不動産を売却しようと登記簿を取り寄せたとき、思わず目を疑うような表記を見つけることがあります。
権利者:〇〇 〇〇
債権額:金 5円(または10円、100円など)
原因:明治〇年〇月〇日設定
「5円って、あのご縁玉の5円!?」「見間違いじゃないの?」と思ってしまいますよね。しかし、これは実務の現場では、古い土地や先祖代々の土地で時折見かける「休眠担保権(きゅうみんたんぽけん)」と呼ばれるものです。
皆さま、福岡市東区と糟屋郡の不動産売買と資金計画の専門家、鹿子島寿徳です。今日は、この「5円の抵当権」の正体と、これが見つかったときに不動産を無事に売却するための解決法を分かりやすく解説します!
①謎の正体:明治・大正時代の「5円」は、今のいくら?
結論から言うと、この「5円」は記載ミスでも何でもなく、設定された当時は大金だったリアルな借金の跡です。
貨幣価値は時代によって大きく異なります。例えば、明治30年代の「1円」は、現在の価値に換算すると約20,000円〜30,000円(当時の企業物価や公務員の初任給などを基準にした換算)に相当すると言われています。
つまり、当時は「家を建てるため」「まとまった事業資金のため」に、真剣に土地を担保に入れて借りたお金だったのです。
なぜ「5円」のまま残ってしまっているのか?
「お金を返したなら、どうして消さなかったの?」と思いますよね。理由は主に2つあります。
1,「完済したから終わり」と放置してしまった
昔は、お金を返し終わった(完済した)ことで満足し、法務局で「抵当権を消す手続き(抹消登記)」を忘れてしまう人が大勢いました。当時は今ほど登記に対する意識がカチッとしていなかったためです。
2,抵当権者が行方不明、または亡くなってしまった
何十年も放置されている間に、お金を貸してくれた人(債権者)やその会社がなくなったり、引っ越したり、亡くなったりして連絡がつかなくなり、消したくても消せない状態(休眠担保権)になってしまったのです。
②「5円」だけど、そのままでは絶対に売却できない!
ここで注意しなければならないのは、「たった5円だし、無視して売ってもいいでしょ?」は通用しないということです。
金額がいくらであれ、登記簿に「抵当権」という文字が残っている以上、それは法的に有効な権利として扱われます。
買主からすれば「いつ誰にひっくり返されるか分からない不完全な土地」になってしまうため、100%買い手はつきませんし、銀行のローンも通りません。
売却するためには、この5円の抵当権を「完全にゼロ(抹消)」にする必要があります。
③解決の方法:「休眠担保権の特例(単独抹消)」
このように「相手が行方不明」で「大昔の少額な抵当権」が残っている場合、法律は救済処置を用意してくれています。
それが「供託」を使った単独抹消手続きです。
通常、抵当権を消すには貸した人と借りた人が共同で法務局に申請する必要がありますが、以下の条件を満たせば、不動産オーナーが1人で法務局に行って消すことができます。
【特例が使える条件】
・抵当権者が行方不明(または死亡して相続人が行方不明)であること
・弁済期(お金を返す期限)から20年以上が経過していること
・当時の元本+利息+遅延損害金を計算し、その全額を法務局にお金(供託金)として預けること
④では、いくら払えば消せるの?
ここで気になるのが「明治時代の5円は、今の価値に直して払わなきゃいけないの?」という疑問です。
答えは「当時の額面のままでOK」です。貨幣価値の変動は考慮されません。
ただし、「遅延損害金(利息)」は当時の法律に基づいて、期限が切れた日から今日までの分を日割りでキッチリ計算する必要があります。
まとめ
「5円の抵当権は、数十円払えば1人で消せる」
これだけ聞くと簡単そうに見えますが、実はここからの書類集めと計算が超ウルトラ難解です。
「相手が行方不明であること」を証明するための住民票の除票や戸籍の束を集める
明治時代の古い法律に則って、100年分の利息を正確に計算する
これらを一般の方がやろうとすると、法務局の窓口で何度もダメ出しを食らい、売却のタイミングを逃してしまいかねません。
もしご自身の土地の登記簿に「〇円」という不思議な数字を見つけたら、まずは司法書士や、古い物件の扱いに慣れている不動産会社にご相談ください。
いかがでしたでしょうか?
福岡市東区香椎周辺でも、古い土地からこういった休眠担保権が出てくることは珍しくありません。スムーズな売却に向けたサポートや、提携司法書士のご紹介も可能です。ぜひお気軽にお声がけくださいね!
5円の抵当権は「数十円」で消せる!でも手続きはプロへ!
※私が調べた(私の知識)範囲での記事作成となるので、専門家(司法書士等)へ相談した場合、誤りが判明する可能性もあります事をご了承ください。私も、相談窓口としてお受けした後は司法書士と連携して抹消登記の手続きを進めてまいります。登記の事は司法書士へ!
こんな制度があるんだなと思っていただければと思います。