先日、念願だったマリア ジョアン ピリス さんのピアノ ソロ リサイタルに行って参りました!
彼女の演奏をライブで聴くのがずっとずっと夢でした。
この目でこの耳でこの肌で、この私の身体を通して直にライブで聴きたい!とずっと想って来ました。
待望のリサイタル。
始まる前から客席から身を乗り出して、マリア ジョアン ピリス さんの登場を待ちます。
ステージに現れた彼女は、背筋がピンとして、立ち姿が美しく、落ち着いていて凛とした渋い輝きを持っています。
登場するやいなや、何故だろう、涙が止まりません!
ハンカチを目に押し当て、震える声を抑えて、演奏が始まるのを待ちます。
一呼吸置いて、ベートーヴェンのピアノの演奏が始まりました。
すぐに彼女がある聞き覚えのある楽曲を弾いた時に、バケツに涙がたまるぐらい号泣してしまいました。
ハンカチはぐちょぐちょになってしまい、後で実際に本当に絞れました。
それ程泣くのには、理由があるのです。
若かりし頃、ベートーヴェンのそのピアノ曲を聴いた私は、インスピレーションを受け、当時身籠っていた息子にその曲にちなんで名前をつけたのです。
まさかその音楽がここで演奏され、しかもずっと憧れていたマリアさんに弾いて貰えるとは夢にも思いませんでした。
この曲を聴くためにはるばるここまで足を運んだように思えました。
息子の名付け親は私であり、私ではなく、音楽を通してもたらされたものである事に今更ながら気づかされます。
後にその名前は、地球上に現れていない日本古来の言霊だということがわかったのでした。
彼女の演奏はどの曲も素晴らしく、一言で言うと、神がかっていました。
途中で不思議な感覚におそわれます。
彼女の弾くピアノは、自然に私を深い深い森へといざない、実際に連れて行ってくれました。
だから演奏の最中、ずっと私は森の中にいました。
見える身体は会場でマリアさんの演奏に耳を傾け、見えない身体は、森の中にいる、例えるならばそんな感じです。
森の中で私は、朝の気配を感じた小鳥達のさえずりを聴き、風にそよぐ木の葉の合わさるかさかさという乾いた音を聴き、森の奥からどこからともなく吹き上げてくる風にスカートの端が揺れる感触を楽しみました。
小動物が小刻みに動き回って木の実をかじり、蝶がゆるやかに舞い、森の奥には獣やおどろおどろしい存在が息を潜めてそこにいるのを感じました。まるでその息遣いが聞こえてくるかのように身近に。
彼女の演奏は、卓越した表現力があり、単なる強弱だけではない弾き分けが素晴らしく、人間の表現力を超える何かがありました。
静と動。
明暗。
この世界と向こう側の世界。
彼女は彼女の身体とピアノという媒介を通して、二元性だけではなく、二元性を超えた第三のものまでを表現する事が出来るように思えました。
そこにスピリットの介入というか、宇宙の恩恵が降り注いでいるというか。。。
彼女の演奏は天にまで届き、それを聴いた宇宙から、賞賛の拍手の代わりにたくさんの光を地球上のマリア ジョアン ピリス とその客席に降り注いでいるような、そんな感じがしました。
演奏中の彼女の身体や頭は、どこか宇宙と繋がっているような感じで、それは身体を見れば分かるものです。
立ち振る舞いは中心線が整っていて美しい。
椅子に座った時の骨盤の位置。
椅子に座ってピアノを弾きながら、骨盤をバウンスさせて、まるでダンスを踊っているような時もありました。
すると不思議とそれに合わせて、私の見えない身体も踊り出すのです。
ピアノとひとりの女性が、広いコンサートホールで、一人一人のハートに火を灯し、これだけ大勢の人々をピアノの純粋な音で魅了するなんて、本当に信じられない事だと思いました。
それから、会場に来て初めて、私にとってはこれが最初で最後の演奏を聴くチャンスであった事を知らされました。
マリアさんは引退を表明していて、日本ツアーは今回が最後なのだとか。
引退前に遠くからでも会えた事に感謝してもしてもしきれないほどです。
カーテンコールで、ステージに戻って来てハートを両手で押さえて会場の皆さんに深々とお辞儀をし、その手を合わせて合掌したマリアさん。
彼女から深い感謝の念が伝わって来て、再びこみ上げるものが。
またまた号泣してしまい、目の周りとお顔が真っ赤に。
いつもは蓋も開けないファンデーションですが、使わないからと持ち歩かない自分をこれほどまでに責めた事はありませんでした。。。
何はともあれ、彼女は開いている。
全開である。
そのような方の音楽を目から耳から肌から内臓から聴けた事の素晴らしさ。
あのピアノを聴いた日から、私の身体の奥の奥から泉のように溢れて流れるようにピアノの曲が流れて来ます。
身体から鳴る音楽に細胞が喜ぶ日々。
皆さんもよろしければ、是非是非マリア ジョアン ピリス さんのピアノを聴いてみてくださいねー。
あなたの中の何かが開いてきます。
確実に。