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誕生日おめでとうお兄ちゃん。
電話でお母さんとハッピーバースデーを歌いました。
届いたかい?
お父さんが亡くなったと連絡がきた。

いちねん足らずで家族がはんぶんになった。

ねこぢるyのトップページがバースデーのイラストになっていた今日はねこぢるの誕生日。
いつまでも誕生日を祝っていいのだなと思った。生まれたことも一緒にいたことも事実だから。
毎日がお兄ちゃんの誕生日ならいいのに。

2010年6月16日から時が止まったのはお兄ちゃんだけじゃなく、私もだ。

新年を迎えてもうれしいとかがんばろうとか思わなかった。

毎年なわけではなかったが、年が変わってすぐに電話をくれたりした。

今年からもうそれがない。

お兄ちゃんの声はまだ覚えているから思い出して忘れないようにしたい。
今日で半年。
無職になったら時間がいっぱいあって、お兄ちゃんと話したいなぁと思う。
仕事が決まって電話するといつも「よかったねぇ。あんたはなんでもできるからいいね」と言ってくれた。
なんでもできたら今無職じゃないよ、お兄ちゃん。
お兄ちゃんはいつも私を褒めてくれたけれど、正直、全然褒められるようなことはしてないしできない。
どーしよーもない妹です。

お墓は蔵王のほうにあるので冬の間は閉鎖されて行くことができない。

昔まだ隣の岩盤浴屋がなかったときに、ひろい駐車場でお兄ちゃんと雪合戦をした。
私は一生懸命投げても当たらないのに、お兄ちゃんが軽く投げる雪玉は私に当たる。
やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだからちさを上回っているのだなと妙に納得した。
4回目の月命日が過ぎた。
初めて夢にお兄ちゃんが出てきた。
お兄ちゃんはしんでるのに普通にいた。
「あれ?お兄ちゃんしんでるよね?」と聞いたら「うん。しんでるなぁ」と言っていた。
体を触ったらところどころ温かいところがあったので「なんかいきかえってない?ちょっと心臓動いてるかもよ?」と言ったら「ちょっと聞いてみて」と言うので胸に耳を当てたら、動いたり止まったりしていた。
「なんかお兄ちゃんが動くと動くみたい。ずっと動いてたらいきかえるんじゃね?」と言ったらお兄ちゃんは笑っていた。
いつだったか前にお兄ちゃんにトイレの音姫の話をしたらびっくりしていた。
男性は用を足す音を消すという概念がないらしい。
そんなものがあるなんて知らなかったのだそう。
しきりに「へー!」と言っていた。


子供の頃夜中にお兄ちゃんがトイレに行くのに「ちさちゃん、トイレ行きたいからついてきて」と起こされついていかされた。
怖いからとトイレの戸も半分開けて私は廊下で待たされた。
用を足すときお兄ちゃんは「そこにいてね。見るなよ」と言った。
半分寝ぼけながら「うん」と答えた。
さっき誕生日になったけどお兄ちゃんから誕生日おめでとうの電話が来なくてさびしい。
来年はお兄ちゃんと同い年になっちゃうから妹でいられるのはあと1年。
いつまでもお兄ちゃんはお兄ちゃんだけれど。

お兄ちゃんが30歳になったとき「実際に30になるときっついぞ~」と言っていた。
もう2年過ぎたよお兄ちゃん。

春に話したとき「お兄ちゃんの誕生日に電話できなくてごめんね」と言った。
塙のばーちゃんがもう90とかなので「90とか信じられないよな~。あと60年もなんて考えられないよな~おれらまだ3分の1だけどもうつらいよな~」とふたりで苦笑いした。

つらいけど、いきるのはつらいけど、わるくはないよお兄ちゃん。

お兄ちゃんのぶんも生きようとしたら何歳まで生きてたらいいんだろう。

しんでもいきてやるぜ。
私が高校生のときお兄ちゃんは引きこもりだった。
毎日家にいるのでさすがに暇らしく、私が学校から帰ってくると廊下からギターを構えて持ったお兄ちゃんがジョーズのテーマを弾きながら「ちさちゃ~ん、お兄ちゃんと遊んで~」と部屋に入ってきた。
毎日するので鬱陶しくて「やだよ~、あっちいってよ~」と言っていた。

たまには気が向くとお兄ちゃんと遊んだ。
お兄ちゃんが「ちょっとお兄ちゃんのこと呼んで」と言うので「お兄ちゃ~ん」と呼ぶとおもむろに背を向けてうんこ座りをして振り向きヤンキー調で「なんだ?」と言うという遊びをげらげら笑いながらした。

ギターを弾くお兄ちゃんの唯一のオリジナルが「ありんこ」。
Fかなんかのコードを4つじゃっじゃっじゃっじゃっ、じゃじゃっ、じゃじゃっ、じゃっ、で1フレットずつずらしていき「オイラは~ありんこ~」と歌う。

お兄ちゃんはギターを弾いていたのに、なぜか教わろうとかは思わなかった。
大人になってからギター弾けるようになりたいなぁとか思ったのに一度も教わらなかった。
いまだに弾けないままだ。

お兄ちゃんは私の中でロックスターなのかもしれない。
小学校の高学年のとき、お兄ちゃんがたぶん当時好きだった女の子に桜貝をもらって帰ってきた。
夕飯のときに「みせて」と薄い貝殻へ指をのばして取ろうとし、そのままうっかり指先で押しつぶしてしまった。
一瞬の出来事だった。
途端にお兄ちゃんは泣いてしまった。
その思い出がずっと胸の中でチクチクしていて忘れられなかった。

今年の春頃お兄ちゃんと電話で話したときに「それを今でも申し訳なく思ってるんだ」と伝えたら、お兄ちゃんは「覚えてないなぁ」と笑っていた。