出逢ってしまった・・・(まだ続き)
(もしかしたら、今日は・・・)
予感というか期待さえしている自分がいる。
意識のしすぎ・・・会話がぎこちない。
かなり飲んだのだろう・・・不覚にも寝てしまったようだ。
どのくらい寝ていたのか、はっきりとわからない。
彼の姿はない。
テーブルに1枚の紙があった。
「鍵は閉めていくから・・・」とだけ、書いてあった。
それからも、何度か不意の訪問があった。
ある週末、金曜日。
残業があり、会社を出たのは夜9時になろうとしていた。
いつものコンビにに寄ると、彼がいた。
特に確認とかもなく、当たり前のように二人で帰る。
テーブルの上には、ビールの空き缶が4本。
ベッドを背もたれにして座っている彼。
私は、テーブルに肘を突いての姿勢。
『隣においで・・・』と、彼。
『襲わないで下さいよ~』
『襲っちゃだめなの?』
『・・・・・・。』
ついに・・・やっと・・・結ばれた。
『ちゃんと帰らなきゃだめだよ!』
彼は、何も言葉にすることもなく、ただ、頭を2度トントンと。
再び、やさしく抱き寄せてくれた。
午前零時を回り、1時になろうとしている。
玄関先で見送る。
罪悪感とか後悔とか・・・全く感じていなかった。
幸福感でいっぱいだった。
激動の10年の始まりになることを、誰が予想しただろう。
私でさえ、微塵も考えてはいなかった。
出逢ってしまった・・・(続き)
そのまま引き寄せられ、抱きしめられていた。
こうなることを願っていたのだろうか・・・自然に唇を重ねていた。
彼は赤子をあやすかのように優しく頭をポンポンと2度・・・。
『じゃあ帰るね、また明日・・・』
(また明日・・・)
また明日ってどういう意味なんだろう・・・明日も逢えるということなのだろうか?
ただ、帰る彼を見送ることしかできない。
翌日、彼からの電話。
急遽、仕事の打ち合わせをすることになり、彼の会社へ向かう。
打ち合わせを中断し、彼の部下と共に3人で昼食をとった。
その場で言われたことが、なんてラッキーな話。
翌週、3人で2泊3日の出張があるというのだ。
私は、何を期待していたのだろう。
2人きりではないのに。
翌日も打ち合わせをすることになり、帰社。
(また明日・・・)
飲み会にでも誘われるのかなあ・・・と思っていたのに、何の誘いもない。
仕方なく帰宅し、なんとなく一人でお酒を飲んでいた。
ピンポーン・・・
インターホンもとらず、ドアの外を確認することもなく玄関を開けた。
『はーい、ちょっと待ってくださいね』
開けると、彼が立っているではないか。
『いいかな?』
『いいですよ。でも、びっくりしました。どうしたんですか?』
『また、飲もうかなと思ってさ』
(もしかしたら、今日は・・・)
出逢ってしまった・・・
『よろしくお願いします。』
初めて交わした言葉・・・あいさつでしかなかった。
私が勤める会社は、いわゆる個人経営の中小企業。
彼の勤める会社は、誰もが知っている大企業。
それまで、担当してくれていた人に代わり、転勤してきたばかりの彼。
引継ぎと着任のあいさつということで、呼ばれて出かけていってのこと。
なぜか、懐かしさを感じていた。
運命だったのだろうか・・・
次々と彼とコンビを組んでの仕事が続き、自然と共に過ごす時間が増えていった。
もちろん、彼には妻も一人娘もいた。
恋愛関係に発展するはずもない・・・と思っていた。
誰もが思うのではないだろうか。
『勝手に思いを寄せているだけなら構わないだろう』と。
ただ、仕事上の付き合いだけでも、満足していられた。
不思議と苦しくもない。
お酒を飲みに行ったりカラオケに行ったり・・・。
通勤に利用する地下鉄の最寄駅が一緒のこともあり、
たびたび、行き帰り一緒になることもあった。
ある日、不覚にも最終電車にも乗れないほど深酒をしてしまった私。
同じ方向ということで、彼とタクシーで。
自宅前で降り、お礼を言って、彼が乗ったタクシーを見送った。
バッグから玄関の鍵を取り出すのを手間取っていると、誰かに肩をたたかれた。
彼だった。缶コーヒーを手に、『酔いさましに、コーヒーがいいらしいよ』だって。
1時間くらいいただろうか。
『少しはさめたみたいだね、帰るよ』と。
彼のアパートが近いらしいとは聞いていたが、場所まではわからない。
玄関で見送った。
それからは、毎週末は飲みに行き、一緒に帰り、私のアパートでコーヒー1本飲んで帰る。
しばらく続いた。
その日は、久しぶりに飲み会の予定もなく、一人で地下鉄を待っていた。
降車駅に着き、改札を通ったときに彼の姿を見つけたのだ。
『今日もお迎え、いいですね』
『今日は早いし、歩いて帰ろうと思って』
『よかったら、うちで少し飲んでいきませんか?』
『・・・・・。それじゃ・・・』
途中のコンビにで、缶ビールとおつまみを買って自宅へ。
『あまり遅くならないうちに帰るよ』
『そうですね』と立ち上がろうとした私の腕をつかむ彼。
そのまま引き寄せられ・・・
