これは頭の良過ぎる人が特に陥りやすい。自分の知力を過信するあまり、自分だけの世界、自らが拵えた小宇宙の中で頑なに生きるようになり、牢獄のように、そこから抜け出せなくなってしまうというものだ。

知は普通、人をより広く深い世界に誘い、人を自由にするものだが、その知によって自らを牢屋に閉じ込めてしまうのである。こういう人たちは閉鎖系で生きているので、どんなに頭が良くても進化は止まっている。

自惚れだろうか。他人を支配できるとでも考えてしまったのか。

人間を含む宇宙には「特異点(シンギュラリティ)」という、それまでの原則や理論が全く通用しない無限大のポイントがあって、そこがターニングポイントとなる。そこに到達したとでも考えたのだろうか。

ちょっと小難しい話になってきたが、自律を獲得したAIの特異点が技術的特異点だとすれば、文化思想的な特異点もあって、それは非物質的な突然変異といえる。歴史の中における特異点は枢軸時代ともいわれる。何か悟りに似ているような気もする。

また特異点とは、常に地平線の向こうにあるものだという。そこにたどり着いても、次の特異点が地平線の向こうに待ち構えている。

仮に自惚れや過信が次の特異点に進むことを阻害し、結果として牢獄に留まることになるのであれば、それを打破するのは、よく言われる謙虚さや感謝になるのではないだろうか。