妖精保護区域_第三区画 | 言葉使い師の唄〜心の進化の為に〜

言葉使い師の唄〜心の進化の為に〜

同じ時代を生きてくれてありがとう。
報酬はあなたの朗らかな笑顔です。
心不全直腸がん術後転移してステージ4。
浜松の精神障害者。
イラストと詩と小説を書きます。
言葉使い師。魔法使いです。
コメント大歓迎!
インフルエンサーじゃなく、パイオニアになりたい。

ピンポーン

「はーい!どなたですかー?」

ガチャン・キィィ

「お早うございます!朝早くから申し訳ありません!」

「同じアパートの伊藤さんの奥さん」
「あの、何か?」

「主人が交通事故を起こしてしまって。すぐに病院に行かなければいけないんです」

「まあ大変。大丈夫なんですかご主人は?」

「うちの子を少しの間預かって欲しいんです」
「申し訳ありません!いきなり押しかけてこんなことを言って」
「他に頼める人が居ないんです!」

「良いですよ、困ったときはお互い様ですから」

「ほんとにごめんなさい!もう行かないといけないので」
「失礼します!」

キィィ・ガタン

パタパタパタッ

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「僕、名前はなんて言うの?」

「あたしオンナだもん・・・」

「あ、ごめんなさいね。お姉さん言っちゃいけない事を言いました。許してください」

「・・・・・・」

「え、何?」

「・・・ゆるす・・・」

「私はA子、あなたのお名前は?」

「ちなみ」

「伊藤ちなみちゃんですか。いいお名前ですね!」
「おいくつですか?」

「・・・ふぉーてぃいやんずまいるど」

「ああ、4歳ですか。幼稚園ですね?」

「うん」

「うーん、むにゃむにゃ・・・」

ゴシゴシ・バサッ

「もう朝なのかニャ?」
「ニャ?おねいさん、いつの間に子供を産んだのかにゃ?」

「もう、寝ぼけんてじゃないわよ猫ちゃん」
「預かったのよ。ご近所さんちの子よ」

「ねこのおっきいヌイグルミがしゃべった!」
「ねー、おねーちゃん、このぬいぐるみどこでかったの?」
「さんじゅうまんえんくらい?」

「違うのよ、ちなみちゃん。ゴミ捨て場で残飯を漁ってたから」
「拾ってきたのよ」
「ヌイグルミじゃないのよ?」

「うーん」「もう朝ですかいアネゴ」
「何と!アネゴはいつの間にママになったんですかい!?」

「あ、かめもしゃべった。ねえ、かめもしゃべるの?」

「違うのよちなみちゃん。普通は喋らないんだけど」
「ここの子達はみんな喋るの」

「ねーねー!おねーちゃん。ここはおとぎのくになの?」

「うーん、ちょっと違うけど。そんなところね」

「またこんどあそびにきてもいい?」

「もちろんいいわよ」「あ、でもお姉さん仕事で忙しいから」
「日曜日に来てね」

「おねいさん、僕が寝ている間にこんなに大きな子を産んだのかニャー」

「いつまで寝ぼけてんのよ猫ちゃん」
「ご近所の家の子よ」「旦那さんが交通事故を起こしたから」
「奥さんが病院に行くから少しの間預かってるのよ」

「・・・・・」

「え、何?ちなみちゃん」

「・・・ばち」

「?」

「ばちがあたったんだ・・・」

「どうして?」

「このまえにばんごはんにお父さんのおさけをついであげたら」
「ちなみはじょうだんでうまれてきたんだって」
「っく・しゃれでなまえをつけたんだって」
「ひっく。だからちなみなんだって・・・ひっく」

「ああああ」「ちなみちゃん!泣かないで!」

「うわーん!!」

「!」

ぎゅうぅ

「ごめんなさい!ちなみちゃんは何にも悪くないのよ!?」
「許してちなみちゃん!」

「・・・く、くるしいよ。おねーちゃん」

「なんだ、A子ちゃんの子供じゃないのかにゃ」

「猫のダンナ、いつまで寝ぼけてるんですかい?」

「お姉さんは、ちなみちゃんのお父さんはお酒に酔っ払って」
「酔った勢いで冗談を言ったんだと思うな」

「え?」

「それだけお父さんはちなみちゃんの事が大好きなのよ!」
「だから冗談でちなみちゃんをからかっただけなの」

「・・・・・」

「いい?ちなみちゃん」
「自分の子供が可愛くない親なんて居ないのよ?」

「・・・・・」

「だから、その事はもう気にしないで」
「女の子の笑顔は無敵なのよ?」

「むてき?」

「そう!笑顔は誰でも幸せにしてくれるの!」
「いつも泣いていたら。みんなが暗い顔になっちゃうわよ?」

「・・・・・」

「ほら、もう平気になった!」

「えへへへ!」

「えへへ!」

「うにゃー」「オッス!」

「何?あなたたち。また感動して泣いてるの?」
「泣き虫な家族ねえ」

「あ、もうおひらきだそうよ。ほらほらみんな挨拶をして!」

「セリフが欲しい猫なのニャー。バイバイなのニャー!」

「亀のほうがセリフ少ないですぜ!じゃあなっ!」

「ほら、ちなみちゃん」

「ばいばい・・」

「うふふ、またお会いできるといいですね。A子でしたあ」