アンニョンハセヨ~
いやーーーー、めっちゃ面白かった
軽い気持ちで1話を観たら止まらなくなってしまい、秒で完走しました。
最初に観たのは「ディレクターズカット版(全8話)」で、すかさず「オリジナル版(全6話)」も視聴しました。
以下の感想は、基本的にはディレクターズカット版からです。
洗練された音楽や映像美が評価される芸術的な作品かもしれませんが、自分はそのあたりの知識やセンスが皆無なの、そこは特に響かず。
むしろ、人間の弱さや虚栄心を描いた転落劇が、2時間サスペンスのようで超好みでした!
ストーリーだけなら文句なく★5つですが、自分的には別に韓国ドラマでなくてもいい満足度だったので、4.5にしました。
※画像は公式ポスター(oupang playより)
■視聴時期
2022年9月
■お気に入り度(5点満点)
★★★★☆
■視聴方法
アマプラ(全8話/ディレクターズカット版)
※配信オリジナル版は全6話。
■放送開始年
2022年
■放送局(オリジナルの配信元)
Coupang Play
※以下はあくまでもkabo個人のたわ言です。マイナス点も挙げていますのでご容赦ください。
※以下よりネタバレありです(ネタバレなしの視聴をお勧めします)。
●「悪」ではない人の悪事と転落
まず大前提として、自分は松本清張作品が大好きで、中でも虚栄心や上昇志向が行き過ぎた主人公が、最終的に転落する話が好みです。
本来は「悪」ではない、自分の身近にいるような主人公が、その境遇やちょっとしたきっかけから悪事を選択する瞬間の感情に共感できることと、結局は虚栄心や驕りで転落していく様にカタルシスを感じるからだと思います。
そして、物語の根底にある社会背景(今回は格差社会や学歴社会など)にも言及していて、単に個人の問題として描いていないところも好き。
もちろん、先輩記者のセリフ「貧しくても、普通はあなたのような生き方はしない」の通り、本人の問題が一番なんですけどね。
でも今回のように、賢いヒロインが初めての挫折で人生が変わってしまう物語は、なんとも言えない哀愁があって泣ける。
先日視聴した映画「愛を歌う花」がまさにそれで、めちゃくちゃ好みでした!
さらにヒロインに共感できる点は、「アンナ」として成功した背景には美貌と才能だけではなく、本人の努力や勤勉さがあること。
そして同時に、生まれ持った地位や肩書で埋められた「履歴書」がいかに大事であるかも感じている虚しさ……。
共感や同情の気持ちを抱く一方で、転落のきっかけとなった最初の出来事が、イエール大学同窓会への参加だったのがツボ!
他人に成りすましたなら、バレないように息を殺して生きていればいいものを、本来の「目立ちたがり屋」「上昇志向が強い」という性分が出てしまい、自分で自分の首を絞める結果となったのがカタルシスでした(遅かれ早かれ、政治家を目指す人と結婚したら同じ結末にはなっただろうけど)。
清張作品だと『顔』が全く同じパターンですね。
●靴の演出
各シーンでの靴の演出が効いていましたね!
ヒロイン本人も「生活にゆとりがあるかを判断するのは髪と靴」と言うように、ユミの虚栄心を満たす物の1つがヒールの高さだったわけですが、【本物のアンナ】と対峙するときは、昔も今も低ヒールやスリッパ、裸足という構図が見事
そして、生涯教育センターの講師初日に履いていたのが、ヒョンジュの部屋でこっそり履いたルブタンを意識したような赤い靴だったのも、すばらしい回収でした。
市場で「シャネル」や「ディオール」の「新作」を購入する姿は滑稽だったけど、なんだか胸が痛むシーンでした。
最初は、そんな偽物の服でバレない?と思ったけど、「イエール大卒のイ・アンナ」というフィルターがあれば、周りの人たちは「高い服を着ている」と簡単に信じるという皮肉の構図だったのかな?
