夢みたいなことだって君は言った
でも俺は出来る気がしていた
逃げなきゃならなかったんだ
道に迷って
帰れなくなるまで…

『home sweet home』(words:Nikki Sixx)

僕には、故郷と呼べるものがない。
いや、これはむしろ幸せなことで、
移動の多い人生だったけれど、
そこここで幸せに暮らす術を学んだし、
全体としてはとても幸福だったと思う。

でも、ご出身はどちらですかと聞かれると
すごく困ったりもする。
まぁ、デメリットってそれくらいしかないんだけど。

そう。
僕は、自分自身を不幸だと思ったことはない。
僕を傷つけてきたものは、結局のところどれも、僕自身の失敗、僕自身の内側から飛び出たするどい骨が、複雑骨折しているだけのことなのだ。
人が、不幸を自覚するのは、もっと概念的な不幸だ。

例えば、家がない…とか。

ホームレスを、日本でも誰もが一度は見たことがあると思う。
そして、奇妙なことに、僕はホームレスの家を見たことがある。
考えてみれば妙な話だ。

そう。彼らには家が一応ある。
それが、たまたまダンボールで出来ていたり、
ブルーシートで出来ていたりするだけで…

でも、それは単なるハウス!なんだと思う。

ホームとは、建物のことではなくて、
「帰るべき場所」ということなんだ。

逆に言えば、単にハウス!だけ所有していても、
帰るべき場所のない人が、大勢いる。
そういうもんかな…

深夜に徘徊してしまう若者
施設に送り込まれた家族のいない老人
もしかしたら
週末が来るたびに遠出してしまうオタクも
家に居たくないのかもしれない

僕だって家がそんなに好きかと言われたら難しい
家族とは10年くらい別れて住んでいたし
ちゃんとしていない僕を
家族が誇りに思っているはずがなかった

ホームがあるかどうか

それによって人は大きく違う
もちろん、僕にはホームはあると言えるだろう
たぶんね
そう信じたいだけかもしれないけど…

信じるくらいいいだろう?

つまり、それを自分から捨てるかどうか
そういう話だと思う

もう一度ホームレスの話に戻そう
ホームレスの持ち物は意外と多い
いや、僕らも、いざ自分の所有物を数えてみれば、すごく多いんだと思う

自分の部屋を見渡してみると…
細かく細かくみれば
いろんなものに囲まれて暮らしている

価値のあるものも、そうでないものも

でも、たぶんまだ欲しいものがあって
どうしても欲しくなってしまう

あぁ、本当に絶望する

なぜ欲しいのかもわからないまた
欲しがってしまう

そうやって知らぬまに背負った荷物に潰されて
身動きが取れなくなって

「家に帰れなくなってしまう」

僕には家があったはずなんだ
すごく帰りたい
帰りたい…

なのに…