの精一杯なのだ。むしろ、全く何もやらないよりは、幾分かマシな方だと思っている。
ちゃんとやらねば、少しずつでもやらねば、出来てない自分に甘えているだけだ、とすぐに自己嫌悪すること自体が既に、一連の流れになってしまっているのである。
決して、舐めている訳ではない。
そんな意図はまったくないのだ。
出そうとしても、声が出ないのだ。
──ありがとうございました。
さっき空に消えた、単純な言葉の羅列を、今日も私は言えなかった。
私は挨拶が出来ない。