行き当たり、ばったり……-竜二_9  前回書き漏らし、クレジットに載せていなかった俳優さんで、重要な役割を果たしている方々をご紹介します。


 菊池健二: カズ。竜二のダチ(親友)で、むかしから“同じ泥を嚙んだ仲”と劇中で吐露する。竜二が仕切っているルーレット場に女を同伴しては遊んでいくが、もともと博打の才能がないのか、いつも冴えない。その時、同伴している女あけみ(後に直と同棲する)は、小劇場出身の“銀粉蝶”という女優です。



行き当たり、ばったり……-竜二_7  カジノに竜二を訪ねて来た和服の女に、ひろしが


 「何、飲みます?」


 「コーヒー頂戴」と、女が言う


 「馬鹿野郎、てめえで入れろ」と凄む竜二。


   …………


 「竜ちゃん、相変わらず良い女が切れないねぇ……」


 「駄目だよ、アイツは。いくら腰振ったって、飯も炊けなきゃ女じゃないよ……」


というシーン。好きだったなぁ……。



 もう一つ、良いカット。シャブ漬けのカズが、堅気になった竜二のアパート付近の公園でのシーン。


 「シャブ止めろよ、カズ」


 「金がいるんだよ。助けてくれよ、竜ちゃん……」


と、泣いてすがるカズ。堅気になった竜二の懐は知れている。貰ったばかりの給料を渡すのだけは思いとどまった竜二は、財布からありったけの小銭と札をカズの前に置き、去っていく。



行き当たり、ばったり……-竜二_5  岩尾正隆: 東映映画「ピラニア軍団」の悪役専門の役者。先に堅気になり、飲み屋の亭主に納まっている関谷。


 小川亜佐美: 日活ロマンポルノの女優。関谷の妻まゆみ。


 関谷は何くれとなく竜二の相談に乗ってやり、堅気になった竜二に就職の世話をする。関谷の店でのシーン。


 「お前も、俺が堅気になった時は喜んだろ。俺のシノギが回ってくるんだからなぁ……」


 「まぁね……」と言わんばかりにニヤッとする竜二。



行き当たり、ばったり……-竜二_8  笹野高史: 最近は若い女房を得て、ブレイク中ですね。酒屋の同僚店員。配達中のトラックの中でのシーン。


 「あんた、なかなかのワルやってたんだってねぇ。俺もね、むかし名古屋でうるさかったんだよ。○○組の××さん知ってる? その人に可愛がられてね」


 「どうしたんだよ、それが……」と、笹野の手の甲に吸いかけのタバコを押しつける。


 居るんだよね、こういうお節介で自慢好きな奴。飲み屋でこのテの会話をする輩を何人も見かけるけど、週刊誌あたりが情報源で、さも訳知り顔なんだよね。話を合わせていると、結局ヤクザなんかじゃない。


行き当たり、ばったり……-竜二_4  直は、竜二のダチ・カズにした事で、エンコを落とそうとしたが、元々根性が座っている訳ではない。包丁で怪我しただけだったが……。その直を連れてカズに詫びを入れるシーン。


 「カズちゃん。これで勘弁してやってよ。いっぱしにエンコ飛ばそうとしたんだけど、ハナクソもほじれなくなると可愛そうだからさぁ……」と、封筒に入れた金を渡す。


 竜二が引退した後、兄貴株の直は落ちぶれ、弟分のひろし(北公次)は伸していき、今ではいっぱしのヤクザの兄貴分になっている。ある夜、竜二のアパートに訪ねて来たシーン。



行き当たり、ばったり……-竜二_6  「姉さん、お久しぶりです」


 「あらぁ、ひろしちゃんも元気そうねぇ。ひろしちゃんなんて呼んじゃ失礼よねぇ」


  …………


 「ひろし。お前、シャブやってんのか?」


 「竜二さん。シャブはやるもんじゃなくて、売るもんですよ」


という、恐ろしい事を言うシーンも、なかなか面白い。


 1月2日のインタビューで、桜金造が「ホンモノにね、声をかけられた事があるんです。「竜二」を観て、ホンモノが「こういう事、あるよなぁ」と言い、「あの映画見て、オレ泣いたよ……」」と語っていた。