行き当たり、ばったり……-事件_1
「事件」/1978年(昭和53年)/松竹/138分


監督: 野村芳太郎

原作: 大岡昇平

脚本: 新藤兼人


出演: 坂井ヨシ子:大竹しのぶ
上田宏:永島敏行
坂井ハツ子:松坂慶子
坂井すみ江:乙羽信子
菊地弁護士:丹波哲郎
岡部検事:芦田伸介
宮内辰造:渡瀬恒彦
花井先生:山本圭
上田喜平:佐野浅夫
大村吾一:西村晃
篠崎かね:北林谷栄

野口陪席判事:中野誠也
矢野陪席判事:磯部勉
田淵(神奈川日報記者):穂積隆信
山岸待子(女性ウィーク・リー記者):富永千果子
富岡秀次郎:加藤佳男
滝川(女性ウィーク・リー記者):当銀長太郎

行き当たり、ばったり……-事件_12 房次(すみ江の夫):浜田寅彦
夏純子 (桜井京子)
丹古母鬼馬二 (多田三郎)
早川雄二 (天野巡査)
看守:加藤健一
教師(花井の同僚先生):綿引洪(綿引克彦)
キャバレーの客(ハツ子に絡む客):桑山正一
やくざ風の男:志賀勝
やくざ風の男:片桐竜次
やくざ風の男:成瀬正
天野巡査:早川雄三
米子雑誌主人:山本一郎
谷本裁判長:佐分利信
清川民蔵:森繁久彌


行き当たり、ばったり……-事件_7  姉妹で一人の青年を愛し奪い合ったことからおこった殺人事件を中心に、現代の不安な青春の姿を描く、大岡昇平原作の同名小説の映画化。脚本は「危険な関係(1978)」の新藤兼人、監督は「八つ墓村(1977)」の野村芳太郎、撮影は「夜が崩れた」の川又昂がそれぞれ担当。


 神奈川県厚木市でスナックを開業していた新宿の元ホステス坂井ハツ子(松坂慶子)が、他殺体で発見された。容疑者として逮捕されたのはハツ子の妹・ヨシ子(大竹しのぶ)と同棲中の工員・上田宏(永島敏行)ハツ子と同い年の19歳。その時ヨシ子は妊娠3ヶ月の身重であった。谷本裁判長(佐分利信)のもと殺人、死体遺棄の罪状で公判は始まった。検事の岡部(芦田伸介)によって次々に送り込まれる証人たち。しかし、その発言は菊地弁護士(丹波哲郎)の大胆で巧みな尋問によって二転三転し始めるのだった。激しいやり取り繰り返される法廷で、やがて「事件」の真相が明らかにされるのだが……。



行き当たり、ばったり……-事件_8  30年以上も前に公開された作品だが、今見直しても充分新鮮な気持ちがする。おとなしいだけが取り柄だと思われていた青年が、優柔不断ながらも姉妹と関係し、結果的に不慮の事故だったが姉のハツ子を殺害、死体遺棄という大胆な犯行を行い、死体発見まで被害者の妹・ヨシ子と同棲していた……。


 姉のハツ子が水商売に転落するのは、母の再婚した義父に犯されたのがきっかけだった。キャバレーで働いていた時、宮内辰造というヤクザのヒモと同居していた。実家に帰り、自分のスナックを始めたが、宮内は金ヅルであるハツ子の後を厚木まで追って来た……。



行き当たり、ばったり……-事件_16  裁判が始まり、検察・弁護側の証人喚問が行われたが、誰一人として本当のことは言わない。だが、鋭い弁護士の前に真実が見え始めて来た。


 ハツ子という女性は、寂しい女であった。カタギの工員を好きになるが、その男を妹に盗られてしまうのであり、後半にナイフを構える宏に自ら突っ込んで行く絶望感に溢れた表情は、迫真の演技で、松坂慶子という女優の凄まじさを垣間見た気さえした。