●キム・ジュンハンの真骨頂
個人的なMVPは、キム・ジュンハン氏
もうさ、チホン(賢医)どこ行ったーーーーー???と叫びたくなるほどのハマリ役でしたね。
よくよく考えると、「ある春の夜に」でも超イラつく元カレ役だったし、クセの強い役のほうが本人も演じていて楽しそうな気がするw
首絞めシーンでの、浮き出た額の血管が素晴らしかったです(演技で血管までコントロールできるなんてすごいわ)。
あと、裏の顔になったときの方言が、イヤな感じに拍車をかけてくれて最高!!
個人的に「無法弁護士」の印象からか、南部の方言がちょっと野蛮で怖い印象なんです。
おかげで、釜山市長(「悪の花」のソ・ヒョヌ氏)との会話が方言バリバリで、めちゃくちゃ悪い感じで最高でした
●刺さるセリフ
さりげない名言がたくさんあったのでメモします。
親が失望しても罪悪感を抱かないことが自立への第一歩
これは泣けた。
先輩記者に「なんでこんなことをしたのか?」と問われて「なんとも説明し難い」と答えたけど、これが答えなんですよね
ほかにも、平凡で無能な自分に刺さるセリフがたくさんありました。
自分は大した人間ではないと早く気づいたほうが人生が楽
頑張っても報われる保証はないのに、怠けると必ずツケが回ってくる
怠惰で愚かなくせに、人並みに生きようとする
実力の伴わないプライドはみじめなだけ
自分が不幸だと思うと、他人を気にする
力なき者の勇気ほど虚しいものはない
年寄りは社会の足手まといだから、大事にされるためには地位と金が必要
また、なるほど!と思ったのが
地獄は「空間」ではなく「状況」
そして一番印相に残ったのは、ヒョンジュ母のセリフ
医者と弁護士は育てるものではなくて使うもの
パワーワードすぎるwwww
●実際にあった“アンナ”なりすまし事件
ヒョンジュのセリフにあったように、「アンナ・アンダーソン」という女性が、実際に「皇女アナスタシア」になりすました事件があったのですね。
これについては全く知らなかったので、とても興味深く調べてしまいました。
ご興味がある方はぜひ下記をチェックしてください!
●オリジナル版との違い
各話の冒頭が完全に違うことのほか、オリジナル版では主要キャラの過去シーンをはじめ、展開に直接影響しない描写がことごとくカットされていました。
6万円のマフラーを買った日に、狭小部屋でコートの毛玉を黙々と取るシーンとか最高だったのに、カットされて残念でした!
こういうシーンがあってこそ、キャラや物語が立体的になると思うんだけどな(※素人意見です)。
ホラーにも聴こえたピアノのOSTも、オリジナル版ではほとんど流れなかったので、それだけでも作品の印象が異りました。
とはいえ、テーマと本筋だけで映画的にサクッと視聴したい人は、オリジナル版でも十分楽しめると思います。
オリジナル配信元のCoupang Playは、キム・スヒョンの「ある日」の配信元だったことを今回初めて知りましたが、6話構成が主流なのでしょうか??
あと、ラストの車中でラジオから流れていたバレエ「エスメラルダ」の解説は、監督のこだわりシーンだったと想像できるので、あれはカットされたら揉めるでしょうね。
それとつながる、1話のバレエの発表会シーンもカットされていましたしね。
でも自分は、「エスメラルダ」で何を表現したかったのかがよくわからなかった
バレエの「エスメラルダ」については全然知らないのだけど、「ノートルダム・ド・パリ」とは違うのかしら?
醜い外見のカジモドと、学歴も肩書もないユミが隠喩だったのかな??(大事なのは中身! って単純すぎるか……w)。
もしくは、ジプシーの美少女が、権力者に愛されるという部分がなぞられているだけ??
総じて満足度の高い作品でしたが、ラストシーンで、ユミがカナダで「中国人」と偽って生きていることが字幕に表現されていないのは残念でした。
あれは「再び他人になりすまして生きているユミ」を表す、かなり重要なセリフだと思うんだけどな。
英語が苦手なので1回めの視聴では気づかず、2回めの視聴で気づきました(オリジナル版も観てよかったと思った最大の賜物w)。
ではまた