行き当たり、ばったり……
2002年(平成14年)/テレビ東京/全5巻


監督: 松原信吾

原作: 浅田次郎『壬生義士伝』(文藝春秋刊)

主題歌: CHAGE and ASKA「夢の飛礫」(作詞:CHAGE/作曲:CHAGE、Tom Watts/編曲:十川知司)


出演: 吉村貫一郎:渡辺謙 大野次郎右衛門:内藤剛志 しづ:高島礼子 しづ(少女期):安倍なつみ 佐助:村田雄浩 近藤勇:柄本明 土方歳三:伊原剛志 沖田総司:金子賢 伊東甲子太郎:萩原流行 永倉新八:遠藤憲一 井上源三郎:浅田次郎(特別出演) 藤堂平助:斎藤歩 原田左之助:大鶴義丹 斎藤一:竹中直人 ひさ:岸田今日子 吉村貫一郎(青年期):渡辺大 吉村嘉一郎:高杉瑞穂 大野次郎右衛門(青年期):尾上寛之 江藤彦左衛門:芦屋雁之助 みよ:岡本綾 おその:坂井真紀 藤吉:大富士 谷三十郎:六平直政 平山五郎:國本鐘建 篠原泰之進:伊藤昌一 服部武雄:阿藤快 坂本龍馬:筧利夫 おりょう:芥川貴子 中岡慎太郎:亀山忍 大久保利通:水上保広 黒田清隆:沖田さとし 中島三郎助:夏八木勲 八木源之丞:津川雅彦



行き当たり、ばったり……  2002年1月2日に時代劇ドラマになった。(新春ワイド時代劇「壬生義士伝 -新選組でいちばん強かった男-」テレビ東京)本作はギャラクシー賞選奨・ATP特別賞橋田賞を受賞している。


 南部盛岡藩の脱藩浪士・吉村貫一郎という実在した新選組隊士の生涯を描いた時代小説である。新選組で守銭奴や出稼ぎ浪人などと呼ばれた吉村貫一郎の義理と愛を貫く姿を描いた作品で、2000年に第13回柴田錬三郎賞を受賞した。浅田次郎にとっては初の時代小説で、綿密に取材を重ねて執筆した作品である。『週刊文春』に1998年9月3日号から2000年3月30日号まで掲載され、文藝春秋より上下巻で2000年に単行本化、2002年に文庫化された。




行き当たり、ばったり……  慶応四年一月。鳥羽・伏見の戦いの大勢は決し、幕軍は潰走を始めていた。そんな中、大坂の盛岡藩蔵屋敷に満身創痍の侍が紛れ込む。かつて盛岡藩を脱藩し、新選組の隊士となった吉村貫一郎であった。保護を求める吉村に対し、蔵屋敷差配役であり吉村の旧友であった大野次郎右衛門は冷酷にも彼に切腹を命じる。 時は流れ、大正4年。北海道出身の記者が、吉村を知る人々から聞き取り調査を行っていた。彼らによって明かされた彼の生涯とは。


 鳥羽・伏見の戦い。今や官軍となっていた薩長連合、対する会津藩兵らと新撰組は賊軍という立場に貶められた。戦況は不利かと思われ数名の藩兵らが撤退する最中、錦の御旗を掲げた薩長連合に向かって走り出し、勇ましく刀を抜き最後まで戦おうとする一人の男の姿があった。男の名は吉村貫一郎――撃たれようとも立ち上がり、なおも戦おうとするその姿に、新撰組の仲間達は「逃げろ、お前は生き延びるんだ!」と叱咤激励し、彼を戦場から逃がす。



行き当たり、ばったり……  南部盛岡藩は、毎年続く飢饉、干ばつ、冷害などで餓死者を多数出す。幼少から長屋住まいの喧嘩友達であった吉村貫一郎と大野次郎右衛門は、長ずると組頭に足軽という立場に変わったが、親友としての関係に変わりはなかった。二人が惚れた女性しずは、今では吉村貫一郎の妻になっている。



 どれほど努力しても、藩の文武を指導する教官になっても、貧困から脱することは出来なかった。貫一郎は妻や三人の子供と別れ、一人京へ脱藩。新選組に入隊し、剣術指南役として台頭する。新選組から支給される給金もすべて盛岡に残した家族のもとへ……。


 貧困は、人生を狂わせてしまう……、という点で深く考えさせられてしまう作品です。救いはなくとも、それぞれが一生懸命に生きた人々の記録、ともいえる作品なのではないでしょうか。