今回の投稿は、新潟県十日町市の集落に移住し、農業を中心に活動されている佐藤可奈子さんです。
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4m近くに迫りつつあった雪の壁、あれほど白に染まった季節がゆるみ、やっと春に向かってゆっくり歩を進め始めました。
新潟県の豪雪地帯と言われている十日町市に、私は2011年2月に移住しました。
移住するまでの私は、夢みがちな普通の大学生でした。
緒方貞子さんの影響で、世界から戦争がなくなってほしい、海外で働きたいと思い、学生時代は人道支援を勉強し、海外に足を運んだものでした。
しかし、「紛争が起きるのは、力とお金がある国が欲とエゴ、あいつが嫌いだ、の金棒をふりまわしているせいかも。
そんな『こころ』から大きな争いになるのか」と気付きました。
そんなとき国際NGO JENさんから、「田んぼへ行こう!」という農作業イベントの案内をもらいました。
JENは中越地震の復興支援で、6軒13人の池谷集落で活動していました。
限界集落と言うからにはどんなに廃れたところだろうと、半ば好奇心を持って向かいましたが、現場は想像を絶するものでした。
集落の皆さんは、もう70代半ばであるのに、皆が夢を語り「集落存続」の思いをひとつにし、一生懸命「船」をこいでいたのです。
「誰が限界集落なんて言ったんだろう。ここは希望集落だ!」
それから何度も通うなかで、集落の人たちは「農業」という土に向かうことを通して、生き方や哲学、文化を教えてくれました。
五感を傾ける、寛容である、思いやりをもつ、それをベースに「にんげんをつくる生き方」は私の価値観を変えました。
そんな大切なものたちが、限界集落という名のもとでなくなってしまうのが嫌でした。
大切なものを1000年先までつなげよう。そう決心しました。
そうして農業の道を進み始めました。
今は農業の傍ら、移住女子たちでフリーペーパーを発刊
したり、仲間と女性農作業着を開発
したり、夏には若手農家さんたちとギフトブックの発売も始まります。
今後は山に発信拠点をつくりたいです。地域の人たちに恵まれ、仲間に恵まれ、本当にしあわせです。
夢を語り、前を向く地域には、必ず人が残り、そして人が集まります。
力んで地域を興す!のではなく、ゆっくりちゃんと、次につなぐ。
この冬、新しい命をお腹に授かりました。
私が集落の人たちの背中と生き方に憧れたように、次は私が、いまお腹にいる子どもに胸を張れる生き方をしよう。
小さな集落の、小さな農業からの一投、世界がもっとやさしくなりますようにの願いを込めて。
そう、夢は誰でも語っていいのだと、小さな集落が教えてくれました。
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◆次回予告
スタッフです。
次回の投稿は、仙台市で女性防災リーダーを養成する特定非営利活動法人イコールネット仙台の代表理事 宗片恵美子さんです。
お楽しみに☆